7話
テーブルの上には凄いご馳走が並んでいた。
わ~!! 美味そう!
「さぁ、食べようか」
沁がそう言うと、執事が椅子を引いてくれて、私はそこに腰かけた。
「うわっ! このステーキでかっ!! 美味そう!!」
「雅、君は本当にすなおで正直ものなんだね。思った事をそのまま口に出すタイプかい」
そう言いながら、沁はクスクスと笑っている。
「え~っ!! だってこんな大きなステーキ食べた事ないもの。しかも美味っ!やわらか~い!! う~む。幸せ~!!」
「あははははは!」
また大声で笑われてしまった。
下品と思われなかったかしら。
女の子としては、やはりそこらへんは気になるところである。
食事を終えると、
「今日は本当に楽しかったよ。こんなに楽しい1日を過ごせたのは何年ぶりだろう。ありがとう雅。君と出会えて良かった。」
沁は嬉しそうにそう言った。
「私こそありがとう。ご馳走様でした」
沁、たとえ私の事を覚えていなくても、あなたの側で笑顔を見ていられる。
私は幸せものよね。
「さぁ、今日は疲れただろう? また明日、雅。お休み」
「沁、おやすみなさい」
食事を終えると、それぞれの部屋へ帰って行った。
沁の笑顔は相変わらず素敵だな~。
なんだかいろいろとありすぎて、興奮して眠れそうになかった。
そうだ!薔薇園にあった噴水のところに行ってみようっと!
私はこっそり部屋を抜け出し、噴水のほうへ走って行った。
噴水に着いて空を見上げると、小さく輝く星がたくさん出ていた。
すると、
「ねえ、絶対天使よ!」
「そうかしら」
「月明りでうっすら羽が見えるじゃない!!」
薔薇園のほうから声が聞こえた。
私は声が聞こえた薔薇のほうに向かった。
「誰? 誰かいるの?」
「私達の声が聞こえるの?」
「聞こえるわよ! 姿を現してちょうだい」
すると小さくて可愛らしい妖精達が出て来た。
「あなた達、妖精さん? 可愛い~!! はじめまして!」
「可愛いって、そんなの当たり前じゃない。あなたは天使でしょ?」
妖精達は照れながらクスクスと笑っている。
「わかるの?」
私は妖精たちに向かってそう言った。
「わかるわよ。だって羽が着いてるもの」
私はとっさに背中を見ると、うっすらとだが白く輝く羽が見えた。
「あ、え~っ? 私の羽なの? 綺麗! やっと天使らしく思えて来たわ」
妖精たちは首をかしげながら
「初めて自分の羽を見たの?」
「そうなの。だって、天使になり立てですもの。妖精さん達はずっとここに住んでるの?」
「そうよ。ここは私達のお気に入りの場所なの」
「妖精さん、仲良くなりましょ。私、まだ飛べないの。教えてくれる?」
「いいわよ。お友達になりましょ。天使のお友達は初めてだわ。羽を伸ばして飛ぶイメージを思い浮かべながら飛ぶのよ。簡単よ」
「わかったわ。やってみる!! こうかしら。ふん!!」
私は両足を思いっきり踏ん張って見せた。
すると、妖精達が爆笑した。
「やだ~。何? その格好!! ふん! だって~!! キャハハハハ!」
「ちょっと~! 笑わないでくれる? これでも私は一生懸命頑張ってるのよ」
「だって、おかしいんだもの。キャハハハハハハハ! もう少しリラックスして頭の中で飛ぶイメージをしてみて」
そんなにおかしかったかしら?
「わかったわよ。やってみるわ」
頭の中でイメージ……
私は声に出して
頭、頭…とつぶやいていた。
すると、またもや妖精たちは大爆笑している。
「今度は頭、頭だって~! ギャハハハハハ! そんなんじゃいつまで経っても飛べないわよ! ブハッ! キャハハハハ! 頭の中で飛ぶイメージをするの。リラックス、リラックス……リラックスしてイメージするのよ」
「もう~!! 笑いすぎよ~。リラックスね…わかったわ」
何度も何度もイメージして、もうすぐ夜が明けようとしたその時――
「やった……やったわ! 飛べたわ。妖精さんありがとう」
「やったわね! おめでとう!!」
まだまだ上手く飛ぶには程遠かったが、なんとか形になってきたみたいだ。
私は嬉しくて噴水の上を時々ヨロヨロしながらも飛び回っていた。
その時です。
「雅?」
私が飛んでいたところを沁に見られてしまった。