閑話 世界の只中より慈しみと愛情を込めて。
いつもお読み下さり、ありがとうございます!
閑話祭りは、今話にて閉幕にございます。
どうぞ、お楽しみくださいませ!
〜 ダンジョン都市【幸福の揺籃】 〜
《転生神ククルシュカー視点》
いやー、真日さんやってくれるよねー。
邪神の奴に真正面から喧嘩売っちゃってさー。
いったい何のためにGP全振りで“天下り”したんだってぇのよねー。
ま、そうしないと神域ごと消されちゃうとこだったんだけどさー。
ああ、“天下り”っていうのは、神が下界に肉体を持って転生することよー。
今回の私の場合は、ちょーっと違うけどねー。
人間等の現地の生き物に転生するのが本来の“天下り”なんだけどー、今回私は、GPを使って依代――【神義体】っていう、神様が権能を揮うことができる義体を創造してー、それに私の神核と権能を移植したのよー。
言うなれば地上用の、神様専用の身体ってことねー。
神様という概念からは外れちゃって、もう神界に戻ることはできないけどー、どっちみち私の神域は消滅しちゃったんだから、一緒だよねー。
真日さんが貯めてくれた私のGPは全部使い切っちゃったけどー、おかげで助かったんだよー。
あれが無かったら消滅待ったナシだったからねー。
「いやー、ありがとねー、真日さん。」
「あん? なんだよ急に?」
ありゃ? 声に出しちゃったかー。
気にしないでねー、真日さん。
「なんでもないよー。それより次はー? 今度は何を見せてくれるのー?」
「そうだなぁ。四つの公園はもう見たし、次はオススメのお店でお茶でもしようか。」
「おお、いいねぇー♪ 甘いものは有るのー?」
「もちろんだ。王都でわざわざスカウトして来た人がやってる店でな。そこのケーキは絶品だから、覚悟しとけよー?」
「ほほーう? 果たして神様である私の舌を、満足させられるかなー?」
現在私は、真日さんにダンジョン都市を案内してもらってるのよー。
真日さんがこの世界で生き残るために、お隣のユーフェミア王国と友好関係を結ぶために、彼のダンジョン内に創造したこの街。
途中までは私も神域から覗いていたけどー、例の騒ぎでしばらく観てなかったから、すっごく楽しいよー。
「あ、子供がゴミ拾いしてるー。偉いねー!」
「ん? アイツは……モーラじゃないか! おーい、モーラー!」
真日さんがゴミ拾いをしている女の子に声を掛けた。
それに気付いた女の子は、真日さんに駆け寄って来て、私を見た瞬間に……立ち止まっちゃったー?
なんか、すっごい目で睨まれてるんですけどー?
「マナカお兄ちゃん……その子、誰なの……?」
「ど、どうしたモーラ……? なんでそんなに睨んでるんだ……?」
「また違う女なの……! マナカお兄ちゃんはとんでもないスケコマシヤローなの……!!」
「ぶふっ!?」
「ちょっ、モーラさん!? そんな言葉、何処で覚えて来たんだ!?」
あまりにあまりな物言いに思わず吹き出しちゃったんだけどー、真日さん、もしやこんな小さな子まで……!?
「マギー姫さまが貸してくれたご本に書いてあったのー! 女の子を取っかえ引っ変えする男は、スケコマシなのー!!」
「ちょいとおっ!? 声がデカい! 人聞きが悪い!! やめてぇーってこらククル!? お前も笑ってないで反論しろよっ!?」
あははははー♪
まあ、あながち間違いでもないじゃないのー♪
「……って、ちょっと待てよ? モーラ、借りた本って……お前字が読めるようになったのか!?」
「とーぜんなの! あたしは日々、女を磨いてるの! いい女は全てを熟すのっ!」
うんー? やけに驚いてるねー、真日さん。
どれどれ……あー、この子孤児なんだー。
ということはー、真日さんが保護した子ってことかなー?
