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神殺しの聖者  作者: 江戸まさひろ
第1章 聖女と異端者
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プロローグ 砂漠の墓標

初めての投稿なので、なにかミスがあったらごめんなさい。

 お墓を作った。

 大切な人のお墓を。

 

 広い砂漠の真ん中にポツンとたたずむ墓標──。

 それは寂しいことこの上ない光景だけれど、色々と複雑な事情のある人のお墓だから、あまり人目の付く所には作れなかった。

 

 まあ、あたしもあまり人のことは言えないけれどね……。


 ただ、あたしがこの隣に埋められるのは、まだずーっと先の話だろう。

 我が余生、呆れ果てるほどの長さがまだ残っている。

 最近では寿命で死ぬことができるのかさえ疑わしく思えてきた。

 それだけ長い時を生きた。

 

 でもあの人は寿命で逝けた。

 正直少し妬ましくもあるけれど、沢山の苦しみを抱えた人生を送ってきたあの人にとって、死の眠りは安らぎに満ちた休息になるだろう。

 だからあの人の死をあたしは祝福しようと思っていた……のだけれど、あの人はこのまま静かに眠ることを望まなかった。


 あの人の身体はこのお墓の下で眠っているけれど、その魂は今頃この世界の何処かで新たな生命に生まれ変わっているはずだ。

 

「君に寂しい思いをさせない為にも、早く生まれ変わってここに帰ってくる」

 

 あの人はそう言い残して、それからほどなくして逝った。

 

 あたしはその言葉を疑わない。

 あの人は我が最愛の人だから、その言葉を疑う術をあたしは知らない。


 だからここで待っている。

 たぶん最低でも十数年もの時間はかかるだろう。

 けれど、あの人はきっとここに帰ってくる。

 それまであたしは待ち続ける。

 

 しかし、ただ待っているだけというのも退屈なものだ。

 何か暇潰しになるようなことはないだろうか。

 そう思いながら、ぼんやりと墓標を眺めていた。

 

 暫く墓標を眺めていると、名前を刻んだだけの墓標では少し寂しいような気がしてきた。

 だから何か言葉を刻もうと思い立つ。

 あの人が帰ってきて、その言葉を見た時に喜ぶような言葉を。

 

 それから丸1日くらいかけて、墓標に刻む言葉を考えた。

 その言葉をチョークで下書きしてから、ノミで丁寧に、かつ深々と墓標に刻んでいく。

 浅く彫ると吹き付ける砂で風化して読みにくくなる可能性もあるから、手は抜けない。

 

 一文字一文字、心を込めて彫り込んでいく。


 この言葉を読んだ時、あの人はどんな顔をするだろう。

 早くそれが見たい。

 ただ、文字を刻んだその後に何をするのか、それが問題だ。


 ……時間はまだまだ余っていた。


 そう、無限にも等しいほどに。

既に完結している作品なので、なるべく毎日投稿していきたいと思います。修正前の物ならば、ブログで読む事も可能です。そちらには挿絵などもあります。

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