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第三話 放蕩爺ぃの爪痕かっ!?

いつもお読み下さり、ありがとうございます。


先日はお見苦しいところをお見せしました。

改めて、お詫び申し上げます。


これからも拙作を応援して下さると、大変嬉しいです。


どうぞ、お楽しみください。


〜 ノクトフェルム連邦 シルウァ氏族の里 〜



「おっきいねぇ〜!!」


「だなぁ〜!」


 見上げた先には、天を衝き頂の見えないほど巨大な、一本の大樹。

 エルフ達が崇めるその大樹は、名を【神霊樹(ウーラ・シエロ)】と云った。


 俺たちは現在、森の境界線に建つ砦から中心部へと立ち入りを許可されて、連邦を形作る各氏族の纏め役である、【シルウァ氏族】の里にお邪魔している。


 保護されやって来た大勢のエルフ達とは、砦でお別れだ。

 流石に森の内部に巨大な魔導戦艦【ムサシ】が着陸出来る場所は無いため、砦の指揮官であるノッチさんが後は取り計らうと申し出てくれて、そのまま砦の兵達に預けてきたのだ。

 エルフのみんなには凄く感謝されて正直こそばゆかったけど、どうか故郷の森で穏やかに過ごして、傷付いた心を癒してもらいたい。


 そんなワケで俺たちは、ムサシの護りにメイド達【揺籃の姉妹達(クレイドル・スール)】と護衛に同行して来たユーフェミア王国の騎士達の大半を残し、主要なメンツだけで森の内部へと足を踏み入れた。


 同行しているメンバーは、俺の家族たち七人とパーティーメンバーの四人、それと四精霊たち。

 そしてユーフェミア王国側は、フリオールを代表とした使節団十人と、マクレーンのおっさんが直接指揮を執る護衛の騎士が二十人だ。


 あ、ちなみにだけど、今回レティシアは街でお留守番だ。

 彼女も来たがっていたのだが、街の政治と治安を預かる立場にあるフリオールとレティシアの両方が、こう短期間に何度も留守をするのはあまり宜しくないと、フリオールの専属執事であるシュバルツさんからお小言を頂戴したのだ。


 そんな理由で、泣く泣く俺たちを見送ってくれたレティシアには悪い気もするけど、俺たちの留守中の街の事を任せてきたんだ。

 何かいいお土産があったら、持ち帰ってやろう。


「人の国の王族と使者達よ、そして迷宮の主よ。あちらの建物で各氏族の長達がお待ちだ。」


 そんな俺たちを案内してくれているのは、シルウァ氏族から迎えとして寄越された遣いのエルフ男性だ。

 ただの遣いだからと名乗ることもせずに現れた彼だったが、砦から森へと入った俺たちの目の前で、里への直通の(みち)を開いてくれた。


 なんでも精霊術の応用で、森の中の空間と空間を繋いだらしいが……精霊術って凄いな。これって一種の空間転移……いや、空間湾曲だよな?


 同じエルフで精霊術の使い手のミラに出来るか訊ねてみたけど、精霊の力が満ちている森の中で、しかも強力な精霊の力を借りられないと不可能だということだった。

 四大精霊が護っているノクトフェルムの、この【神樹の森】だからこそ可能な芸当らしい。


 案内された建物は集落の他の家屋と比べると圧倒的に大きくて、一目で特別な人が住む屋敷だと判る物だった。

 ああそうだね。本当に普通の木造の建築物ばかりで、幻想的(ファンタジー)な樹でできたウッドハウスとかは一切無かったよちくしょうめ。


 建物に入る前に、更に人数が絞られた。

 俺の側は補佐にアネモネと、あとは彼等と同じエルフのミラを含む冒険者達四人だけ。王国代表はフリオールを含む使節団十人と、マクレーンのおっさんと護衛騎士が二人だけだ。


 俺とアネモネ、そして使節団のみんなは完全に非武装。

 人数を絞ることでようやく帯剣を許されたおっさん含む護衛三人とミラ達四人だけが、装備を身に纏っている。


 まあ俺は基本素手の格闘だし、魔法も有るし、何なら無限収納(インベントリ)に色々入ってるからぶっちゃけ何の問題も無い。


 建物の外は外で我が家の戦闘狂三人が居るし、魔法が得意なアザミも、マナエだって居る。というか幼女神(ククル)が居る時点で最早何もできないだろう。我が家を出てからやけに大人しいけど、あんなナリでも一応神様だからな。


「待たせた。長達がお会いになる。此方へ。」


 俺たちを一つの部屋に案内した後、到着を伝えに行った遣いの男性エルフが戻って来た。

 いよいよエルフのお偉いさん方とご対面だ。




 新たに通された部屋は、なんだか空気が清浄とでも言うのか、神秘的な雰囲気に包まれていた。


 木板の壁に床、天井には太い梁が何本も通っていて、剣道や空手の道場みたいな造りの広間だ。

 奥が一段高くなっていて、そこに複数のエルフ達が藁で編んだ敷物に腰を下ろして、こちらを品定めするような目線を投げ掛けてきていた。


「長老様方。人の国の王族とその配下、そして迷宮の主を連れて参りました。」


 他国の王族という賓客に対し(へりくだ)るつもりは一切無いようで、完全に自分達を上位に置いているのが遣いの男性エルフの口調からヒシヒシと伝わってくる。


 いやね? 俺は良いんだけどさ。流石に一国の王族に対してくらい、態度改めない? さっきからマクレーンのおっさん含め、王国のメンツが視線を鋭くしてて怖いんですけど……!?