「凄いじゃないかモーラ! 王女様が読む本が読めるなら、もうほとんど読みは完璧なんじゃないか!?」
「ふっふーん、なの! もっと褒めるがいいの……って、危ないの!? 危うく誤魔化されるところだったの! しゃらくさいのお兄ちゃん! さあ、さっさとその子の素性を吐くのー!!」
おお、真日さんのさり気ない話題転換に抗ったよこの子ー!
さあ、お兄ちゃんはいったいどうするのかなー?
「あ〜、わかったわかった! ククル悪りい。ちょっと予定変更な。先に俺が保護した子供たちに会いに行こう。」
「OKだよー。孤児院ってことは、教会もすぐ近くだよねー? 私もちょっとやりたい事あったから問題ないよー。」
「助かる。ほらモーラ。ここじゃ歩く人達に迷惑になるから、孤児院に行くぞ。お話はそれからな。」
「……わかったの。精々このあたしが納得できる言い訳を、考えておくがいいの! 帰り着くまでの時間が、お兄ちゃんの懺悔の時間なの!!」
「いやホントに誰の影響だよコレ!? 健気な優しいモーラさんは何処に行っちゃったの……ッ!?」
あははー♪
私からは、間違いなく真日さんの影響に見えるけどねー。
それにしてもこの子……ホントに孤児なんだよねー?
真日さんがさっき言った『マギー』って、確か王国の第2王女さまの愛称だよねー?
どうして孤児と王女さまが知り合いになったのか、その辺も訊いたら面白そー♪
孤児院に着いたよー。
清潔な白い壁に、掃除の行き届いた透明なガラス窓。
陽の光に当たってそよ風にはためいているのは、洗濯されたシーツかなー?
広いお庭に子供向けの遊具が沢山作られていて、シーソーで遊ぶ子達やブランコを揺らす子達の上げる笑い声が、本当に幸せそうに響いているよー。
「良い所だねー。子供のことを真剣に考えて創ったのが、よく分かるよー。」
「褒めてくれてありがとな。折角保護した子供たちに真っ直ぐ元気に育ってもらいたかったから、いっぱい悩んで創ったんだよ。」
優しい目で、遊ぶ子供達を眺める真日さん。
ホント、真日さんって子供好きだよねー。
「あ、マナカ兄さん! 今日はどうしたの? マリー母さんに用事……って、誰その子っ!? スッゴイかわいいーっ!!」
「マナカにーたん! いらっしゃーい!」
モーラちゃんより少し歳上に見える、垂れたウサミミを持った女の子が、随分小さな女の子と手を繋いで駆け寄って来たよー。
「おう、エリザ。それからノエル、こんにちは。コイツはククルっていうんだ。今街を色々案内してるとこでな。」
エリザちゃんに、ノエルちゃんね。
察するに年長さんのエリザちゃんは、ノエルちゃんの子守り当番をしてるってとこかなー?
「初めましてー♪ 真日さんのとこにお邪魔してる、ククルだよー。仲良くしてねー。」
「アタシはエリザっていうの。マナカ兄さんに救けてもらって、この孤児院に連れて来てもらったわ。よろしくね!」
「ノエルは、ノエルっていうのー!」
ちゃんと自己紹介もできて偉いねー、ノエルちゃん。
そんな二人を皮切りに、どんどん子供達が集まってくるよー。
「マナカ兄ちゃん! 今日は何して遊ぶのっ!?」
「ふっ。われの百年のけんたいをまぎらわすことができるかな?」
「…………あ、兄ちゃん。」
「待てアンカ!? ボーッとしてたくせに走るのはえーよ!?」
な、なかなか濃ゆい少年達だねー?
