第二話 アネモネ式ブートキャンプ、始動!
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今章の章タイトルを変更しましたので、ご承知置きください。
よろしくお願いします。
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〜 ダンジョン都市【幸福の揺籃】 〜
結局のところ。
王様の国王としての見解は、『静観し、結果が出たら改めて協議する』という、妥当なところに落ち着いた。
『北の大地は人跡未踏の地故、そこで何が起こっておるかなど、余らには計り知れぬこと。もし其処に国が興り、マナカの仲立ちによって我が国との交流を望むと言うのなら、一考の余地はあろう。』
と、なんとも遠回しに、やれるならやってみせろというお言葉を頂戴した。
まあ現状では、ユーフェミア王国としてもそうせざるを得ないんだろうけどね。
国内情勢の安定化を推し進める今この時に、北大陸の戦乱の話や魔族達の亡命、大陸北端の開発案なんかが持ち上がれば、混乱は必至。
またぞろ、泥沼な権力闘争が巻き起こることになるだろう。
それよりも、『知らん間に魔族の国が出来てたよ』『技術と資源を融通してくれるって』『迷宮の主の仲立ちで同盟希望しとるけど』『北の脅威が無くなるよ』といった既成事実を基に、王族派主導で話を進めた方が、利益は大きいだろうし。
国王として、国や民への利益を考えなければいけない立場にしては、今回はちょっと感情的だった気もするけど。
まあ、王様も人間だってことなんだろう。
何しろ、相手は仇敵として戦っていた魔族なんだし。
セリーヌも、細かい決め事はまた追々増えてくるだろうけど、一先ずは安心したみたいだった。
まあ、無理に国を創らなくても、魔族達が脅かされる事無く生きてさえいければ、彼女の父親――亡くなった魔王も充分だって言ってくれるだろうけどさ。
でも、前を向けられるってのは、良いことだよな。
「――――い。おい!聞いてんのか、マナカ!」
おっと。
考え事してたら、完全にコイツのことを放ったらかしにしてたわ。
「ああ、悪いユリウス。聞いてなかった。なんだって?」
ユリウス・ユーフェミア第3王子。
口は悪いが、国王であるフューレンス・ラインハルト・ユーフェミアの第4子で、現在は王都ユーフェミアに在るブリガント王立学園に通っている、継承権も持ったれっきとした王子様だ。
「ったく……これからオレの仲間との顔合わせだからって、もう一度メンバーの為人を教えろって言ったのは、アンタだろうが。」
ああ、そうだったそうだった。
学園の長期休みの間に特訓してやる代わりに、信頼できる仲間を作って連れて来いって言ったのは、俺だしな。
その仲間達はというと、流石に王族と一緒に泊まる訳にはいかないので、街のそれなりの宿屋に部屋を用意しておいて、そこに滞在してもらっている。
因みに王様ってば、マジで家族全員連れて来やがったよ。
王妃様であるグレイスさん、第2王子のセイロン王子、第3王子のユリウス、第4王子のミケーネ、そして、第2王女のマーガレット。
護衛の近衛騎士やお付の補佐官も含めれば、なんと総勢50人という大所帯で、この都市に入場を果たしたのだ。
それも、全員性向値もプラスで、善人ばかり選別したみたいだったよ。
入場審査も、問題なく通過していた。
現在は護衛達も共に、この街から転移装置で行ける階層に作った迎賓館にて、滞在してもらっている。
ただし、訪問の名目はあくまでも『新都市の視察』なので、数日間俺が饗したら、この都市の政庁舎……所謂領館や領城と言われる、本来なら為政者が住む場所へと、移ってもらう予定だ。
……そこに住むべき為政者であるフリオールは、俺の家で暮らしてるけどな。
本当なら順番は逆なんだろうけど、魔族や北大陸の問題が在ったからね。
王族であるフリオールや、仲間達みんなと相談した結果、先に俺の方へ泊まってもらった、というわけだ。
そんなことを考えながらもユリウスと会話し、街を歩き紹介しながら辿り着いたのは、都市警備隊の本部施設だ。
「此処が、都市警備隊が詰めている場所だ。今日の待ち合わせ場所だな。友達はもう着いているだろうから、俺達も行こうか。」
そうしてユリウスを先導して、建物内に入って行く。
施設内は、前世で言うと警察署のような造りかな。
総合案内の受付へと歩み寄り、要件を伝える。
「ユリウス王子の学友達が来てる筈なんだけど、何処に行けば良いかな?」
勿論、迷宮の主であり、魔族である俺の容姿は既に都市中に知れ渡ってるので、顔パス状態だ。
「ユリウス殿下!ようこそお越し下さいました!マナカ殿も、ご苦労様です!ご学友の皆様は、隊長……レティシアがご案内し、鍛練場にてお待ちです!」
「うん、分かったよ。ありがとう。」
受付の兵士に礼を言い、ユリウスを伴って奥へと進む。
鍛練場はこの施設の一番奥だ。
この都市の警備体制やなんかを説明してやりながら、俺達はそこへと向かった。
「ユリウス第3王子殿下、お久し振りです!ようこそ、おいでくださいました!」
今日も元気なレティシアの挨拶が、鍛練場に響く。
久し振りってことは、2人は面識があるのかな?
