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ダンジョンだからって戦わなきゃいけない決まりはないと思う  作者: テケリ・リ
最終章 ダンジョンだからって戦わなきゃいけない決まりはないと思う
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第四話 ゴメン、アタイにはできない!!



アーセレムス大帝国

ダンジョン【帝剣城ユーナザレア】



「いくのじゃ、グラスっ!」


「よしきたのであるッ! そりゃあああッ!!」


「グギャゴエアアアアアアアッッ!!??」



 うわ、エゲツなっ!?

 シュラに蹴り上げられて空中で避けられないトロールキングが、高速で飛翔しながら渦を巻くように回転するグラスの龍の爪に貫かれ、断末魔を上げながら魔素へと還る……って、ウォ〇ズマンかよ!? スク〇ュードラ〇バーかよッ!!?? そんなアイディア誰に教わった……って、俺だッ!?


 いや、もちろん爪を使うグラスとあとヴァンには、ついでにウ〇ヴァリンの〝ウ〇ポンX〟とか〝バーサーカー〇レッジX〟とかも仕込んじゃったけどっ!! まさかホントに会得するとは思わないじゃんッ!?



「うわー、派手な技だねぇー!」


「ですが大味過ぎやすねぇ。鈍重なトロールキングだから喰らってくれるような、所謂(いわゆる)〝魅せ技〟ってヤツですかねぇ」


「マナエは真似してはいけませんよ?」


「いやできないし。爪無いし」


「ん? マナエもやりたいのか? それだったらネタで創った魔黒金(アダマンタイト)製の【特製ベ〇ークロー】が有るけど?」


「やめろマナカ! 我の大事な妹に変なことを教えるなッ!!」


「ああんッ!? 誰が誰の妹だとぉッ!? マナエは俺の天使! 俺の妹だぞコラッ!?」


「ふっ、甘いなマナカ! 我とお前は婚約者! いずれけっ、けけ、ケッコンするのだから、マナエは正式に我の妹なのだッ!!」


「な、なんだってえええええ!? ってそういやそうじゃんッ!?」


「愚か者めが! 最早お前に遠慮する事など何も無いのだッ!!」


「お、おのれええええ! 謀ったな、フリオールっ!?」


「マスター、殿下。少々騒がしいです」


「アザミがもう一度お水を掛けましょうか?」


「「ごめんなさい」」



 はい、ごめんなさいアネモネさん! アザミさん!

 二人の目がちょっと……いやだいぶ怖いので、真面目に観戦することにしますっ!!


 現在俺たちはアーセレムス大帝国の大帝が居る本拠地(ダンジョン)、【帝剣城ユーナザレア】の第10階層を攻略中だ。

 で、多分階層主だと思うんだけど広い空間に出て、大型のキング級の魔物がワラワラ湧いてきてたのよね。


 トロールキングが四体、スケルトンキングが三体、キングサイクロプスが二体、エイプキングが一体。


 最初にエイプキングを瞬殺したと思ったら、次はキングサイクロプスがって感じで、徐々に数を増やして召喚されてさ。いつまで続くか判らないからコッチも戦力を分散させて、今はシュラとグラスのタッグが戦ってるってワケ。



「ウゴアアアアアアアアッッ!!??」



 お、四体目も倒したな。

 コレで打ち止めだと良いんだけどなぁ〜?



「マスター、またのようです」


「今度は何キングかなっ?」



 アネモネの指摘で奥に目を向けると、魔素が凝縮されていくのを感じる。順当に行けば次は五体召喚だろうけど……石畳の床に浮かび上がった魔法陣は、一つだけだな……?



「ここに来て一体だけって事は、このボスラッシュもようやく打ち止めって事かな?」


「楽観はできませんが、その可能性は高いと思われます」


「何キングが来るかなっ!?」



 そう話しながら魔物召喚の魔法陣を眺めている俺とアネモネ、マナエの横では、フリオールやレティシア、そしてナザレアとランスロットが、何やら集まって話をしていた。



「相変わらずデタラメな連中だな、リクゴウ家の面々は」


「い、いつもこうなのですか……?」


「キング級の魔物など、常ならば軍を以て討伐するような脅威なのだが……」


「まあ、この家の皆さんは色々と規格外ですからっ!」



 コラそこぉーっ!