「よう! コイツらは今来た順に、ボルト、ナット、アンカ、ビスだ。いっつもイタズラして、街のボランティアのお姉さん達に怒られてるんだよなー?」
「そ、そんなことねーし! オレらいい子だよ!?」
「はて? われには心当たりがまったくないとおもう……よ……?」
「…………え、なにが?」
「姉ちゃんたちがきびしすぎるんだよー! ちょっとスカートめくったくらいでゲンコツなんだぜー!?」
あー、ボランティアさん達、苦労してそうだねー。
一番ヤンチャ盛りな頃だもんねー、この子達。
「お前ら……そりゃ怒られるわ。明日も来たら、ちゃんと謝っとけよ? あんまりイタズラばっかりしてると、お姉さん達に嫌われちまうぞ?」
「うぅ……はぁい。」
「ふむ……しかたあるまい。われのうつわの大きさをしめしてやるか。」
「…………スカート、ぼくはやってなくて、三人だけだよ。ぼくは座って見てただけ。」
「あ、こら!? たしかにそーだけどうらぎんなよアンカ!?」
なんか仲間割れしだしたけどー、これ放っといていいのー?
まあ兎に角、悪いことした子はちゃんと謝んなきゃダメだよー?
来世で変な生き物に転生しちゃっても知らないよー?
そんな風に、賑やかな子供達に囲まれながら、私達は孤児院の中に入って行ったのよー。
エントランスは広いホールになっていて、雨の日なんかは此処で遊ぶんですってー。
「あら、マナカさん。こんにちは。今日もいらしてくれたんですね。」
「マナカ兄ちゃん、いらっしゃい!」
で、デカい……!?
このシスター、なーんか見覚えあるなと思ったら、アレだよー!
なんとかってクソ王子の、被害者の集会を開いてたヒトだねー!
相変わらず美人で……くっ!? 捥げてしまえー!!
「あら、そちらの女の子は…………あら? 何処かで……」
「こんにちは、マリー。お邪魔してるよ。うん、多分毎日見てると思うよ?」
「マナカ兄ちゃん、この子誰だ? 新しい孤児の子なのか?」
こ、この少年……よりにもよってこの私を、孤児ですってー!?
あれ? ちょっと待ってよー?
身寄り無しの居候で、家族も家(神域)も無しってー…………
ヤダ私孤児じゃんっ!!??
ど、どーしよー?! まさかの事実に私愕然だよー!?
「はははっ! 折角みんな集まったなら、一緒に礼拝堂に行くか。ほらみんな、ついて来いよー。」
「礼拝堂……!? ま、まさかこの方は……!?」
あー、真日さんがマリーさんを黙らせたよー。
これはー、子供達をビックリさせるつもりだなー?
そんなこんなで、大所帯で礼拝堂を目指す私達一行。
あ、聖堂のじゃなくて、孤児院にも礼拝堂創ったのねー?
ゾロゾロと連れ立って到着したのは、孤児院の中に作られたこじんまりとした礼拝堂。
普段は週に一度、此処であのおじいちゃん司教が子供達用のミサをやってるんだってー。
「さあみんな。ちゃんと神様にお祈りできるかー? 悪さをした奴らは、ちゃんと謝りますって、神様と約束しろよー。」
流石は真日さんだねー。
あのヤンチャな少年達まで、しっかり言うこと聞いてお祈りを始めたよー。
祭壇を観ると、大聖堂の程大きい物じゃないけれど、精巧に造られた神々の御神体が祀られていた。
……ただひとつ、豊穣神ユタの物を除いて。
「マナカお兄ちゃん、いい加減にするの! 引き延ばしなんて往生際が悪過ぎるの!! この子はいったい、どこの誰なのー!!」
おお、モーラちゃんが再び真日さんに詰め寄り始めたよー!
さあ、どーなるのかなー!?