 しかもこちとら、おたくらの同族を救けて、遥々ここまで連れて来てるんですけどねぇ……?

 ぶっちゃけ外交としては下の下じゃないの?


「話は聞いておる。なんでも、ドロメオに囚われていた同胞らを救い、送り届けてくれたそうだな。」


 一段高い床に並んだ……十三人のエルフの内、中央左隣りの年老いたエルフが、口を開いた。

 老人のエルフは初めて見るね。


「ご挨拶いたす。我は、ユーフェミア王国国王の名代として参った、フリオール・エスピリス・ユーフェミアである。この度貴殿らの同胞が、神皇国ドロメオにより不当な扱いを受けていたため保護し、故郷への帰還を望む総勢八百四名を、お連れした。こちらがノクトフェルム連邦の代表者である貴殿らへと、国王陛下が(したた)められた親書である。お(あらた)めいただきたい。」


 そう言ってフリオールが、文官の一人に持たせていた丸められた書簡を手に取り、一歩前へ出て差し出す。広間の護衛のエルフが書簡を受け取り検めた後、段の上に並ぶエルフ達の中央の人物――女性のエルフだ――に、恭しく差し出した。


 書簡を開き、黙読する中央の女性エルフ。

 読み終えた女性は、隣りに座る先程確認の声を上げた年老いたエルフに、書簡を読ませ始めた。


 それも待つこと暫し。

 年老いたエルフが書簡を置き、口を開いた。


「いくつか確認したきことがあり申す。まず一つ。王女殿の祖国は先の戦争、援軍として戦いに赴いたとの由、相違ござらんか?」


 質問の意図が俺には掴みかねるが、フリオールは淀み無く答えを返す。


「如何にも。宣戦布告を受けたスミエニス公国は元はユーフェミア王国と一つであり、現在も国交を結ぶ間柄である故。援軍の申し出に否やは無いとの、国王陛下のご判断であります。」


 堂々とした返答に頷いた老エルフは、更に言葉を続けた。


「二つ。其方の国の王の友であるという迷宮の主とは、其処な悪魔の男か?」


「如何にも。彼の名はマナカ・リクゴウという。我が王国の北部に広がる【惑わしの森】を支配する男である。我が父フューレンス王陛下は、彼と対等な立場で友誼を交わしている。」


 いきなり話の矛先を向けられてビックリしたが、問答はまだ続くようだ。


 一瞬矢のように鋭い視線を向けられたが、その視線はすぐに外され、老エルフは言葉を続けた。


「三つ。此度の同胞らの護送には、その悪魔が深く関わっているとある。それは如何なる意味か?」


「そもそもの護送計画の発案は彼によるものである。ドロメオによって虐げられてきた、エルフを含む多くの亜人達を保護し、帰国を望む者を帰そうと王国に働き掛け、護送手段をも用意したのだ。我等はあくまでも、彼の手助けをしたに過ぎないものである。」


「四つ。拐かされし同胞の総数と、此度送り届けられし同胞の数に乖離がある。此れは如何なる事か?」


「心身共に深く傷付き療治を要する者も少なからず存在し、それらの者は今も尚手厚く保護している。また故郷(さと)へ帰るを良しとしない者も中には在ったため、そういった者は連れて来ていない。」


「五つ。其方等の国は我等が森の樹を切る者か、それとも植える者か。」


「共に植える者になるために罷り越した所存である。我が国の祖霊、並びに豊穣の神ユタに誓い、貴殿等に矛を向ける事は無いと約束する。」


 フ、フリオールが王女様やってる……!!

 老エルフの問い掛けに全て淀みなく堂々と答えてのけたフリオールは、普段の天然っぷりなど微塵も感じさせないほど、自信に満ち溢れていた。


 老エルフは暫し黙考した後、中央に座る女性エルフへと頷きを見せる。

 他の氏族長らしきエルフ達も、その女性へと注目する。


 女性エルフはゆっくりと、その涼やかだが威厳のある声を紡ぎ出した。


「不躾な質問を重ねたこと、お詫びする。妾はこの【神樹の森】にて、其方等がノクトフェルム連邦と呼ぶエルフ族の共同体を取り纏める、【アレイシャ・ホルン・シルウァ】という。我等の信仰の要である神霊樹(ウーラ・シエロ)を守護し奉る役を負う、シルウァ氏族の長でもある。」