 だから俺のデビルイヤーは地獄耳だと何度言えば……! ちゃんと聴こえてますからねぇッ!?



「マナカ様、顕れました!」


「コレは……なんとも面倒なヤツが来やしたねぇ……!」


「ピュウゥゥゥギィイイイイイイイッッ!!!」



 おっと、召喚が終わったか。

 視線を召喚陣に戻した俺は、早速【神眼】スキルで鑑定する。



「どうやら打ち止めで正解っぽいね。カイザースライムだってさ。グラス、連戦行くか?」


「スライムは嫌なのであるぅッッ!! 貴様殿はイジワルなのであるッ!!」


「私の【鑑定】でも確認しました。【物理無効】【魔法耐性極大】【超速再生】【溶解液】【分裂】【悪食(あくじき)】……厄介なスキルが満載です」



 顕れた魔物はカイザースライム。

 もちろん球体の愛くるしいようなヤツでなくて、不定形で粘体状のつよつよなイメージの方だ。

 そしてスキルもつよつよ。アネモネも視えたみたいだが死なない事に特化していて、厄介極まりないな。



「こんな魔物、どうやって倒すのだ?」



 フリオールが若干引きながら腰の剣に手を添える。

 見ると我が家の女性陣はみんな引き気味だな……?



「えーと、行きたい人ぉー?」


「「「「………………ッ!!」」」」



 試しに有志を募ってみたが、やっぱりと言うか、我が家の女性陣が一斉に引き下がったぞ。


 コレはアレか。

 前にグラスがウチのダンジョンのスライム達のせいで、イヤーン♡ な事になったせいか。



「コラ貴様殿! 今ナニを思い出したのであるかッ!?」


「イイエナンニモー?」



 顔を赤くしているグラスはさて置き、どうにも家族の誰とも相性のよろしくないカイザースライムを眺める。



「頭、ココはあっしが征きやしょうかね?」


「行くったってイチ。お前あのスライムの核の場所、判るのか?」


「うっ……! ぜ、全部コマ切れにすりゃあ良いかと……!」


「【超速再生】持ちなのに? 俺やグラス、それにいつかの腐肉喰らい(モロスイーター)の【再生】スキルとは、ワケが違うぞ?」


「うぐぅ……ッ!」



 まあ心意気は買うけどさ。

 どう考えても斬撃特化のイチとは相性悪過ぎだって。


 残る男性は……ランスロットだけか。



「おい貴様。何故私を見て溜め息を吐く」


「いや、相性良いヤツが居ないなぁって思ってさ。ちなみに一応訊くけど、アンタ広域殲滅魔法とか使えたりする?」


「そのような大規模魔法は魔術師団の管轄だ」


「だよねぇ……」



 やっぱココは、俺が出るしかないか。

 いや、俺だって街のゴミ処理にグラトニースライムたちを使役してるからさ、それなりにスライムには愛着があるんだけど……。



「……お? 使役……?」



 コレ、イケるんじゃね?

 倒すのが嫌だったら…………ねえ?



「よし、テイムしよう!」


「「「「………………はぁ?」」」」



 家族たちのみならずナザレアやランスロットまで、揃って間の抜けた声を返してきやがった。

 おい、その『また何か言ってる』みたいな顔はやめてください。地味に心にクルから。



「だってさ、みんなは相性悪いし、相性いい女性陣は戦いたくない。俺もスライムは倒したくないしコイツ結構レアな個体だから……配下にしちゃえば良くない?」


「なるほど。一理ありますね、マスター」


「おおー! スライムさんが増えるね!」



 流石はアネモネさんとマナエさん。俺と最も長く一緒にダンジョンを創り上げてきただけの事はあるな!