「いやいやモーラ。お祈りしてて、気付かなかったか?」
「ほえ?」
「モ、モーラ! そのような無礼なことを言ってはいけませんよ!? そ、そのお方は神様なんですよ!?」
「はえ?」
まーったく。
真日さんも意地悪だよねー。
さっさと教えてあげればいいのにさー。
「モーラ。この子はククル。俺をこの世界に導いてくれた、転生神ククルシュカーだよ。」
「「「「え゛……ッ!!??」」」」
あららー。子供達が一斉に固まっちゃったよー。
真日さん、ちょっと大人気ないんじゃないのー?
「ほら、祭壇の真ん中の、幼女の神様。あれがこの子だよ。そっくりだろ?」
「真日さーん? また幼女って言ったねー?」
「し、少女な! 少女の神様です、はい!!」
まったくこの人はー。
とりあえず、私は固まっちゃってる子供達の前に進み出る。
「みんなー。改めて、転生を司る女神、ククルシュカーだよー。よろしくねー♪ ちょっとした事情があって、この世界に降りてきたのよー。真日さんのお家にお世話になってるからー、みんな仲良くしてねー♪」
なかなかフレンドリーな自己紹介だったんじゃないかなー?
ぼっちだった私のコミュ力も、ライアだけじゃなくてユタ達と付き合い始めてからは、だいぶ上がったのよー!
あ、あれー?
おかしいなー、どうしてみんなまだ固まってるのー?
「て、転生神様! 子供達の数々のご無礼を、どうかお許し下さい!! この子達には、よく言って聞かせますのでっ!!」
巨乳美人シスターのマリーさんがペコペコ謝ってくるんだけどー、別に私、そんなこと全然気にしてないんだけどなー?
いや、うん、マジで。
「と、いうことだよモーラ。納得した?」
「う、ううぅ……! 王女さまの次は女神さまの登場なの……! あたしじゃもう、お話について行けないの……!!」
こらそこー!
この神をダシに使うなんて、真日さん随分いい度胸してるじゃないのー!
「マリー、驚かせてごめんよ。あの日顕れてからずっと眠ってて、ついこの間目が覚めたばかりなんだよ。それで今は、俺が創った街を案内してたんだ。内緒にしてた俺が悪いんだから、みんなのこと、怒らないでやってくれな?」
「マ、マナカさんがそう仰るなら……分かりました。それじゃあ皆さん、一度集まってください。」
むむむー!
真日さん! 何良い感じにまとめようとしてんのよー!?
で、こっちはこっちでマリーさんが子供達を集めてるしー。
「皆さん、これで神様が本当に居らっしゃることが分かりましたね? 神様は何時でも、あなた達を見守って下さっています。日々神様に感謝して、お祈りも真面目にやらないといけませんよ? いいですか?」
「「「「はーい!」」」」
あー、なるほどねー。
子供達に神様への感謝の気持ちを教えるために、私を此処に連れて来たってわけかー。
安心しきってて心を読んだりしてなかったから、全然気付かなかったなー。
まったくー。それならそうと言っときなさいよねー?
そうすれば私だって、もうちょっと神々しい登場の仕方とか考えたのにー!
そうして、なんだかんだで子供達と一緒におやつタイムを堪能して、孤児院を後にしたのー。
結構長居しちゃったわよねー。
まあほとんどが、子供達にオモチャにされてる真日さんを眺めてただけだけどねー。
それを観ながら、同時に真日さんの家族達の話し合いも覗いたりしてたからー、まあ退屈はしなかったけどねー。
しっかし、マリーさんかぁー。
ヤバかったねー、アレは……!
ホント何なのー?!
真日さんの周りって、美人のレベル高過ぎじゃないー?!
しかも……あのオッパイって……!!
く、悔しくなんかないもーん!!
別にあんなモノぶら下げてても、動きの邪魔だし肩凝りが酷くなるだけだもーん!
私の神の眼による見立てではー、マリーさん>>アザミちゃん>シュラちゃん>アネモネちゃん>レティシアちゃん>フリオールちゃん≒グラスちゃん>セリーヌちゃんとマナエちゃん……ってとこかなー?
