9話
妖精達が沁に話しかけた。
「雅の手に触れたから、私達が見えるのよ。きっと!」
沁は嬉しそうに妖精達に向かって話し始めた。
「妖精もいるなんて、凄い!凄いよ雅!妖精さんはじめまして」
「はじめましてじゃないわ。私達はあなたの事を知っているわ。いつもこの薔薇園に来てくれるもの」
「そうだったんだね。君たちは僕をいつも見てくれていたんだね」
そう話し込んでいるとすっかり夜が明け、太陽が昇り始めていた。
あ、どうしよう羽が‥‥‥
(心配いらないわ。人間には見えないから。でも飛んでる所を見られたら、自然と羽が見えてしまうから、これからは注意が必要よ)
エクスシアの声が聞こえた。
(エクスシア、私、沁に見られたし、本当の事を話してしまった。私、まだ沁の側にいられるの?)
(それは大丈夫よ。あなたは沁の守護天使なんだから、正体がばれたとしても大丈夫)
私は安心した。
(つ~か、もっと早く教えてよね?)
(あらあら、怒らせちゃったかしら? 私はこれでも忙しいのよ。1から全部教えられるほど暇じゃないわ。何事も経験よ。経験しながら覚えていけばいいのよ)
(エクスシアのケチ!)
(まぁ雅、時々口が悪くなるわね。うふふ…あなたは面白いわ)
のんきな事言っちゃって‥‥‥
そう心の中でエクスシアと会話をしていると、
「あれ? 妖精さんの姿が見えなくなった」
沁がそう言った。
妖精達は私に
「沁が雅の手を放したからよ! そう伝えて!!」
「沁、私の手を放したから見えなくなってるみたい。妖精達がそう言っているわ」
「そうなんだね。急に姿が見えなくなったから、びっくりしたよ」
その時だった。
執事の田神さんがやって来て
「沁様、こちらにおいででしたか。ご朝食の準備が整いました」
「わかった。今行く。雅、行こう」
「うん!」
「雅、今夜ここでまた話そう! 妖精さんも一緒に! なんだか雅が来てから楽しくて仕方ないんだ」
「OK!」
今まで、事故に遭い、皆から腫れ物を扱うみたいに過ごして来た沁。
今までの事を考えると胸が苦しくなる。
これからは楽しい思いをたくさんさせてあげよう!
私は心からそう思った。