「ぬおお……! またダンジョンにスライムが増えるのであるかぁ……ッ!」


「諦めるのじゃグラス。こうなっては主様は聞かんのじゃ」


「まあ仲間であれば襲われる心配はありませんし、アザミは良いと思います」



 よしよし。

 配下でもある三人娘からも賛同(?)を得たことだし、張り切って行きますかねー!



「こ、このような伝説級の魔物を使役など……! 本当に可能なのですか……!?」


「ナザレア皇女殿、まあ見ているが良い。さすれば貴姉にもマナカの理不尽さが理解できよう」


「あははっ……! 迷宮の主達を何人も傘下に治めてますからね、マナカ殿は。階層主くらいなら、もっと楽に使役できそうです……!」


「…………本当に出鱈目だな、あの男は」



 だからソコ!!

 聴こえてるんだってば!!

 いい加減にしないと、フリオールもお菓子禁止にしちゃうからな! …………やっぱ怖いから言わないどこう、うん。





「ピュギィィイイイイイーーーッ!!」



 外野はさて置き、ずっと放置していたカイザースライムに向き直る。

 うん。どうやら防衛を旨としているようで、領域(テリトリー)を侵さない限りは自分からは襲って来ないみたいだね。


 それなら……!



「【超圧縮袋(コントラクトパック)】の、魔力限定版!」



 俺は【空間感知】スキルで把握出来る最大限の広間の空間を、俺たちを除いて立方体の結界で包み込む。

 ついでに【魔力感知】で解析した、カイザースライムの魔力だけを弾くように結界を(いじ)ってあります。



「【圧縮(コントラクト)】!」



 あとはお決まりの、結界を保ったまま収縮させていくだけの簡単なお仕事です。



「ピィィイイイイイイイギイイイイーーーーッッ!!??」



 カイザースライムさんも、どうやら迫り来る結界に気付いたみたいだね。慌てたような挙動で四方八方に攻撃魔法や溶解液を放ったり、あっちへ行っては弾かれて、こっちへ向かって来ては弾かれたりしてる。


 スキルも魔法も、身体でさえもさ。

 全てはお前の魔力を元に構成されてるんだから、そりゃあ弾かれるさ。俺の魔力を超えない限り、最早突破は不可能だよ。



「階層主の中でも防衛に特化し過ぎたのが敗因だな。トロールキング達みたいにガンガンに暴れて攻めて来られりゃあ、こんな方法は取れなかったのにね」


「ピイィィイイイイイイーーーーッッ!!??」



 遂には四方から迫る結界は、見上げるほど巨大なカイザースライムの身体にまで到達した。カイザースライムが焦りか困惑か、はたまた怒りかの声を上げている。


 うう……! なんかウチに居るグラトニースライムたちに申し訳なくなってくる……!

 やめてぇ! そんな切ない声出さないでよぉ……ッ!


 俺は身体ごと徐々に結界に圧縮されていくカイザースライムの元へ歩み寄る。既に結果内はスライムの身体でパンパンで、四角いゼリーみたいになっている。



「どうだ? このまま核が潰れるまで圧縮したっていい。結界の内部を業火で焼き尽くしてもいい。だけど、もしお前が俺の仲間になるなら、助けてやるぞ?」



 さあ働くのだ、我が固有スキル【全言語翻訳】よ!!