でも聞くところによるとー、真日さんを慕ってる娘ってまだ他にも居るのよねー?
真日さんってばどんだけモテてるのよーっ!?
「なあ、ククル。」
なによモテ男ー。
もうおやつは食べたから、スイーツのお店はまたでいいわよー?
閑静な住宅街を歩きながら、隣で歩いていた真日さんが声を掛けてくる。
「やっぱ……怒ってるか? その、俺が邪神と戦うのを決めたこと……」
なんだ、その話ー?
そりゃあー。
「怒ってるに決まってるよー。この世界を……ううん、真日さんを守るために現界したっていうのにさー。何さカッコつけちゃってさー。」
「うっ……!」
でもねー。
真日さんの言ったことも、尤もな気がしたのも事実なんだよねー。
「アイツは……マグラ・フォイゾは、実の父である創造神様に逆らったのー。それで失敗してー、深淵に封じ込められたのー。」
ユタが……この世界【アストラーゼ】の管理神が、最期に私に託した情報を、真日さんに語って聞かせる。
「マグラはねー、神界のルールを壊そうとしたのー。創造神様を頂きに置き、その意と存在意義に従ってその創造物を管理するっていう、神々の理をねー。
私達のような神々と違って彼女はー、創造神様が女神との間に成した本当の子供だったからー。きっと他と同じに扱われるのが、耐えられなかったんじゃないかなー。」
作り物でない、本当の子供だからこそマグラは特別で、そして本当の意味で特別になりたかったのかもしれない。
しかし託された情報によれば、その反抗の際にマグラによって消滅させられた神々の数は、なんと数千柱に及ぶらしい。
その中には、実の母たる女神すら含まれていたという。
愛を求めた末にしても、子供の癇癪だったとしても、看過できるものではなかった。故にマグラは、多重世界の底の底である【深淵】に封印されたのだ。
そして幾億年の時を越えて現在、アイツは解き放たれてしまっている。
純粋な悪意にのみ、その神核を染めて。
「ククル……?」
おっとー。ちょーっと、気持ちが沈んじゃってたかなー。
真日さんが心配そうに、私の顔を覗き込んでいる。
「あは、ごめんごめんー。だからねー? 真日さんの言ったことも、充分有り得ることなんだよねー。癇癪起こしてちゃぶ台返しってやつー。ごめんねー? 助けに来た私が、そんなことにも気付いてなかったなんてねー。」
正直なところ、本当に考えていなかったのー。だって、アイツほどの存在が権能を揮えば、絶対に創造神様にバレるからさー。
そうなれば再びの【深淵】行きか、今度こそ消滅させられるだろうから、そんなことは絶対にしないって、タカをくくってたんだよねー。
だけど相手はアイツ……マグラなのだ。
数千もの神々を巻き込む程の騒乱を巻き起こしたアイツが、そう易々と、創造神様を恐れて大人しく権能を封印している保証なんて、何処にも無かったのだ。
そして結局は、アイツを同じ土俵に立たせるために、私が守りたかった人が矢面に立ってしまったの……
「……ったく! しょうがねぇなぁ、お前もよっ。」
「わうっ!?」
突然、真日さんが私の頭に、その手を置いて撫で始めた。
な、なんなのー!?
「あの時俺さ、お前に言ったよな? いや正確には、心の中で思っただけかもしれないけど。」
あ、あの時?
あの時って、もしかして転生する時の話?
