第十四話 魔族会議、議題は「紅茶」。
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〜 ドラゴニス帝国 ダンジョン【終焉の逆塔】 〜
《ダンジョンを明け渡してほしい。》
そう俺に告げられた魔族の姫セリーヌは、眉を顰めて、不快感を表した。
《貴方様の言が真実であるならば、魔王たる父上は、ダンジョンマスターという存在で、このダンジョンは、魔王クシュリナスの所有物となる筈です。それを渡せ、と?》
自らの一存で渡せる筈がない、という思いが半分。
もう半分は、どうやって?といったところか。
《ごもっともだな。確かに王の所有物を、血縁とはいえ他人がはいそうですかと渡す訳にはいかないよね。でも魔王は、姫様のお父さんは、果たして無事なのか?北の大陸で、一体何が有ったっていうんだ?》
気になるところを訊ねてみる。
緊急避難先として、他のダンジョンをパスで繋いで確保していた、そこまでは解る。
俺だってやっている事だ。
だが何故?
どうしてそれを使う羽目になった?
そして、当の魔王が来れなかった理由は?
セリーヌ姫は、沈黙して顔を俯かせている。
ふむ。
一度腰を据えて、じっくり話した方が良さそうだな。
そうと決まれば。
《お茶にしよう。》
《…………は?》
俺の言葉に、気の抜けた声を出すセリーヌ姫。
《立ち話も何だろう?椅子に腰掛けて、お茶で落ち着いて、ゆっくりと語り合おう。俺の事情を話すから、どうか君も。君達の事を、聞かせてほしい。》
そう言ってから、俺は警戒されないために、ワザとセリーヌ姫に背を向けて、結界を使ってテーブルや椅子を創り始める。
「アザミ、椅子にクッションを配ってくれ。シュラ、テーブルクロスを頼む。今からお茶会だ。」
仲間達に声を掛け、手を貸してくれるよう頼む。
アザミは尻尾を振りながらクッションを置き始め、シュラは呆れた顔で、テーブルクロスを敷いている。
俺はその間に、同じく結界で創った台にクロスを敷いて、お気に入りのティーセットやお菓子、取り分け用の小皿を用意する。
今日のお菓子は、ラングドシャに、色んな味を楽しめるよう各種ジャムと、サワークリームだ。
そこまで準備が整ってから、俺はセリーヌ姫に振り返って、口を開く。
《さあ、そんなとこに突っ立ってないで、座ってくれ。仲間の君らも座りなよ。腰を据えて、話し合おう。》
訝しむ魔族達だったが、アザミとシュラが早々に着席し、俺がお茶を注いで渡している姿を眺めて、先ずセリーヌ姫が動いた。
クッションの置かれた結界製の椅子に、ゆっくりと腰を下ろす。
《姫様!?》
当然、お仲間からは抗議の声。
しかしセリーヌ姫は、凛とした態度で宣言した。
《お前達も着席なさい。少なくとも、このお方達に、我等に害を為そうという悪意は感じません。》
姫様にこうもハッキリと命令されては、断れないのだろう。
アークデーモン2人と真祖吸血鬼が、渋々といった様子で椅子に座った。
俺は苦笑を堪えながら、人数分のお茶とお菓子を用意する。
そしてそんな折に、広間の壁で、動く者の気配を察知した。
《ぬっ!?これは一体どういう事なのだ!?》
ああ、最初にシュラに蹴り飛ばされたイフリートの彼か。
すっかり忘れてたよ。
椅子やカップを、もう1セット用意しなきゃな。
さて。
俺の両隣にはアザミとシュラが座り、正面には魔族の姫であるセリーヌ。
セリーヌの両側にアークデーモンが座って、俺から見て左端に真祖吸血鬼、右端に魔人イフリートが腰を下ろしたところで、話し合いの始まりだ。
俺はお茶をひと口啜ってから、話し始める。
《まずは付き合ってくれてありがとう。改めて、この南の大陸で幾つかの迷宮を支配している、マナカだ。こっちは仲間のアザミとシュラだよ。悪いが、君らの言葉は俺にしか解らないみたいだから、そこは承知しておいてくれ。》
先ずは改めて自己紹介をした。
アザミとシュラにも念話を使って、同時は無理だけど、通訳をするつもりだ。
《では此方も。貴方様の言う北の大陸で、魔族の国を治める魔王クシュリナスの娘として生を受けました、セリーヌです。彼らは、近衛兵団に所属している魔族達です。何れも、男爵級の実力を有しています。》
ふむ。
この称号にある爵位ってのが、要は強さの指針になる訳か。
そしてセリーヌ姫の国では、その強さこそが身分に影響していそうだな。
《丁寧にありがとう。それじゃあ先ずは、俺達の事情から話そう。質問が有れば、適宜聞いてくれ。》
そうして、俺は此処に至るまでの経緯を説明し始める。
俺の迷宮内に都市を創り、友好国の民を受け入れ、共存していること。
俺の目的のために、冒険者として活動していること。
そんな活動の折に、このS級ダンジョン【終焉の逆塔】に、スタンピードの兆候が表れ、俺の正体を知るギルドの協力者から、事態の解決を依頼されたこと。
