閑話 覇龍王のダンジョンアタック。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
新春・閑話祭り第5弾です!
はい、タイトルの通りですね!
お楽しみくださいませ〜!
〜 ダンジョン【惑わしの揺籃】 〜
《覇龍王グラシャラボラス改め、グラス視点》
『今日は誰もダンジョンに入ってないみたいだし、グラスお前、行ってみるか?』
そんな、主殿がふと漏らした言葉が切っ掛けだったのである。
『おお、今日は鍛練も無くて退屈していたのである! どれ、ここは先輩ダンジョンマスターである吾が、貴様殿のダンジョンを評価してやるのである!』
聞けば主殿は、この世に生まれ落ちてより未だ一年と少ししか経っておらんと言うのである。
ならばウン千年の時を生きる(詳しくはナイショなのである!)吾が、先達としてアドバイスしてやらねばならんのであるッ!
『おおそうか、助かるよ! ちょっと改良した部分もあるからさ、モニターになってくれると有り難い。それじゃあ身内判定外すから、ヤバくなったらこの転移石でここまで逃げて来いよ?
ゲットしたアイテムとかは、そのままお前のお小遣いにしていいからな。あ! 解ってると思うけど、龍になるのは絶対禁止だからな! 破ったらアイテム全部没収な?』
俄然やる気になったのである!
ふふふ……! ガッポリ儲けて、【スタボーン・パパ】のケーキの全種制覇をするのも良いのであるな!
いや、【Bar 鬼の角】で酒の飲み比べをしても良いかもしれんのである!
夢が膨らむのであるぅっ!!
龍化が封じられたのは面倒であるが、人型の戦闘に慣れるにも丁度良いのである。
さあ、張り切って往くのであるッ!!
〜 5階層 〜
ふむ。特に此処までは脅威は感じないのである。
枝分かれした洞窟で、出てくる魔物もゴブリンやコボルトらの小物であるし、何より弱いのである。
罠も浅い落とし穴や何やら粘着く白いモノ、眠り粉や痺れ粉などで、殺すためと言うよりも邪魔をするだけの物ばかりなのである。
永い龍生で大事な事を忘れないための【超記憶】スキルのおかげで、特に迷うことなく階層主の間に辿り着いたのである。
ゴブリンキングとゴブリンの群れであるか。
まあ、まだたったの5階層目であるからな。さっさと先に進むのである。
「道を開けるのである。」
前方全てを焼き払い、落ちた魔石を拾い集めてから、吾は先の階段を降るのである。
〜 10階層 〜
6階層からは、洞窟ではなく迷路だったのである。
魔物にオークが増えたのであるな。邪魔だったので壁の染みにしてやったのである。
あと感知スキルに少しばかり強いのが掛かったから見に行ったら、オーガがフラフラ徘徊していたのである。
小部屋に入ったら急に閉じ込められて、ゴブリンが大量に召喚されたのには驚いたのである。
こんな罠も在ったのであるなぁ〜。
まあそれでも大事無く、階層主に辿り着いたのである。
オーガが一匹、オークが五匹であるか。
まあ、吾の相手にはならんのであるな。
先へ進むのである。
〜 15階層 〜
貴様殿よ、恨むのである!
翼を生やして飛ぶのもダメなのであるかッ!?
だだっ広い草原を目の前に念話で可愛くお願いしたのに、すげ無く却下されたのである。
『それじゃあダンジョンのテストにならんだろうが! 走れグラス! 風の如く!!』
あーそーかそーかっ! わかったのであるよーだっ!!
ならば見るが良い、覇龍王の疾走を!!
地平線の向こうまで続く緑の草原を、吾は思いっきり駆けてやったのである。
途中で何やら獣らしき魔物や集落らしき群れを蹴散らした気がしたが、まあ気のせいであるな。
で、気が付いたら階層主らしき魔物まで轢き殺してしまったのである。
何の魔物だったのであるかな?
あ、魔石を【鑑定】すれば良いのである!
ほうほう、オークキングが一匹の、オークジェネラルが二匹、オークリーダーが四匹だったのであるか。
うむ。判別できてスッキリしたのである!
〜 20階層 〜
森であるなー。吾のダンジョンの山が懐かしいのであるなー。
と、思っていた時期が吾にも有ったのである!
なんなのであるかこの面倒臭い森はあああっ!?
個体が個体を呼び、群れが群れを引き寄せ、ゴブリンやオークやオーガの集落もあるし、蟲がワサワサワサワサと……!!
