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第三話 俺が死んだ日、生まれた日。

いつもお読み下さり、ありがとうございます。

 

 〜 ダンジョン【惑わしの揺籃】 六合邸 〜



 なんだか今日は、みんなの様子がおかしい。


 いや、具体的にどこが、とは言えないんだけど、なんだか妙に、よそよそしい感じがするんだよね。


 アネモネの場合……


「マスター、おはようございます。朝食の支度は整っていますので、お早めにどうぞ。お出掛けなさるなら、どうぞお気を付けて。」


 と、特に急ぎの予定は入ってなかった筈なのに、出掛けることを促してくる。


 マナエの場合……


「あ、お兄ちゃんおはよー♪今日はあたし、モーラ達とお出掛けだから、もうご飯食べたし行ってくるねー!」


 ……お兄ちゃんは参加不可ですか、拒否ですかそうですか。


 アザミの場合は……


「マナカ様。アザミは情報を集めにこれから出掛けて参りますね。朗報をお待ちくださいね!」


 うん、ご苦労さまです……?

 集める情報なんて、有ったかな……?


 シュラとイチは。


「おお、主様よ。ちぃとイチを借りていくのじゃ。儂ももう少し、れべるを上げたいでのう。」


「頭、行って参りやす。何処へって、森でありやすよ。手応えのある竜の魔物が、そろそろまた増えていそうですからね。」


 俺もレベル上げに……ああ、ダメなの。

 俺が居ると、助けてもらえるって 甘えが出る、と。


 ううむ……悲しい。


 いや、みんながやりたいことをやっていられるってのは、とても良いことなんだ。


 たとえ俺が一緒じゃなくても!

 一緒じゃなくても!!


 レティシアは、都市の見回り強化週間とかってもう居ないし。


 極めつけはフリオールだ。


「今日は我が家族が政庁舎に移る日であるからな。すまぬがお前に構っている暇は無いのだ。ではな。」


 ……なんだよ俺に構うって!?

 しかもそんな邪魔者みたいに言わなくたって良いじゃないか!


 いやいや、フリオールにしてみれば、久し振りの家族水入らずになる訳だし、邪魔者と言えば邪魔者なのか。


 うん、納得だな。




 いや納得しても寂しいもんは寂しいわ!


 なんだろう。


 俺、みんなを怒らせるようなことしたかな?


 …………割としてる気がするな。


 思い返せば、俺ってばみんなを振り回すことしかしてないじゃないか。


 アカン!

 洒落にならん!!


 みんなに愛想尽かされたら、俺割と詰んじゃう。

 何より悲しいし、寂死する。


「……みんなに頼り過ぎたかなぁ……」


 転生してきてからここまで、色々な事が起こった。


 ユーフェミア王国との交渉と、その情報漏れによる動乱と鎮圧。


 ダンジョン都市の創造と、移民の受け入れ。


 冒険者活動の開始と、ダンジョンの支配。


 孤児達や困窮する人達の保護に、裏組織や悪徳商人、腐敗貴族の排除。


 冒険者ギルドとの折衝や、最難関ダンジョンの攻略、そして魔族との出会いから保護…………


 うん、どう考えても振り回し過ぎだわ。


 色々やり過ぎでしょ、俺ってば。

 そりゃあ愛想も尽きるってもんだ。


 俺が女なら、こんな厄ネタばっか拾ってくる胡散臭い男、速攻見限る自信があるね。


 つまりそういうこと、なのかなぁ……


「いやいや、決め付けるのはまだ早いぞ、俺!たとえ焼け石に水でも濁流に小石でも、何かしよう。よしそうしよう!」


 安直だけど贈り物とか、何か娯楽を考えるとか、兎に角みんなのためになる事を考えよう!


 よし、そうと決まれば早速行動開始だ。


 今こそ、ダンジョンマスターの力を魅せてやる!!




「アカン、気持ち悪い……」


 あっという間に夕方か……


 久方振りに感じる魔力切れの倦怠感と、二日酔いにも似た頭痛と吐き気。


 よくもまあ、膨大とも言えるだろう魔力を使い切ったもんだ。

 自然回復分も含めると、もっとだな。


 何はともあれ、なんとか形にはなったか。


 後は魔力の回復を待って、怖いけど家に帰るとするかね。


「はぁ……怖いなぁ。またよそよそしくされたら、どうしよう。怒ってたらヤダなぁ……いっそ何があったのか訊くべきか?いやでもなぁ……」


 ああ、ダメだ。


 思えば朝からずっと1人っきりなんて、初めての事じゃないか?