俺はこのダンジョンを支配して、スタンピードを阻止するつもりであること。
攻略中に得た守護者達の言葉から、このダンジョンは北の大陸の魔族に縁が有ると知り、またマスターか、それに準ずる者が居ることを確信したため、話をするために、この最深部まで降りて来たこと。
それらを、丁寧に説明していった。
《こんなところかな。何か、質問は?》
説明中は黙って聴いていた魔族達だが、気になることは多いだろう。
質問しやすいよう、こちらから水を向けてやる。
《このダンジョン――迷宮は、南の……ドラゴニス大陸でしたか。その大陸のどの辺りに位置しているのですか?》
セリーヌ姫からの質問だ。
まあ、気になるよね。
魔王に転移させられて、いきなり見ず知らずの土地に放り込まれたんだから。
《この大陸の南部だね。領土としては、大陸の覇権国家である、ドラゴニス帝国の中に位置しているよ。》
俺は大陸の地図を取り出して、指で大体の位置を示して説明する。
《大陸の1/3もの版図ですか……》
どうやら、自分達が如何に危うい状況に居るか、理解できたみたいだな。
ドラゴニス帝国は、大陸の覇を謳って、現在も版図を拡げているゴリゴリの覇権国家だ。
そんな超大国の真っ只中に突然放り込まれた彼女、彼らの心中や如何に……ってところだ。
《聞いている限りでは、君らは魔王がダンジョンマスターだということを、知らなかったように感じる。つまり、ダンジョンの取り扱いも理解できていないんだろうね。》
俺の言葉に、悔しそうに唇を噛むセリーヌ姫。
俺の予想では、彼女の父親――ダンマスにして魔王の彼か、若しくはその先代かが、200年以上前にこの大陸を訪れたんだろう。
どのようにして侵入したかは判らないが、まあ悪魔の能力でも何でも使えば、やってやれないことはない筈だ。
それにその頃は、此処ら一帯は、まだ帝国の領土じゃなかったみたいだしね。
そして、将来への足掛かりか、単に緊急避難先としてかは知らないが、このダンジョンを支配し、S級にまで育て上げた。
彼の国も、恐らくはダンジョンなんだろう。
それも、地上にも延びた開放型のダンジョンだ。
そうして支配した此処と、自身のダンジョンを繋いで、普段は地元である北大陸で、ダンジョンを国として運営していたんだろう。
その予想をセリーヌ姫に話してみると、思い当たる節が幾らかあるようだ。
《父上の先代、私のお爺様が、放蕩好きの魔王だったと聞き及んでいます。国の運営を側近に任せ、自身は1年も2年も姿を晦ますことは、ザラであったと。》
なるほど。
ほぼその爺さまが、このダンジョンの支配者で決まりかな。
で、そのダンマスの権限は、今は父親に継承されていると見ていいだろう。
しかし、放蕩好きか……
《君らを逃がした転移魔法陣だけど、もしかして他にも有る?》
気になることはそれだ。
もしかしたら、このダンジョンと同じように、北大陸とパスが繋がっているダンジョンが複数在る可能性が高まってしまった。
それは非常に不味い。
魔族は思っていたよりもずっと理性的だったけど、その魔族や魔王にとって危険な存在が、彼女の国に迫っていた筈だ。
それが、こっちに来かねない。
《どうでしょう、私には判りかねます。少なくとも、私達が連れられた転移魔法陣の在った部屋は、他とは隔離された、個室であった筈ですが……》
現状では判らない、か。
しょうがない。
一応最悪のケースを想定だけしておくに留めよう。
後でアネモネやフリオール達と相談だな。
国やギルドは……それ次第かな。
《そうか、ありがとう。それについては俺の方で調べておくよ。それで?君らの事情は、教えてくれるかい?》
セリーヌ姫は、冷めたお茶の入ったカップを両手で包むように持って、何か考え込んでいるようだ。
俺は新しいカップを取り出し、温かいお茶を注いで、差し出してやる。
《あ、ありがとうございます。そ、その……できれば、ミルクとお砂糖も……》
ああ、それで飲めなかったのか。
俺は微笑ましく思いながらも、無限収納からシュガーポットとミルクポット、それからティースプーンの入ったカゴを取り出し、セリーヌ姫に差し出す。
これは、俺の配慮ミスだったね。
俺はストレートでも全然イケる派だから、砂糖とかは失念していた。
彼女は、目の前で散々俺達が飲み食いしているのを観たこともあってか、素直にポットを受け取って、自分のお茶に砂糖とミルクを加え始めた。
《君らも折角だから、飲みなよ。砂糖もミルクも、遠慮しないで使って良いからさ。》
《折角のご好意ですよ。頂きなさい。》
全く手を付けていないセリーヌ姫の配下達にも勧めると、なんとセリーヌ姫も俺の言葉を後押ししてくれた。
その言葉に、彼らは渋々ながらも、お茶やお菓子に手を付け始める。
イフリートくんは……ヤケ食いかな?