『きーさーまーどーのーッ!! この森焼き払いたいのであるうううっ!!』
『アホかあああっ!? お前そんな事したら【決戦モード】にして全力で攻撃仕掛けるからなっ!? ちゃんと感知スキル使って、接敵したら出来るだけ静かに素早く仕留めればいいんだよ! いいな!? ちゃんと真面目に攻略しろよっ!?』
むぅ……つれないのである。
しかし、【決戦モード】とやらは不味いのである。
吾は未だ見たことが無いのであるが、強敵への備えを皆の衆に訊ねた折に、そんな言葉を言っていたのである。
どれ程の物か、皆の衆曰く……
『無理ですね。殺気も無いですし、いずれ躱し切れなくなって死に至るでしょう。』
『アレは無理っ。』
『空に逃げても無駄です。何も出来ずに殺されますよ。』
『エゲツなさ過ぎるのじゃ。儂は絶対に相手するのは嫌じゃ。』
『罠の発動と同時に斬れば……いや、頭の演算の方が早ぇですね。【金剛】も……動けなきゃ意味がねぇですわ。お手上げでありやす。』
あ奴らがであるぞ!?
そこらの野良ドラゴンなら平気な顔で殺しそうなあ奴らが、口を揃えて無理って言っていたのであるぞッ!?
そんなモンぶつけられたくないのであるっ!!
「仕方ないのである。真面目にやるのであるっ!? …………あっ。」
茂みから急に飛び出て来た魔物を弾き飛ばした瞬間、異臭を感じ取る。
今のは……キラーアントの集合フェロモンでは……?
途端に森が騒がしくなる。
感知している森の魔物達が、一斉に此方に移動を開始したのであるッ!?
や……やぁ…………!
「やぁっちまったのであるうううううううううううッッ!!!???」
ゴブリンやオーク、フォレストウルフやフォレストベアが、我先にと森の奥から飛び出して来たのである!
吾には目もくれずに、一目散に逃げ去って行く魔物達。
そ奴らが来た方からは……大量の……黒くて、硬くて、大きな……あ、蟻がああああああああっっ!!??
「どわぁあああああッ!!??」
吾、脱兎の如く駆け出す!!
あんなの相手にしてたらキリがないのである!
焼き払おうにも森に燃え移ってしまうであろうし、ここは逃げの一手である!!
他の魔物共を追い抜き、追い越し、兎に角逃げる。
必死に走っていたら突然、目の前に何かが飛び出して来たのである!?
「邪魔であるっ!!」
「キイイイイッ!!??」
軽く手の甲で弾き飛ばしたソレが、苦しそうな声を上げたのである。
……待て。
い、今の声は…………!
恐る恐る振り返ると、地面に落ちて痙攣していたのは……
「キキ、キラーホーネットであるかあああああああッッ!!??」
またもややっちまったのであるううッ!!!
こ奴らも危害を加えられると、仲間を大量に呼ぶのである!?
変わらずキラーアントの軍勢から逃げ惑う吾の耳に聴きたくない、重低音の、羽根が風を掻き乱す音が届いてきたのである!?
「いやあああああなのでああああるううううううッッ!!??」
空を埋め尽くすキラーホーネットの大群が、此方に向かって飛んで来るのである!?
更には大地を埋め尽くすキラーアントの軍勢まで!!
なんなのであるかこの性根の曲がり腐った森はああああっ!!??
そして、悪い事は続くものであるな。
吾の感知スキルに、新たに大きな反応が三つ引っ掛かったのである!
龍の視力で茂みの先を見据えると、そこで争う巨獣の姿が映ったのである!!
ここで階層主の登場であるかあああっ!?
現れたのは、ジャイアントベア、ジャイアントスネーク、ジャイアントスパイダーの三体である!
前に巨獣、後ろに蟻の大軍、上空は蜂の大群。
貴様殿めぇッ! 帰ったらタダじゃおかないのである!!
ともあれ、足を止める訳にはいかぬ以上、突っ込むしかないのである!!
巨獣が相争う広場に、身を躍らせるのである!
「ゴアアアアッ!?」
「シャアアアッ!?」
「キィイイイッ!?」
うむ、驚かせてスマンのである!
ちょっとお友達を連れて来ただけである!!
吾が飛び込んだ途端に、一斉に振り返る巨獣達。
そこに満を持して雪崩込む、蟻と蜂の津波!!
「お、おおおお…………ッ!!」
階層主であろうデカい熊も、蛇も、蜘蛛も。
抵抗虚しく、皆その津波に呑み込まれてしまったのである。
あ、魔力反応が消えたのである。
ってヤバいのである!?
階層主を喰らい尽くした蟻達蜂達が、またこっちに向かって来たのである!!