 そう名乗りを上げた女性エルフ――アレイシャさんは、まるで絵画の女神がそのまま抜け出して来たかのような美貌に微笑みを浮かべて、フリオールを真っ直ぐ見詰めた。


「我等が同胞を救ったばかりか護り送り届けてくれた事、深く感謝申し上げる。して、謝礼は其処な魔族の男……マナカ殿と言ったか。マナカ殿の求むるところを聞くということで良いのか? 人の国の王の娘、フリオール・エスピリス・ユーフェミア殿?」


 驚いた。王様からの親書とたったあれだけの問答で、こちらの真の目的は俺に有るというところまで見抜かれた。

 まあ迷宮の主である俺が、わざわざエルフ返還にしゃしゃり出て来た時点で、裏を疑うのはある意味当然っちゃ当然か。


「ご慧眼恐れ入ります、アレイシャ・ホルン・シルウァ殿。無論我がユーフェミア王国としては、ノクトフェルム連邦との国としての交わりも求めるところでありますが、其れよりもこの男……マナカ・リクゴウの意に沿えられることこそ、その最たる望みであります。」


「ふむ……」


 アレイシャさんが目を細くして、俺のことを見据えてくる。

 別に疚しいことなんか何も無い俺としては、堂々と真正面から受け止めるだけだけど。


「国交に関しては、後ほど爺ぃや達と話を進めるが良いであろう。そのための使者達であろうしな。それよりも先ずは其処の、よりにもよって()()()()である、マナカ殿の話を聞かせてもらおうか。」


 ……これ、アレかなぁ。

 まさかセリーヌの爺ちゃん、過去に何かエルフ達にとんでもないこと仕出かしたりしてないよね……?

 ()()()()ってところを妙に強調してくるし、なんだか、アレイシャさんの目付きが怖いんですけど……!?


 そんなアレイシャさんにフリオールが返事をして、俺に振り返り場所を譲る。俺は彼女と入れ替わるように前に出て、若干ビビりながら話し始める。


「エルフ氏族長の皆さん、初めまして。フリオール王女からも紹介されましたが、改めて自己紹介を。ユーフェミア王国の北の魔境、【惑わしの森】にて迷宮の主をしているマナカ・リクゴウといいます。此の度は掟を曲げてお会いしてくれたこと、感謝します。」


 一旦言葉を切って、一礼する。

 さて、どこから切り出したものかな……?


「恩に着せるような形になってしまった事はお詫びします。しかしどうしても、俺には達成しなくてはならない願いがあるのです。その願いとは、貴方達が守護している迷宮【神霊樹の祠】に俺達を立ち入らせていただきたい、というものです。」


 頭を上げた俺は、真っ直ぐに中央の女性エルフ――アレイシャさんを見詰めて、慎重に言葉を紡いでいく。

 しかし【神霊樹の祠】という言葉が出た瞬間、正面で俺のことを観ている長達だけでなく、広間に居るエルフ全員が激しく殺気立った。


「……其の方、祠に立ち入って何とするつもりか……?」


 アレイシャさんも例外ではなく、ただでさえ細めていた目を更に鋭くして、冷たい声音で問うてくる。


 ぬおお……美人の睨み顔はマジで苦手なんだよ……! こ、怖いよぉ……!


「【ソルジャン・ディロイ・オラトリア】。この名前に、聞き覚えはありますか?」


 その名前は、とある【魔王】の名だ。

 此処とは違う、海を隔てた北の大陸に在った、今は亡き魔族達が治めていた国。その国の先代の魔王がソルジャン――俺が保護した魔族の王女、セリーヌの祖父である。


「貴様っ……! ()()()の縁りの者か……!?」


 最早憎しみにも近い殺気が、目の前のアレイシャさんから俺に叩き付けられる。他の年嵩に見えるエルフ達からも、同様に鋭い殺気が飛んできた。


 おい、マジかよソルジャン爺ちゃん……!


「偶々です。偶々最近、その男の息子――当代の【魔王】の忘れ形見を、俺が保護したというだけの縁ですよ。ソルジャン殿にとっては孫に当たる、()()()王女をね。」


 思えば最初から魔族である俺に対してだけ、かなり厳しい目が向けられていた。砦なんかでは俺ばっかり弓で狙われてたしね。


 そしてアレイシャさんから向けられた憎しみの込もった殺気。これ、ソルジャン(アンタ)絶対何か仕出かしやがっただろ!?


 唯ならぬ気配を察知した俺は、正直に、詳細に、そして必死に身の潔白を訴えつつ、事の経緯を語って聴かせるのであった。




いつかのリッチさんと同じく、此処にも放蕩魔王の被害者が!?(笑)


如何でしたでしょうか?


「面白い」、「続きが気になる」と思われましたら、ページ下部の☆から高評価をお願いいたします!


励みになりますので、感想、ブクマ、レビューもお待ちしております!


これからも応援、よろしくお願いいたします!


m(*_ _)m


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