みんなのだから、ちょっとは加減してね?
《…………美味しい。ミルクティーなんて、何年振りかしら。》
ん?
魔族の国には無かったのかな?
《マナカさん……と言いましたね?》
カップをソーサーに戻したセリーヌ姫が、真剣な表情で俺を見る。
《【紅茶〇伝】と【午後〇紅茶】、どちらが好きですか?》
《俺は【紅〇花伝】だな。ミルクティーとしてなら、だけど。》
俺、即答である。
うん、午〇ティーも、ストレートは好きだよ?
《……やっぱり、日本人なのですね?》
そんなことだろうと思ったよ。
要は、日本人しか知らないような話題を振って、カマ掛けして俺の正体を探ってきた訳だ。
《そう言う君もね。俺の前世の名は、【六合真日】だ。今世でも同名だから、気軽にマナカって呼んでくれていいよ。君の名前は?》
転生者であることを明かす。
それを聴いたセリーヌ姫は、警戒心をだいぶ解いてくれたようだ。
《お察しの通り、私も元日本人です。前世では、【御堂なつめ】と名乗っていました。元大学生です。》
そう言って、胸元からペンダントを取り出すセリーヌ姫。
あれは……なんらかの術具かな?
《姫様!?まさか、ご正体を晒されるのですか!?》
慌てたように、配下の真祖吸血鬼が声を上げる。
他の面々も、その言葉にギョッとした顔だ。
《その通りです。マナカさん、私は貴方の言葉を全面的に信じ、これから私の真の姿をお見せします。》
そう言って、ペンダントに魔力を注ぎ始める。
途端、セリーヌ姫が淡い光に包まれたかと思うと……縮んでいく?
光が収まったそこには、あどけない顔にクリンッとした紅い大きな瞳が収まり、フワフワのウェーブが掛かったボブカットの黒髪を揺らす、幼女とも少女ともとれる年頃の、子供が居た。
《これは、姿とステータスを偽ることが出来る魔導具です。そして、本当の私は、まだ8歳の子供なのです。》
ちょこんっ、と。
テーブルから辛うじて頭だけ出た状態で、俺の用意した椅子に座りそう話すセリーヌ姫。
う、ううむ……!
これは流石に予想外だな!?
《そ、そうだったのか。普段は姫として、さっきの姿で過ごしているってこと……?》
あまりの事態に思わず狼狽える。
でもまあ考えてみれば、前世の記憶を持ったまま転生したのなら、魔力的にも身体的にも優れた魔族の身体なら、そう不便も無い……のかな?
《その通りです。幼くとも、前世の記憶や知識を持っていた私は、周囲の同年代の子供に比べれば異常な早さで成長しました。【神童】などと持て囃されたりもしましたね。知識を利用して、政務のお手伝いをすることにもなったのですが、流石に子供の姿では……と、先程の魔導具を、父上が下賜して下さったのです。》
そして……と。
セリーヌ姫は、北の大陸で、魔族の国で何が起こったのかを、語り始めた。
遂に正式登場!
魔王の娘、セリーヌ(8歳)!!
そんな彼女は元日本人の転生者、御堂なつめちゃんというJDでした。
うん、合法なのか違法なのか。
真日さんのロリコン疑惑は、まだまだ続きそうです。
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続きが読みたければ☆5つ。
ロリが好きなら☆5つ、お願いします!
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m(*_ _)m