「ぬおおおおおっ! とうっ!!」
吾は間一髪、次の階層に繋がる洞窟へと、飛び込んだのである。
〜 25階層 〜
いやぁ〜、森林エリアでは酷い目に遭ったのである。
階層を抜けて辿り着いたのは、ゴロゴロとした大小の岩が転がる岩場エリアである。
また下手をして大群に襲われても嫌であるからな。
そこからは慎重に進むことにしたのである。
出てくる魔物はガラリと変わって、サイクロプスやギガンテスなどの大型の、巨人系の魔物であったな。
あとは岩に擬態したゴーレムが居ったので一応気を付けながら、ズンズン進んだのである。
途中からコカトリスやバジリスクなどの石化攻撃を仕掛ける魔物も出てきたのであるが、群れなら兎も角、吾の状態異常耐性を超えるような攻撃は、受けなかったのである。
ワイバーンも出てきたのである。
むぅ……相手は飛んで、吾は飛んじゃイカンのは納得いかぬのである!
と、上空に気を取られていたら……
「のあああああッ!!??」
岩の隙間から、大量のスライム達が!!??
一気に纏わり着いてきて、剥がす手が追い付かないのである!?
あ、こら!?
貴様ら何をしておるのであるっ!?
って、バババカモノおおッ!? ふ、ふくをっ、服を溶かすなあああああッッ!!??
皮膚は丈夫でも服はそんなに強くないのであるうううう!!!
「いいいいやああああああああッ!! であるううううううッッ!!!」
むねが! 胸が出ちゃうのである!? あ、こら! スカートが!? 下穿きがあっ!? おおおしりが見えちゃうううううッ!!??
ちょまっ!? 待って!? やめ、やめえええてえええッ!!?
「い、いいいいいいかげんに、しろおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
ここ森じゃないもん!
岩場だもんっ!!
もう全部吹き飛べええええええッ!!!
閑話休題であるうううう!!!
「ぜぇっ、ぜえっ…………!!」
まったく! 酷い目に遭ったのである!!
これさっきも思った気がするのであるッ!!
主殿が魔法鞄を渡してくれていて、ホントに良かったのである……!
誰が視ておるかわからぬでな、素早くお着替えであるっ!
ふぅ。ああ〜っ、恥ずかしかったのである!!
いくら吾がウン千歳といっても、雌は雌なのである!
それに人型だと、裸というものの羞恥心が増すのである!
はっ!?
これが世に云う、乙女のぴんちというヤツであるか!?
ともあれ、すっかりスッキリした周囲には、魔物も岩も無くなってしまったのである。
うむ。帰ったら、素直に主殿に謝るのである!
でも主殿も悪いのであるからな!? そこは覚えとくのであるぞ!!??
そんなこんなで吾はより一層、特に岩の隙間に注意しながら、先へ進んだのである。
そして遭遇した階層主は……メデューサとバジリスク、コカトリスにワイバーンであるか。
うむ。
感知スキルでも、大きいこ奴らの反応しか無いであるな。
ちょっと人間不信? 悪魔不信? になっていたのである。
しかし、異なる石化攻撃を持つ魔物が三体であるか……
ちと纏う魔力を増やしておいた方が、良いかもしれぬのである。
と、階層主の領域に踏み込む前に算段を着けていた時に、メデューサが口を開いたのである。
「オーッホッホッホッ!! 良くぞたったお独りで、此処までいらっしゃいましたわねぇ!? アタクシはこのエリアの主、メデューサのサツキでしてよーっ!」
「ぬなっ!? き、貴様、喋れるのであるか!?」
吾、ビックリである!
人語を解する魔物など、そう滅多に居ないはず…………いや、此処は主殿のダンジョンであったのである。
主殿の周囲や街には、喋れるどころか仕事をして、普通に人間族らと暮らしている魔物がいくらでも居ったのである。
「アタクシ、マスター様によって知性を授かったのですわ! それによって、よりペットちゃん達を上手に操れるようになりましてよ! さあペットちゃん達! たった独りでいらしたお客様を、存分におもてなしして差し上げなさーいっ!」
「「「………………!!」」」
ペット扱いの三匹の魔物達。
そ奴らからの殺気が、膨れ上がったのである。
なるほど、知性を以て連携を可能たらしめたわけであるか。
遠距離からメデューサの【石化の邪眼】が此方を睨み、目を外した先にはコカトリスが尻尾の蛇から石化の毒霧を吐き出してきおる。
それも掻い潜ればバジリスクが魔眼で睨んできおるし、それらに気を張っておると上空の死角からワイバーンが襲い掛かってくるのである。
上手いこと躾けたのであるな!
吾は先ず飛び上がり、上空から迫るワイバーンを処理することにしたのである!