「しばらくだな、リッテンバウワー卿。王都の剣技大会以来か?」
「剣技大会?」
なんぞそれ?
天下一武〇会的なアレかな?
「ああ、アンタは知らないか。王都で4年に一度開催される、王国家臣全てから剣技自慢が集う、武を競い合う催しだ。彼女は去年の大会で準優勝して、その表彰の場に俺も立ち会ってたんだ。まあ、父上……陛下のオマケだけどな。」
ほーん。
そんな大会があるんか。
……面白そうだな。
ここでもやっちゃおうかな……?
「殿下。どうか、レティシアとお呼びください。既に家からも出ており、近衛からも去った身ですので。」
「分かった、レティシア。で、そんな功績から彼女は、この若さで近衛騎士に抜擢されたって訳だ。一部では【剣姫】って呼ばれたりしてたな。」
それなら聞いたことあるわ。
そっか、そんな由来が有ったのね。
「なるほどね。それで、【剣姫】サマ?ユリウスの友達ってのは、その子らか?」
ユリウスの言葉に恐縮しているレティシアに、話を先へ進めることを促す。
だって、所在無さげにユリウスを見てるから、可哀想なんだもん。
「マナカ殿、揶揄わないでくださいっ、もうっ……そうです。皆さん、お待たせしましたね。此方へどうぞ!」
「そうだな。お前らも、こっち来いよ。」
ユリウスとレティシアに促されて、待たされていた4人が、こちらへと歩み寄って来る。
「マナカ、コイツらが、オレの仲間だ。」
ユリウスが、横一列に並んだ子達を紹介してくれる。
「みんな、よろしくね。ユリウスから聞いているだろうけど、俺の名前はマナカ。マナカ・リクゴウだ。この迷宮、【惑わしの揺籃】の主をしているよ。」
先に俺から自己紹介だ。
如何に友達からの紹介だろうが、初対面の、それも魔族の男となんぞ、いきなり円滑にコミュニケーションは取れないだろうからね。
「ミ、ミハエルです!騎士を目指しています!」
「わ、私は、ももモリナと言いますぅ!ま、魔法使い見習いですぅ!」
「マルコーだ。僧侶見習いをしている。よろしく頼む。」
うん、聞いてた通りだね。
ミハエルは気弱らしいけど、目標に向かって頑張る子って感じ。
ももモリナ……モリナはおっとりしてるらしいが、今は緊張の方が強そうだね。
マルコーは、落ち着いてるね。
根性が有るって聞いてたけど、その通りみたいだな。
そして……
「ふぅん。あんまり強そうには見えないわね?アタシはミカエラよ。魔法使いをしているわ。得意な属性は、火、土、風よ。」
お転婆、じゃじゃ馬、負けず嫌い、勝ち気なヤツ等々……やけにレパートリー豊富に語られた、聞いた通りに強気そうな少女、ミカエラ。
なかなか言うね、キミ。
「ちょっ!?ミカ、バカ!これから教えを乞う人に、なんてこと言うんだ!?」
「そうだよミカちゃん!?は、早く謝ってぇ〜!」
「なによ!?思ったこと言っただけじゃない!?」
ははっ!
