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第十三話 気分はモンスター〇ンター。

いつもお読み下さり、ありがとうございます。


 

 〜 惑わしの森の尽きる場所 ダンジョン【龍の巣】 〜



『お前さ、強くなって、どうしたい?』


 いやぁ、我ながら見事なブーメランをかましたもんだわな。


 俺は、強くなりたいと願うユリウスとの会話を思い出し、自己嫌悪に陥っていた。


 いやね?

 いくら頭の出来の良くない俺でも、当然ユリウスの今後を心配するくらいはするわけで。


 例えば、俺の指導で本当に、【軍神】マクレーン辺境伯を超える力を得たとしよう。


 コンプレックスを拗らせていたユリウス少年を真っ直ぐに叩き直したはいいものの、力を得た彼が再び間違わない保証は無く、またそれを唆して再びの泥沼――権力闘争に踏み切ろうとする貴族が居ないという保証も無い。


 もしその懸念が当たってしまえば、その先に待っているのは【元王太子の再来】だ。


 弄れ、捻くれた性根は、一応は彼本来の純粋な、真っ直ぐなものに戻ったとは思う。


 けど、ヒトの悪意というモノには際限が無いというのは、前世での歴史で、社会の荒波で、嫌というほど学んできた。


 だから、心配になって。

 俺自身のことを棚に上げて、偉そうにユリウスに訊ねたんだ。


 そうしたら。

 ユリウスは、俺が予想もしなかった答えを返してきた。


『アンタも大概心配性だな。オレだって、このままオレ自身がただ力を付けるのが危ういっていうことくらい、理解してるさ。いっそのこと王族の身分を捨てて、冒険者にでもなろうかとも思ったこともある。


 でもよ。オレだってユーフェミア王家の1人なんだ。今オレが此処に在るってことは、民が収めた税……いや、民が流した汗や味わった苦労の上に、立っているってことだろ?』


 俺は思わず、そんなことを語り出したユリウスを振り返って、固まってしまった。


 コイツは、本当にユリウス・ユーフェミアなのか、と。

 あの周り全てを憎み自分の殻に閉じこもっていた、あの弄れ王子なのか、と。


『今なら、姉上に何度も諌められた言葉の意味が解る。ミハエルやミカエラ、モリナやマルコーと付き合い始めて、アイツらの為人を知って、同じ目線に立った、今のオレなら。


 王家に生まれた者の責任、誇り。それは、アイツら王国の民が、笑って明日を迎えられるようにするってことなんだ、ってな。


 アイツらだけじゃない。それはこの街に来て、良く解った。人間も、亜人も、この国の庇護下に在る全ての民が、笑って、日々を生き抜いていくために、オレ達王家の人間は、その権力(ちから)を振るわないといけない。』


 夕陽を背に、俺を真っ直ぐに見ながら言葉を紡ぐ。

 そんなユリウスに、王様や、フリオールの姿が被って見えた気がした。


 ああ、ちゃんと。

 あんた達の言葉はコイツに。


 ユリウスに、届いていたんだな。


『もちろんよ、今更オレが民のためだ何だと言っても、既にオレの信用は地の底で、仮に継承を謳ってもって状況だ。』


『ユリウス、もしかして、王位を?』


 思わず、口を挟んだ。


 現在残る継承候補者は、3人だけ。

 セイロン第2王子、ミケーネ第4王子、そして、コイツだ。


 確かに、順当な継承候補者であるセイロン王子を除けば、まだ幼いミケーネは、抑え込めるかもしれないが……


『いいや。』


 そんなことを先走って考える俺に、ユリウスは首を横に振って見せた。


『オレは、王位の継承権は返上する。学園を卒業するか、アンタに師事して【軍神】を超えるかした時に、父上――陛下に、そう打診するつもりだ。


 そして次代の王を……セイロン兄上かミケか、どちらになるかは判らないが、どちらが王になったとしても、それを支えるつもりだ。アイツら――ミハエル達、オレが信頼する仲間達と共に。』


