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閑話 クレイドル・スール

いつもお読み下さり、ありがとうございます。


新春・閑話祭り開催中です!


今回の第2弾は、アネモネさんの主観でお送りいたします。


お楽しみください!



〜 ダンジョン【惑わしの揺籃】 保護養療施設 〜


《アネモネ視点》



 一糸乱れぬ動作で鋭く突き出される槍の穂先。

 空気を刃先が裂く音がリズム良く鳴り、耳に心地よく響きます。


「次、双剣! 対歩兵の型一番から十番まで!」


「「「「はいっ!!!」」」」


 槍先を地面に突き立て、スカートの中、両大腿にベルトで固定した魔法鞄(マジックバッグ)から素早く、ダガーナイフと短剣を抜き放つ。


 短剣を左手に順手にて構え、ダガーナイフを逆手に右手に構える超接近格闘戦の構え。


 右手のダガーナイフに付いているナックルガードで敵の剣を弾き、左手の短剣で突く。

 左手の短剣で相手の剣を絡め取り引き込んで、右手のナックルガードで殴る。


 歩兵との接近戦を想定した十の型を基本の形として、身体に刷り込み続ける。


 回転しながらダガーナイフで相手の喉を裂き、その回転の勢いを活かして的に向けて短剣を投擲。

 十個目の型、その最後に投擲された短剣が、ほぼ同時と言って良いほどのタイミングでひとつの的の円の中心に密集して突き刺さる。


「それまで! 一旦集合!」


 型の演舞を終えた()()()達が、私の前に一糸乱れずに整列します。

 その誰もが、真剣な顔です。


「皆さん、よくぞここまで練り上げました。見学させていただきましたが、これでしたら充分に実戦で通用するでしょう。これからは今までに教えた事を基本とし、応用・発展させていきたいと思います。異論は有りませんか?」


「「「「よろしくお願いいたします!!」」」」


 全員の声が揃って、意欲が前面に押し出されていますね。


「大変結構です。では、その前に皆さんにお渡しする物が有ります。マスターにお頼みして創っていただいた物です。一人ずつ、前へ。」


 即座に私の前に一列に並び、私の手から直接ソレを受け取るメイド達。

 二十名にもなるメイドが一列に連なる光景は、流石に圧巻ですね。


 全員に配り終え、再び整列したメイド達を見回し、口を開きます。


「皆様にお渡ししたのは、【骨伝導(ヴァイブル)音声送受信器(トランシーバ)】のイヤーカフです。魔力は装着していれば自動で充填され常に稼働します。右で送受信の相手を調節、左で骨の振動を感知して音声を拾い、送受信します。」


 私も実際に手に取り、メイド達に見えるように実演して、装着して見せます。


「ダンジョン外でも使用可能で、効果範囲は半径20キロメートルです。コレが有ればどんな騒音の中で小声で呟いても、同僚に自身の声が届きます。メイドたる者、大声を発する訳には参りませんからね。


 右手で触れる回数でチャンネル指定ができます。初期はオープンチャンネルになっており、全員が繋がっている状態です。試しに私から皆さんに声を届けますね。チャンネルをオープンに設定してください。」


 右のイヤーカフに触れると、魔力が極僅かだけ通る。すると、『オープン』という無機質な女性の声が返ってきます。

 それを皆が行ったことを確認し、私は左のイヤーカフに手を添えて、普通だと聴き取れないような小声で一言呟きます。


『こちらアネモネ。聴こえますか?』


 ザワザワと、メイド達からどよめきの声が上がりました。

 それが一斉に混ざり合って私に返ってきて、少し後悔しました。

 黙っているように注意しておけば良かったですね。


 私は左手を離し、メイド達に向き直ります。


「只今のように、これでお互いに小さな声でやり取りが出来るようになります。それから、金のイヤーカフを渡された者五名は前へ出なさい。」


 総勢二十名のメイド達に渡した内五名には、他の者とは違う金色のイヤーカフを渡しました。

 それぞれのイヤーカフには、異なった紋章が刻まれています。


 金のイヤーカフを持ったメイドが、皆の前に横一列に並びます。


「貴女達五名にはそれぞれグループを率いていただきます。四人組で一個のグループとし、これからはそのグループ単位での活動をお願いします。」


 五つのグループには、イヤーカフに刻まれた紋章に因んだ呼称が与えられます。


 城砦(ルーク)

 僧侶(ビショップ)

 騎士(ナイト)

 女王(クイーン)

 (ロード)


 マスターの世界で言うチェスのクラスに割り振られたグループです。

 王がキングではなくロードなのは、単にこの世界の国々の、実際の王達への配慮です。女王は数える程しか居ないので、クイーンのままです。


 単なるコードネームですから気にしなくても良いと思いますが、マスターの意向ですからね。


「各員、己のグループリーダーの後ろに整列してください。」


 それ以外のメイド達の銀色のイヤーカフにも、それぞれの紋章が刻まれています。

 それを頼りにメイド達二十名が、グループ分けされた形で整列し直しました。


 城砦(ルーク)グループのリーダーは、【レイナ】。

 彼女のグループには、主に家事に秀でたメンバーが集まっています。

 館の保全や炊事等は、主にこのグループを先頭として行うことになります。


 僧侶(ビショップ)グループのリーダーは【ハンナ】。

 このグループは、医療・介護の面で優れ、また全員が治癒魔法の素養を持っています。保護された人達の身の回りの世話や、ダンジョン都市の医療院の監査、教会での奉仕などが、主な役回りですね。