「ダンジョンマスターを選んだ俺に、『皆から狙われる』って心配してくれたよな? それに対して俺は、『ダンジョンだからって戦わなきゃいけない決まりはないと思う』とかって、中途半端な答えを返したよな?」
確かにあの時、そんなことを聴いた……読み取った? 気がする。
そう。こうやって、真日さんの掌に頭を撫でられながら。
「別れ際には、『胸を張れるくらい良い生を謳歌する』って、約束したよな? 憶えてるよな?」
それは転生開始間際に、真日さんが笑顔で言った言葉。
今、私に向けているのと、同じ笑顔で。
「戦わないことを選ぶだけじゃ、やっぱりダメなんだよ。胸を張れる生き方を貫くには、いつかどこかで、戦わなきゃいけない時が必ずやって来る。そこから目を背けて、耳を塞いで、口を噤んじまったら、俺は……せっかく生まれ変わった俺はもう誰にも、生を全うしただなんて誇れなくなっちまう。」
撫でる手を止めることもせず、その両の紫色の瞳は真っ直ぐに私を見詰めて、真日さんは言葉を紡ぎ続ける。
「他の誰より、何よりもお前にさ。ククルに、胸を張りたかったんだ。前世のあの日、間抜けな死に方をした俺を褒めてくれて、認めてくれたククル、お前にな。
俺は生き抜いたぞって。誇らしく生きて、胸を張って生を全うしたぞって、それだけを思って、今日まで生きてきた。そしてそれは、その生き方は。もう変わらない、変えられない、変えちゃいけない……そんな何よりも大切な、俺の誇りになったんだよ。」
真日さんはそう言うと、頭を撫でるのを止めて私の正面に膝を着いた。
ちょうど私の目線と同じ高さに、真日さんの顔が下がってきた。
「だからさ、ククル。助けに来てくれた事には、本当に感謝してる。だけど、俺に戦わせてくれ。必ず、邪神から世界を護るから。俺が胸を張って生きていけるように。俺が誇りを持って生きていけるように。ククル……お前が見守っていてくれないか?」
このヒトは……ホント、どこまで……
命を奪うことに怯えて。
周囲の脅威を恐れて。
足場を固めようと奔走し。
襲い来る暴虐に耐え抜き。
国を救い。
王を救い。
民を救い。
それでも尚留まらず、多くのヒトを救い、ヒトを束ね、彼の本質である【和】を紡いで……
ホント、そういうとこだよー、マナカさん。
「お人好し。」
「…………は?」
まさかの言葉だったよねー?
マナカさんは目を見開いて面食らってるけど、まだまだこんなもんじゃないからねー?
「イイカッコしい。」
「んなっ……!?」
「猪突猛進。」
「うぐっ……!」
「考え無し。」
「ぐぅっ……!」
「面食い。」
「ちょっ!?」
「女好き。」
「おいっ!?」
「スケコマシ。」
「く、ククルさん……!?」
「唐変木。」
「う、うぅっ……!!」
あら、涙目になってきちゃったー。
そろそろ、イジメるのはこのくらいにしとこっかー。
「カッコイイよ、マナカさん。私も惚れちゃいそうだよ。」
「…………え……?」
きっとマナカさんの周りに居る大勢の娘達も、そんなマナカさんの姿に、心を奪われたんだろうねー。
真っ直ぐに前を向いて、胸を張って生き抜こうと努力する、そんなマナカさんだからこそ、あんなにも多くの、素敵な仲間が出来たんだろうねー。
私もそんなマナカさんと。
そんなマナカさんだからこそ、一緒に生きていきたいと思っちゃった。
だから。
私の力をあげるね。
目の前にあるマナカさんの頬を、そっと両手を添えて、顎を上向かせる。
そして、マナカさんの唇に、私のそれを……そっと重ねた。
あらーククルちゃん大胆(*´艸`*)♡
「面白かったよ!」
「事案発生!w」
「てかこの作品事案多くね!?w」
そう思われましたら、ページ下部の☆から高評価をお願いします!
励みになりますので、感想、ブクマ、レビューもお待ちしております!!
たとえ辛辣なコメントが来ようとも、私は絶対に完結まで走り抜けますよおっ!
(`・ω・´)フンスッ!
読者の皆様、どうか変わらぬ応援を、よろしくお願いします!!
m(*_ _)m