 前世で死んだ後には幼女神(ククル)が居たし、転生しても、最初からアネモネが傍に居てくれた。


 ダンジョンコアがマナエを産み出してからは賑やかになったし、アザミやシュラも最初は戦力のつもりだったけど、一緒に過ごす内に、家族同然の存在になっていった。


 いつも誰かが傍に居てくれて、支えて、助けてくれていた。


 ちょうどシュラを産み出した後だったか。


 フリオールが部下達と侵入して来て、誰も引っ掛かるまいと思っていた罠に掛かって捕まったのは。


 俺がユーフェミア王国と友好関係を結ぼうと本格的に思ったのは、彼女と出逢った事がキッカケだったな。


 回復を待って話してみて。

 不器用で天然で、それでも国民のために少しでも何かを為そうと奔走していた彼女と、その親である王様なら、信用しても良いんじゃないかと思った。


 結果大変な目には遭ったけど、家族みんなの助けで乗り越えて、もう駄目かと思った王国との同盟も、なんとか達成した。


 今では家族ぐるみの付き合いみたいなもんだし、それが無ければ、今の俺も無かっただろう。


 その後も、俺が守りたいモノは増え続けた。


 俺は、ただ生き抜きたかっただけ。


 いつか王様に宣言した通り、『胸を張って生き抜いて、胸を張って死にたい』だけ。


 だから、自分が後悔しないようにやりたいことをやって、救けられる人を救けて、そして満足している。


 だけど。


 増えた移民も、保護した孤児も、共に暮らす家族達も。


 本当に、心の底からそれを望んでいたのか?


 偉そうに力を揮い救けてみても、俺がしてきたことは本当に彼等の助けになっているのか?


 そんな疑問には目もくれず、ここまで駆け抜けて来た。


 初めて1人になって、考えた。


 俺が今こうして居られるのは、我儘を押し通してきたからだし、その我儘をみんなが手伝ってくれたから。


 みんなはやっぱり、俺に振り回されているだけだし、それが本当の望みなのかも、判らない。


 一度立ち止まって考え始めると、どんどん不安が押し寄せてくる。


「……なんにも変わってねぇな、俺は。ちょっと力を得てやれる事が増えたからって、根は小心者のまんまじゃねぇか。」


 仲間に、見限られる。

 俺の傍から、離れられる。


 そう考えることが、何よりも怖く感じる。


 ああ、どうしようもない、小心者で臆病で、自分勝手で考え無しな、俺。


 みんなのことを散々振り回して、でも見放さないで欲しいって、都合の良いことを考えている、女々しい俺。


「ダメだな……魔力切れすると、どうしても鬱になってマイナスなことしか考えられないな……」


 やめだ、やめ!


 1人でこんなこと考えてたって、何も変わりやしないんだ。


 怪我の功名でもないけど、『みんなと一緒に居たい、離れたくない』って気持ちが自覚できただけ、良しとするんだ。


 そうだよ。

 みんなと、いっぱい話そう。


 今朝みたいにまたよそよそしくされたら……って思うけど、それでもぶつかってみよう。


 魔力が回復してきたためか、それとも心の整理が着いたのか、自分でもよく分からないけど。


 それでも多少は上向いた気持ちのままで、家に帰ろう。


 覚悟を決めて、みんなに訊いてみよう。


 なにかあったのか?って。


 家に帰って、リビングのソファに腰を下ろして、みんなを待とう。


「よしっ!行きますか!」


 日が沈み出した茜空の下で気合いを入れた俺は、ダンジョンメニューを開いて、家の前へと転移した。




 慣れ親しんだ我が家。


 ダンジョンコアを休止(スリープ)させてしまった俺に、安全のために神様がくれた、三階建て庭付き太陽光パネル付きの、言ってみれば豪邸。


 今の8人暮らしでもまだまだ余裕の有る、愛する我が家。


 そこに入るのが、とんでもなく怖い。


 アネモネに、『どうして帰って来たのですか』って言われたらどうしよう。


 マナエに、『洗濯物一緒にしないで』って言われたらどうしよう。


 アザミに、シュラに、イチに、フリオールに、レティシアに。


 否定されたら。


 いや、弱気になるな、俺。

 覚悟を決めたばかりじゃないか。


 意を決して、玄関までのアプローチを歩く。


 玄関のドアノブを握って、深呼吸する。


 よし。

 できるだけ、普段通りに。

 いつも通りに振る舞って、何食わぬ顔で訊いてみよう。


 カチャリ、とドアを開け、家に入る。


「ただいま〜!」


 声を上げるも、返事は無い。

 そういえば、いつものアネモネのお出迎えも無かったな。


 これはまさか、ひょっとするとひょっとするのか?