 騎士(ナイト)グループのリーダーは【レジーナ】。

 このグループは特に戦闘面で優れた者を集めました。

 私の教育でメイド達は全員が戦闘技術を有していますが、その中でもオールレンジに対応した、パーティーリーダーを務められる人材が揃っています。

 彼女達にはVIP等要人の警護や戦闘訓練の指揮、戦闘時に於けるパーティーリーダーを務めてもらいます。


 女王(クイーン)グループのリーダーは【サリエ】。

 彼女達は、斥候・諜報の技術に秀でた者達です。

 情報収集や索敵に優れ、また気配を隠すのも上手なメンバーを揃えました。

 対外活動や、招き入れた客人の身辺調査など、活躍の場は多くなるでしょう。


 そして、(ロード)グループのリーダーには【タバサ】。

 彼女達は、集めた情報等を処理する、執務能力の高い者達です。

 館では物品や帳簿等執務の管理を行い、取り引き等交渉の場に於いても主力となるメンバーです。

 ダンジョン都市に於けるマスターが管理している施設等も、彼女達が主に運営する形となります。


「これからは各グループのメンバーは定時報告をリーダーに行い、それを纏めた上で各リーダーが私に報告をお願いします。また対外活動中は、各グループから一人ずつの五人パーティーを組んでの行動となります。活動中は、場面場面で各グループメンバーの指示に従うように。活動中の報告は、(ロード)グループのメンバーが代表で行うことで統一します。」


 全員に指示が行き届いたことを確認します。


 これからは五グループで、常には四パーティでの活動を行い、ローテーションを(こな)す形に調整していきます。

 使用人(メイド)にもキチンと休息を取らせるように、とマスターに釘を刺されてしまいましたからね。


 勿論私も、休息は頂いていますよ。


「それでは最後に。マスターより、貴女達メイド隊への呼称を賜りました。貴女達はこれより、【揺籃の姉妹達(クレイドル・スール)】です。各員その自覚を持って、共に支え合いながらマスターにお仕えしてください。」


「「「「はいっ!!!」」」」


 ……ですから、大声はメイドに似つかわしくないと言いましたのに。

 まあ良いでしょう。気合いが有るのは好ましいことです。


「では本日は通常業務を行いながら、【骨伝導(ヴァイブル)音声送受信器(トランシーバ)】使用の習熟に務めてください。各グループリーダーはメンバーの管理に慣れてくださいね。解散です。」


 カーテシーもだいぶ板に付いてきましたね。

 【揺籃の姉妹達(クレイドル・スール)】のメイド達は、皆身分や種族がバラバラです。


 平民出身の者も居れば、没落した貴族家の者も居ます。

 また、未だに自身の出自が判然としない者も居ます。

 人間族の者も居れば、獣人族の者も居ます。


 その身分も個性もバラバラな女性達が、マスターに盗賊の奴隷から救われたご恩を返そうと、此処に残り、集い、鍛えているのです。


 マスターが多くの人を救おうと活動なさる限り、そういった女性はこれからも出てくるでしょう。

 それらの教育も、今後彼女達【揺籃の姉妹達(クレイドル・スール)】の役目になってくるでしょうね。


 マスターのために、より一層の尽力を期待していますよ。




〜 六合邸 〜



「マスター。メイド達へのイヤーカフの配布と編成の伝達は、滞りなく終わりました。」


「お、ご苦労さま。ありがとねアネモネ。みんな喜んでくれたかな?」


「ええ。皆さんはしゃいでいましたよ。特に各グループリーダーのやる気に満ちた顔付きが、印象的でした。」


「そっかそっか。彼女達の主に相応しいように、これからも頑張んなきゃな。」


「ところで、マスター?」


「ん? どうした?」


「部隊の呼称なのですが、何故Cradle(クレイドル)Sœurs(スール)とで、英語と仏語を混同したのですか?」


「うぐっ……!? いつかツッコまれるとは思ってたけど、今だったか……!」


「一般的には英仏どちらかに統一した方が聞こえは良いのでは、と思いまして。」


「いや、さあ……俺達の街はウィール・クレイドルだろ? クレイドルは残したかったけど、英語で姉妹だと、シスターズになるわけだ。」


「そうなりますね。」


「【クレイドル・シスターズ】って……なんかカッコ悪くない? 場末のロックグループみたいじゃね?」


「…………なるほど?」


「いやあの、そんな呆れた顔されても困るんですけど……」


「深い意味はございません。お気になさらず。」


「……すっごい呆れられている気がするんだけど。」


「…………気のせいです。」


 おや。どうしたのですか、マスター?

 お顔が真っ赤ですよ?




遂に戦闘メイド隊が正式配備となりました。


ちなみにですが、彼女達のスカートの中身は、アンダースコートです。


パンツじゃないから大丈夫!ってヤツです。


しかも回転で翻った際や、隙を見て出し入れしていますので、見えたとしても一瞬です。


男性読者の皆様には、ちょっと残念な仕様ですね(笑)


閑話祭りは、まだまだ続きますよ〜!


リクエストが1件来ましたが、もう1つくらいはいけるかな?


感想、評価、ブクマもお待ちしております!


m(*_ _)m


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