「ピイィィッ!! ピギィイイイイッ!! (イヤだ!! シにたくない!!)」


「ならどうする? 大人しく俺の言うこと聞くか? ウチに帰れば、俺の配下のスライムたちとも仲良くなれるかもよ?」



 やっぱり、キングも超えた〝カイザー級〟の魔物になると、言語は無理でもちゃんと知性は芽生えるもんだよな。

 そしてそんなカイザースライムは。



「ピギュゥウウウウ! イイイギピィイイイーーーッ!! (おネガいだからコロさないで! ウまれてスぐにシぬなんてイヤだっ!)」



 ……そうだよなぁ。

 随分と身勝手で自己中心的だけど、やっぱり俺にはコイツは殺せないや。コイツの前に出てきた階層主達みたいに、自ら襲いかかって来た訳でもないしね。



「それじゃあ、俺の手に核を当てろ。言うことを聞けば助けてやるから」



 そう言って俺は、圧縮されていく結界に左手を当てる。



「ピィッ! ピピィイギィイイーーーッ!! (キく! イうことキくから!)」



 俺が置いた左手に、カイザースライムの魔力が凝縮されたようなピンポン玉くらいの大きさの珠が近付き、結界越しに俺の左手に当たる。

 俺はそこに向けて俺の魔力を放出し、核との間に魔力でパスを繋ぐ。



「お前は今から俺の従魔だ。その証に名前をやる。お前の名前は…………【イータ】だ」



 喰らう者(イーター)から文字った名前を与えると、魔力パスが俺から一方通行だったものが変化して、相互通行になった。どうやら名前と支配を受け入れたようだ。



「それじゃ結界を解いてやる。後ろのみんなは俺の家族たちだから、攻撃しちゃダメだぞ?」


「ピギィイイーッ! (ワかったアルジ!)」



 ちゃんと返事ができて偉いな。

 俺は足を軽く踏み鳴らして、結界を解除する。

 カイザースライム改めイータは、ギュウギュウに圧縮されていたその巨大な粘体の身体を、器用に俺を避けて伸ばし始めた。



「これからよろしくな、イータ。俺は敵わない奴に(けしか)けるなんて無茶な事はさせないし、大事にしてやるからな」


「ピギュウウイイイーッ! (よろしくアルジ!)」



 こうして敵の本拠地の護りの要でもあっただろうカイザースライムは、主に俺の個人的なワガママで仲間となった。


 だってしょうがないじゃん!

 街で使役してるグラトニースライムたちだって、ちゃんと言うこと聞くし慣れると愛嬌タップリでカワイイんだもん!!



「どうやら成功したようじゃのう、主様」


「ホントに大丈夫であるか……? 油断させてガバッと来たりしないであるか……!?」



 シュラとグラスを先頭にして、家族たちやナザレアたちも恐る恐る近寄って来る。



「もう大丈夫だ。ちゃんと名前も支配も受け入れたよ。コイツの名前はイータだから、みんな仲良くしろよ?」


「ピィイッ! (よろしく!)」


「やはり知性があるようですね。流石はカイザー級の魔物です」


「ピイィィィィ〜〜〜〜ッ! (ジイィィィィ〜〜〜〜ッ!)」


「な、なあ貴様殿? 何やらこ奴、(われ)を観ている気がするのである……!」


「みたいだな。どうしたイータ? グラスがどうかしたのか?」


「ピギイイィィ……ッ! (オイしそう……!)」


「ぶふぅーッ!?」



 そのあまりなセリフに、思わず俺は吹き出してしまった。



「な、なんなのであるか!? 貴様殿!? こ奴今何と言ったのであるかッ!?」


「いや、ちょま……っ! グラス、お前美味しそうだってさっ。ぶふっ!」


「ぬわああああッ!? や、やっぱりスライムは嫌なのであるぅーッ!?」



 不思議だな?

 なんでこんなに女の子が居る中で、グラスだけなんだろうな?


 もしかして……



「なあイータ? もしかして、ドラゴンって美味いのか?」


「にょわッ!!?? き、貴様殿!? ななななんというコトを……ッ!?」


「ピィッ! ピギュウウゥゥウウウーッ! (うん! ドラゴンオイしいのシってる!)」



 種族的な嗜好なのかな?

 先天的にドラゴンは美味だと、知識として植え込まれているみたいだな。



「なんなのであるッ!? なんで吾ばっかり!? うわぁあん、近寄るなーなのであるぅぅううッ!!??」



 まあまあグラス。食べたりしないだろうから、懐かれたと思って仲良くしてやれよ。



「スライムはムリなのであるぅううううううッッ!!??」





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