毒霧に紛れて素早く大地を蹴り、視線が追い付く前に厄介な空の魔物を――――
「今ですわ! やーっておしまいーっ!!」
突然響いたメデューサ――サツキとやらの号令。
何事かと振り返る間もなく、先程から鳴き声も上げずに戦っていたワイバーンが、口を開く――――
「な、なんであるかそれはああああああッッ!!??」
その口から勢い良く飛び出して来たのは、依代に寄生し身体を乗っ取ってしまうパラサイトスライムであるッ!?
吾は驚きに身を硬くしてしまい咄嗟に躱すことができずに、またもやスライムに飛び付かれてしまったのである!
そのまま体勢を崩し、地面に落下する。
いかん!
こ奴は身体の穴から体内に侵入し、動きや思考を司る部位を捕食し宿主とするのである!
最も危険なのは顔である!
口、鼻、耳の穴は勿論、眼からも侵入されかねないのである!
吾は何よりも首から上に取り付かれないように払いながら、なんとか身体を起こして、他の二匹から距離を――――
「やぁーーっておしまーーーいっ!!」
再び響く号令に嫌な予感がして首を素早く巡らせると、此方に向かって猛然と突っ込んでくるコカトリスとバジリスクの姿が……
ちょ……!? あの、待ってくださ――――
「のわあああああああああッッ!!??」
それらの口が揃って開かれ、躱す間も無く再び飛び付いてくるスライム達!
吾は今度は、決して小さくない三匹のスライムに、纏わり着かれてしまったのである!!
「さあペットちゃん達! 野暮な装備は溶かして、美味しく召し上がっておしまいなさーい!」
「のおおおおおおおおおおッッ!!??」
またである! またであるか!?
しかもフィールドの雑魚スライムと違って、服を溶かす速度が段違いなのであるっ!? って溶かすなああああッ! であるうううううッ!!??
あ、こら!?
ソコは……!
「ひゃんっ!? こ、こら! やめっ!? ドコから入ろうと……ッ!!??」
こ奴らとんでもないのであるぅーーーッ!!??
そんなトコから侵入しちゃ、ダメなのであるうぅぅッッ!!!
プチンッと、何かが切れる音が聴こえた気がしたのである。
「き……きさまら…………いい加減に、せぬかああああああああああああああッッ!!!???」
魔力を一気に放出する。
「げっ、激ヤバッですわ!? アタクシ撤退ですのよぉーーーーっ!!??」
視界の端でサツキが脱兎の如く逃げ出すのが視えたが、そんなモン今はどーでもいいのである!!
このスライム共、ようも吾の大事なトコロをツンツンと…………ッ!!
「ふっとべえええええええええええええッッ!!!!」
吾を中心として、目も開けられぬ程の業火が燃え上がったのである!!
こんな邪悪なダンジョン、燃えてしまうが良いのであるううぅぅーーーーーーッッ!!!
〜 六合邸 庭園 〜
「ちょっ、待っ!? アレは俺ちょっとアドバイスしただけで、実際にやったのはサツキちゃん――――」
「ぬがああーーッ!! 知るか貴様殿のアホーッ!! 許さんのである! こら避けるな! 殴れないであろうがああッ!!」
「部分龍化してる剛腕で殴られたら痛いだろーが!! ごめんって! サツキちゃんには俺から言っとくから! ストップ! ステイ!! 話せば分かるっ!?」
ええいゆるゆると捌きおって!!
こうなれば脚も龍化して……!
「ちょっ!? 殺意がビンビンに!? だからごめんってば!? 謝る! あーやーまーるーかーらーっ!!」
「まずは一発殴らせるのであるうぅーーーーッ!! 乙女の恥を雪ぐのであるううぅぅーーーーッッ!!!」
「どああああああッ!!!???」
まったくもおーーっ!!
吾、もうお嫁に行けないのである!!
貴様殿には、責任を取ってもらうのであるッ!!!
うん、マナカさんは1発と言わず2発3発殴られれば良い。
さて、如何でしたでしょうか?
好評だったかは判りませんが、新春・閑話祭りを楽しんで書かせていただきました!
「面白かった!」
「いいぞもっとやれ!w」
「マナカは爆死すべきそうすべき。」
そう思いましたら、ページ下部の☆から、高評価をお願いいたします!
励みになりますので、感想やブクマもいつでもお待ちしております!
予定では、明日は恒例のキャラクター紹介を挟みまして、明後日から新章を開始するつもりです。
もし、もしもですよ!?
どうしてもこのキャラの閑話が見たいというお声が有りましたら、感想にてお知らせください。
ひとつだけでしたら、滑り込みでお祭り延長戦も可能でございます。
ではでは、仕事初めを迎えた方も、そうでない方も。
これからも変わらぬ応援を、よろしくお願いいたします!
m(*_ _)m