 驚いた。

 そりゃもう、この上なく。


 その、真っ直ぐな瞳に、覚悟に、思わず気圧された。


『ユリウス、お前……』


『まだ誰にも言うなよ?オレと一緒に次代の王に仕えるなんて、アイツらには特にな。アイツらには、オレと一緒に強くなってもらわなきゃ困るんだからな。』


 そう言って、照れ隠しのように笑ってみせたユリウス。


 俺は何も言えず、ただその立派な思いを抱いた王子の頭を、ポンポンと撫でただけだった。


『やめろコラ!オレはミケじゃねえ!』


『俺からすりゃあどっちも一緒だ。ちっとはお兄ちゃんに甘えてみな!』


『誰がお兄ちゃんだこの!?やめろ!撫でるなあっ!?』


 その後はお互いその話題に触れることなく、ユリウス政庁舎まで送り届けて、普段通りなんの変わりもなく、別れた。




「マナカ様!!」


 突然の大声に、ハッとする。


 回想を打ち切られた俺の目の前には、1匹の翼竜(ワイバーン)が迫っていた。


「くっ、この!?」


 大慌てで結界を張り、ワイバーンの突進を防いだ。


 突然現れた結界に激突し、よろめきながら尚も敵意を向けてくるワイバーンに、雷が落ちる。


 アザミの雷魔法だ。

 その一撃で靄に変わったワイバーンを見て、俺は思わず、胸を撫で下ろした。


「頭、どうなさったんで?油断たぁ頭らしくねぇ。」


 そんな俺の様子を見てか、仲間達が俺の周囲に集まってくる。


 現在俺達は、惑わしの森の支配を終えていよいよといった感じで、大陸の北端の地にあるダンジョン【龍の巣】の攻略を進めていた。


 ダンジョンの入口は、森の途切れる場所のすぐそこに在り、不自然に積み上げられたような大きな岩山に、ポッカリと開いた洞穴が、それだった。


 とは言っても、その大きさは途轍もなく。

 大体高さは15メートル、幅は30メートルほどの洞穴だ。


 入口がデカい理由は、中に入って良く解った。


 この【龍の巣】だが、名前から予想していた通りに、竜種の魔物だらけなのだ。


 で、大抵はデカい。

 中には小型の竜種や人型の人竜種(ドラゴノート)なども居たけど、兎に角ダンジョンそのものの規模がデカいのだ。


「ごめん。ちょっと深く考え事し過ぎてたよ。もう大丈夫だ。」


 集まって来たアザミ、シュラ、イチに謝る。


 普段から油断大敵って言ってる俺がこのザマとか、笑えねぇな。


「むぅ。大丈夫なら良いのじゃがの。何ぞ悩みでもあるのかの?」


 普段俺に、散々口を酸っぱくして小言を言われているシュラですら、この様子。


 そんなに俺の姿は、深刻そうに見えたのだろうか?


「いや。単に教え子に向けた言葉が、自分に跳ね返ってきただけだよ。力を得てどうしたいんだ、ってな。」


 言ってから、後悔する。


 こんな弱味なんて、仲間に、家族に見せたい訳じゃなかったというのに。


 まあ、それこそ今更な気も、しないでもないけど。

 みんなには今までも、散々醜態を見せてきてるからなぁ。


「はん!左様な小さきことで悩んでおったのか?」


 あ?

 あんだとシュラこのやろ……!


 いや、情けないとは自分でも思ってるけど、そう鼻で嗤われるとイラッとくるな?


「シュラ、言い方に気を付けなさい!ですがマナカ様。アザミもシュラと同感です。」


 良いぞアザミ!

 もっと言ってやれ……って、同感だとおっ!?


 まさかのアザミの離反に、膝を折りそうになる。


 しかし、続くイチの言葉に、意識を奪われた。


「頭、難しく考えるこたぁ、ありやせん。頭は、何度も何度も、あっしらに何がしてぇか、示してくれておりやすぜ?」


 俺が、示した……?