 早くも挫けそうになる心を叱咤して、廊下を奥へと進む。


 リビングルームの扉を潜り、誰かは居るだろうと当たりを付けて、もう一度声を上げる。


「ただい……なっ!?」


 その瞬間。


 リビングに踏み入れた足下に、魔法陣が光輝いた。


「なんっ!?転移陣だとっ!!??」


 なんでこんな場所に――――


 そう思いながら、俺の視界は暗転して、切り替わった。




「お待ちしておりました、マスター。」


 転移魔法の光が去った後。


 俺の目の前には、アネモネが立っていた。


「アネモネ……?此処は……さっきの魔法陣は……?」


 正直訳が分からない。


 なんで俺の家の中に、転移の魔法陣が仕込まれていたのか。


 ダンジョンメニューで現在地を確認しようとしても、何故かブロックされていて、閲覧できない。


「マスター、お話は後で。此方へいらしてください。」


「う、うん……」


 訳が分からないが、アネモネが来いと言うのでついて行く。


 暗い通路を、いつものピンヒールを眺めながらついて行くと、大きな扉に、突き当たった。


「それではマスター。どうぞ、この中へ。」


 扉を開けて進めと言うアネモネ。


 その表情は、今は説明しませんと語っていた。


 不安と疑問で脳内をグルグルさせながらも、俺はそれに従った。


 扉の取っ手に手を掛けて、奥へと押し開く――――


「「「「誕生日おめでとおおおおおおお!!!!」」」」


 …………………………は?


 え?なにこれ?


 俺の目の前に広がっていたのは、いつかゴミ拾い大会後の表彰パーティーで会場にさせてもらった、牧場だった。


 そこには、所狭しととテーブルが配置され、これまた所狭しと料理や飲み物が置かれ。

 お祭りかなんかですかと聞きたくなるほどに犇めき合った、人の群れ。


 そして。


 状況がまったく理解できていない俺の耳に届いた、声。


『ようやく主賓の登場であるな。マナカよ、良くぞ参った!』


 え、ええええ??


 王様?アンタ、何やってんの!?


『うむ、皆の衆よ。サプライズは、大成功であるぞ!見よ、あの呆けた面を!』


 どっと巻き起こる笑い声や歓声、拍手や指笛の音。


『マナカよ。聞けばお主、今日がこの世界に生まれ落ちてより、ちょうど1年だと言うではないか。これは、そなたが生まれたことを記念する、誕生祭である!!』


「「「「わああああああああっ!!!」」」」


 誕生日……?俺の?


『まだ混乱しているようであるな。まあ良い。さあ、お主に伝えたいことが有る者達の声を、聴くが良い。』


 王様はそう言い、後ろに下がって椅子に腰を下ろした。


 代わりにステージに出て来たのは……フリオール?


 観衆の声が静まり、魔法で拡声された彼女の声が、良く通った。


『マナカよ。思えば、我とお前は可笑しな出逢い方をしたものだな。お前の迷宮に侵入した我を、お前は殺す事無く、手厚く遇してくれた。にも関わらず、我はお前に攻撃した。あの時は本当に済まなかった。