賑やかだなぁ。
「いいよいいよ。俺は気にしてないから。今は魔力は抑えてるからね。弱そうに見えるのも、しょうがないよ。」
聞いてた通り、なかなか個性的なメンバーじゃないか。
楽しくなりそうだな。
「それで?君らも、ユリウスと一緒に強くなりたいってことで良いのかな?」
彼らは、形の上ではユリウスと俺の我儘に巻き込まれた子達だ。
本当に強さを求めているのか、そこを確かめないといけない。
「は、はい!よろしくお願いします!」
代表して、ミハエルが答えた。
他のメンツも、強い瞳で頷いている。
うん。
それなら、力になってやれるな。
「了解したよ。それじゃユリウス。早速だけど、みんなの今の力を見せてもらおう。連携の訓練はしてるだろ?今から俺が相手役を喚ぶから、戦ってみよう。」
みんなちゃんと言われた通りに、自前の武器や防具を持ってきてくれたみたいだしね。
「おう。お前ら、早速だぞ!準備しろ!」
「「は、はいっ!」」
「ああ。」
「仕切るんじゃないわよ!」
それぞれに異なった返事を返しながらも、普段からちゃんと意思疎通が出来ているんだろう。
その動きはテキパキとしたもので、程なくして訓練の準備が整った。
「よし、それじゃあ始めるか。」
俺はそう宣言し、直径50メートル程のドーム状の結界を、俺達の周囲に張り巡らせる。
「す、すごぉい……!こんな大きな結界を、一瞬で……」
「ふ、ふん!なかなかやるじゃないの!」
「相変わらずデタラメな奴だな……!」
ふむ。
魔法使いの才能が有る、モリナとミカエラ、ユリウスの3人は、俺が結界を張ったことにちゃんと気付けているようだ。
「今俺らの周りに、そこそこの広さで結界を張ったよ。この中で君らがどんなに暴れても、周囲に被害は出ないから、安心してね。それじゃあ、お相手は……っと♪」
ダンジョンメニューを操作して、適した相手を探す。
【神眼】で鑑定してみたところ、4人のレベルはみんな5か。
ユリウスは1人だけ突出してレベル7だけど、まあ妥当なとこかな。
それじゃあ、ご登場といこうか。
「え!?なんで!?魔物が急に!?」
「ゴブリンだと!?それも5匹も!!」
おうおう、みんな慌てちゃって。
「マナカ!こいつはアンタの仕業か!?」
ユリウスが、俺に向かって怒鳴るように訊ねてくる。
それに対して、俺は。
「そうとも。みんな忘れてないかな?此処は迷宮の中で、俺はその主なんだよ?ゴブリンだろうがドラゴンだろうが、何でも産み出せるに決まってるだろ?」
「……マナカ殿、悪い顔になってますよ。」
おっといかん。
みんな、あまりに良い反応してくれるもんだから、ついニヤけちゃうよね。
「実戦に勝る訓練なしっ!さあ、死に物狂いで戦うのだ、若者よ!ボヤボヤしてると、ゴブリンにあ〜んなことやこ〜んなことされちまうぞぉ!?」
いや、そんな怖がらなくても大丈夫だって。
ソイツらちゃんと、君らのレベルに合わせてるから。
「ど、どんなことですかああああっ!?」
「いやあああっ!?犯されるうっ!?」
うむ。
女子2人は、やる気スイッチが入ったみたいだね。
男子達も、それぞれ武器を構えて、臨戦態勢をとっている。
「くそっ!まさかこんな内容とは思わなかったぜ!後で覚えてろよ、マナカあああああっ!!!」
うんうん、頑張りたまへよユリウス君。
その『後で』に、体力が残ってればイイネ。
いや〜、それにしても懐かしいな。
俺も最初、こうやって延々とゴブリン達と戦わされたっけなぁ。
しかも惑わしの森産の、外のオークより強いと云われているヤツらと。
あん時は何匹倒したんだっけ?
200くらいだったかな?
でも流石にこの子らに、いきなり200は無理だよね。
よし!
今日のところは、50匹くらいにしておこう。
ほうら、取り敢えず追加の5匹だよぉ〜。
「てめえええ!マナカこのやろおおおおっ!!??」
ファイティンっ♪
念願叶って、ユリウス君強化計画が始まりました!
頑張れユリウス君!
負けるなユリウス君!
世界の明日は、君の手に懸かっているかもしれない!!←
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2作目の【奴隷商】の方も、ボチボチ更新する予定ですので、そちらも読んで下さると嬉しいです。
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