「マナカ様。マナカ様はいつも仰っているではありませんか。」


「『胸を張って生き抜き、胸を張って死ぬ』とは、やりたいことではないのかのう?」


「あっしらは全員、そんな頭の願いを叶えるために在り、頭と共にその願いを追っ掛けてると、思ってたんでやすがねぇ。」


「お前ら……」


 3人が、真っ直ぐに俺を見ている。


 そうか……そうだよな。


 何をウジウジ、柄にも無く考え込んでたんだろうな、俺は。


 まったく。

 他人(ひと)の心配なんかしてる場合じゃあ、ないだろうに。


 俺が俺らしく在り、大切なモノを護るために何でもするって、そう誓ったばかりだろうがよ。


「そう、だったな。悪いみんな。もう大丈夫だよ。」


 迷っている暇なんてない。

 全力を尽くしたって、足りるかも判らない。


 でも、もう足は止めない。

 もう、膝は折らない。


 だって、こんな俺を信じ、慕ってついて来てくれる、こんなに頼もしい家族が居てくれているんだから。


「柄にも無いとこ見せちゃったな。気を取り直して、一気に進むか!」


 そんな俺に家族達は、口々に返事を返してくれる。


 そしてちょうどおあつらえ向きに、こちらに向かって来る魔物の反応を感知した。


 そちらに向き直り、【神眼】スキルを行使する。


天空竜(スカイドラゴン)か……仕切り直しの相手としては、不足は無いな。」


 俺はドラゴンに向かって手を掲げる。


 イメージを固め、魔力に乗せて、放出する。


 ドラゴン系の魔物の、強固な魔力の障壁を射抜くイメージ。

 その強靭な肉体を、その強固な生命を、刺し貫くイメージ。


 先端は硬く、どこまでも鋭く。


「【竜殺しの剛槍(ドラグーンバスター)】。」


 魔法の起点となる呪文(キーワード)と共に、俺の上空で無数の焔が爆ぜる。


 その爆発と共に風魔法で加速しスカイドラゴンに殺到する、結界で出来た無数の巨大な槍たち。


 それらはスカイドラゴンの体表を覆う障壁を容易く抉り、次々とその体躯に突き立ち、断末魔を響かせながら、靄へと変じさせた。


「お見事です、マナカ様。」


「やっと見れる顔になったのう。それでこそ主様じゃ。」


「往きやしょう、頭。まだまだ、やれるこたぁ有る筈ですぜ。」


 そう笑顔を向けてくれる、アザミ、シュラ、イチ。


 そうだな。


 さっさと此処も攻略して、ダンジョン周辺も制圧しないといけない。

 セリーヌにも、ダンジョンの扱いを教えなきゃならないしな。


 俺達は、その広大な山岳地帯の階層を、奥へ奥へと向けて走り続けた。




 そして、5階層目。


「おい、おいおいおい。なんなのコレ?」


 俺のダンジョンのように徐々に広さを増す山岳地帯を駆け抜け、辿り着いたのは、周囲を険しい山々に囲まれた、盆地のように開けた場所。


 まるで、闘技場か舞台のような盆地の底に、1体の、途轍もなく巨大な魔物が、蹲って眠っていた。


 【神眼】スキルが語る。



 個体名【覇龍王・グラシャラボラス】

 種族【古代真龍(エンシェントドラゴン)

 称号【覇龍】【竜王】【龍王】【迷宮管理人】



 え、なにこのデカいの。


 上空からで比較物も無いから縮尺おかしいけど、パッと見でもユーフェミア王国の王都と同じくらいデカいんですけど?


 え、マジ?

 セリーヌの爺ちゃんって、こんなヤツを支配したの?


 これってさ、どう考えても伝説の、御伽噺だって聴いた、()()【竜王】だよね……?


「えーっと……みんな、どうする?」


 思わず仲間達を見回して、意見を募る。


(いかずち)で焼き払いましょう。」


「殴り飛ばせば良いのじゃろう?」


「なんであれ、斬ってみせやすぜ。」


 おおう……!

 どうしてみんな、そんなに嬉しそうな顔してるの……!?


 えー、マジかぁ。


 コレとやり合うのー?

 ええー……


 攻撃通るのかな、コレ?




キリが良い所で終えたので、少し短めでしたね。

如何でしたでしょうか?


「面白い!」

「モ〇ハンwww」

「どうやって倒すのwww」


そう思われましたら、下部の☆から評価をお願いいたします!


感想、ブクマもいつでもお待ちしております!


m(*_ _)m


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