 お前と出逢ってから、我の世界は一変した。国も、人々も、何もかもが、お前によって変えられた。我は、それを見続けてきた。


 誇ってほしい。


 お前は、他の誰にも出来なかったことを為し、またこれからも為し続けて行くのだろう。


 我は、それをいつまでも見続けていたいと思う。


 お前が生まれてよりの1年間で為した事よりも、更に多くの変化を、発展を、人々の笑顔を、我に見せ続けてほしい。


 マナカ。誕生日おめでとう!』


 再び歓声が巻き起こるもすぐに治まり、次の人が壇上に上がる。


 アグネスと、ルージュだ。


『マナカ様。お誕生日おめでとうございます。マナカ様にお救いいただいてから、わたくしの毎日は、いつも光輝いております。


 こうして、手を取り合って前へ進む仲間や、友人にも恵まれました。


 改めて、心よりの感謝を、お伝えいたしますわ。』


『マナカさんのおかげで、毎日が充実しています。それは、この街に移り住んだ誰もが抱いている思いです。


 日々感謝を込めて、マナカさんのように、精一杯生き抜いていきますね。本当に、ありがとうございます。


 そして、おめでとうございます!』


 次は、ギリアム司教とマリーアンナ。


『迷宮の主、マナカ殿。貴殿が誕生したこの日に、儂は心より感謝したい。この街には、人々の慈愛が、友愛が満ち溢れておりまする。


 行き場無き無辜の民らをお救いくださったこと、ユタ教会を代表して、御礼申し上げますじゃ。』


『マナカさん。あなたは、ご自分で思っているより、多くの人々を救っています。私は勿論ですが、同じ境遇だった女性達や、孤児達以外にも。


 あなたに救われた彼等が、また他の人の助けになります。

 子供達の笑顔が、人々の心に温もりを与えてくれます。


 そんな愛おしく、誇らしい街を創り上げたマナカさんに、心からの感謝と祝福を、述べさせてください。


 生まれてきてくれて、ありがとうございます。


 お誕生日、おめでとうございます!』


 視界が、歪む。

 胸が、熱い。


 それは、決して望んではいけないモノで。


 自分のために我を通してきた俺には、手に入らないと思っていたモノで。


『マナカきゅん♡アナタは、とても優しい人よん。常に他人(ひと)の思いを汲み取り、それを支えてきたわん。


 たとえそれが自分のためであっても、事実それに救われた、多くの人が居るってことを、忘れちゃダメよん?


 アナタは、前を向いて走っていたから気付かなかったでしょうけど。

 だけど足を止めて振り返ってみれば、こんなにも沢山の笑顔を、創ってきたのよん。


 アタシはとてもステキだと思うし、これからも応援するわん♡』


『最初に会った時は、怖がってしまってごめんなさい。ですが共に活動している内に、マナカさんも色々と苦労をしていることが、分かってきました。


 わたしはこの街が好きです。マナカさんが集めた笑顔が溢れる、この街が、大好きです。


 これからも、無理だけはせずに頑張ってください。

 影の薄いわたしですけど、精一杯協力しますから!


 お誕生日おめでとうございます!』


 コリーちゃん、フィーア。


 俺の方こそ、ありがとう。


 もう滲むどころじゃなくなった俺の目からは、ずっと涙が溢れてくる。


 まえっ!前が見えないんだよぉ!


『マナカ、何泣いてやがんだよ。お前の迷宮のおかげで、俺らは毎日々々泣かされてるんだ。Aランクの俺らがだぞ!?こんな厄介な迷宮は初めてだよ!絶対に攻略してやるからな!!』


『私達も絶対に強くなってみせるわ。だからマナカさんも、油断しないように気を付けてね。』


『旦那には悪いけど、本腰入れて攻略するから、覚悟しとけよ?』


『アタイらもこの街に拠点持ったからね!攻略されたくなかったら、頑張って増設しなよ!』


『迷宮の主に向かって、攻略すると宣言するのも可笑しな話ですけどね。』


『(コクコク!)』


『『『『喋れよ!!??あと、誕生日おめでとう!!』』』』


 ダージル始め、【火竜の逆鱗】のみんな。


 なんだよそれ。


 祝うのか、攻略宣言するのか、どっちかにしろよ、もう……!


『お兄ちゃん、お誕生日おめでとう!!あたしはいつでもお兄ちゃんと一緒だよ♪お兄ちゃんがいつもあたしを護ってくれるように、あたしもお兄ちゃんを護るからね!』


『マナカ様。アザミは、マナカ様の剣であり、盾です。マナカ様が望み赴く場所へと、何処まででも、ご一緒します。』


『何をそんなしょぼくれた顔をしておるのじゃ。儂の主ともあろう者が。主様は、いつも通り笑って居れば良いのじゃ。その笑顔を曇らせる輩は、儂が尽く砕いてみせるのじゃ。』


『頭の手にしたいモンのため、護りたいモンのためなら、あっしは頂いた刃を、存分に振るいやす。どうか、そのまま突き進んでくだせぇ。』


 マナエ、アザミ、シュラ、イチ。


 俺の仲間で、家族で、大切な人達。


 そして。


『マスター。貴方の歩んできた道も、これから歩む道も、決して平らかではないでしょう。この険しい世界の只中で、藻掻き苦しむ時もあるでしょう。


 ですが、貴方が護り、貴方を護りたい人達が、こんなにも大勢居るのです。


 自信を持ってください。

 前へ、進み続けてください。


 貴方の笑顔に救われた多くの人達が、貴方の味方です。

 貴方の力に憧れる多くの人達が、貴方の笑顔を願っています。


 私はこの身果てるまで、貴方の笑顔を見届けます。


 どうか、貴方の笑顔の先に在る光景を、私達に、私に見せてくださいませ。』


 誰よりも俺に寄り添い、支えてくれた人。


 この世界に産まれ落ちてから、誰よりも一緒に過ごし、共に歩んできた、アネモネ。


『『『『お誕生日おめでとうございます!!』』』』


 涙が止まらない。

 鼻水も出てるかもしれない。


 俺は何を考えてたんだ。


 見限られると。

 俺の元を離れてしまうと、そんなことを考え、滑稽に落ち込んでいた今日の自分を恥じる。


 こんなにも、想ってくれている。


 こんなにも大勢の人達が、俺のことを見てくれている。


 こんなに、嬉しいことは無いだろう。

 こんなに、誇らしいことは無いだろう。


 前世で、日本でなあなあに生きてきた俺。


 何も成さず、何者にも成れなかった、争い事が嫌いで、波風立てないようフラフラと立ち回ってきた、六合(りくごう)真日(まなか)


 そんな俺は、今日、この場で、本当の意味で死んだんだ。


『まだまだ語りたい者も多かろうが、そろそろ乾杯といこうではないか。マナカよ。此方に来て、お主からも何か一言申すが良い。皆に応えるのも、またお主の務めであるぞ。』


 王様に呼ばれ、ステージに上がる。


 こっそりと、涙を拭き取るのも忘れない。


 息を整えて、俺を見守る全ての人達に、精一杯の笑顔を向ける。


 こらダージル!それにコリーちゃんも!

 野次を飛ばすんじゃないよ!


『王様、ありがとう。みんなも、本当にありがとう!いつもみんなを振り回して、驚かせる側だったから、自分がやられるとは夢にも思ってなかったよ!』


 俺の言葉に、会場のみんなから笑いが漏れる。


 ホントにね。

 サプライズって、こんなにビックリして。


 こんなにも、嬉しいものなんだね。


『多くは言わない。これだけ、大事なことだけ言わせてもらうよ。』


 家族みんなや、王家の人達、住民達、教会の人達、孤児達や冒険者や、兵士達。


 此処に集まってくれた全ての人達を、しっかりと見回して、大きく息を吸い込んだ。


 俺の言いたいことは、たったひとつ。


『みんなっ!!大好きだああああああっ!!!』


 俺の上げた声も。


 みんなの応えてくれる歓声も。


 拍手の音も、奏でられる音楽も。


 みんなみんな、ひとつに混ざりあって。


 星の瞬く夜空へと、溶けていった。


 本当の意味で六合真日が死んだ、今日、この日が。


 異世界に転生して、走り回って、転げ回った俺が。


 本当の意味で、マナカ・リクゴウが生まれた日だ。




マナカさんの生誕祭でした!


如何でしたでしょうか!


作者はちょっと泣きました(笑)



面白い、誕生日おめでとう、マナカ頑張れ、と思われましたら、どうか評価をお願いします!


感想、ブクマも、いつでもお待ちしております。


m(*_ _)m


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― 新着の感想 ―
[良い点] うわぁぁぁぁぁぁぁ( ;∀;) 目と鼻から汗が止まりません・゜・(つД`)・゜・ 泣かしに来てるでしょ? [一言] 益々大好きだーーーーー・゜・(つД`)・゜・
[良い点] それほど特別とは言えない展開をベースとして「主人公らしさ」がしっかりと描写されているところ。 [気になる点] 「閑話 オヤジ達は眠らない」で語られた【宙に浮く大樹】……いつまでこの切なさは…
[一言] なんか...すごくテンプレートなお祝いの仕方ですね! 周りのみんなが急によそよそしくなって主人公が若干、鬱になるのはもはや祝事のテンプレ! マナカさんが生まれた...ですか。 マナカさんが過…
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