11話
私達は恥ずかしい気持ちを抑えてお互いに笑い合った。
私は幸せだった。
たとえ沁に前世での記憶が無くとも、こうやってまた恋人同士なれたからだ。
(あら、やったわね。雅)
エクスシアの声が聞こえた。
(沁はとても幸せそうよ! もちろん、あなたもね)
「あ、全部見ていたのね! エクスシア、盗み見はよくないわよ! ほんと意地悪ね」
「雅? 誰と話しているの?」
しまった……
沁はエクスシアの存在を知らない。
「何でもないわ。沁、大好き!」
そう言って私は沁に抱きついた。
「僕も大好きだよ。雅」
それからは、前世の時のような恋人同士の毎日が続き、とても充実していた。
これで私が人間だったら、もっと良かったのに…
時々、そう思わずにはいられなかったが、そんな事を考えても仕方のない事だという事はわかっていた。
沁の恋人にまたなれた事に、嬉しい気持ちには変わりないのだから。
楽しい毎日を過ごしていたある日。
それは突然やって来た……
沁が急に頭を抱えて
「痛い、痛い痛い!」
そう言うと気を失ってしまったのだった。
その様子を近くで目のあたりにした私は…
「沁! 沁! どうしたの? しっかりして!! 沁!」
執事が慌てた様子で沁の側に行く。
「沁様! 誰か! 救急車を! 早く!」
すぐ側にいたメイドは、おろおろしながら返事をした。
「は、はい。今すぐに!」
そう言って、救急車を呼んだのであった。
沁は救急車に載せられ、救急病院へと運ばれた。
(来るべき時が来たわね!)
エクスシアの声が聞こえた。
「どういう事よ! エクスシア、答えて!」
(彼の今世での寿命が来たということよ)
「何それ! 嘘でしょ? 沁はまた死ぬの?」
(そうよ)
「なら、私は、私は沁の守護天使じゃなかったの?」
(雅、あなたは十分彼の事を守護したわ。あなたが現れなかったら、彼はあのまま暗い人生を送っていたのよ)
「そんな……短すぎるわ! 酷すぎる…こんなのってないわ! エクスシア、本当にどうにもならないの?」
(雅、これは運命なの。仕方のない事なのよ)
「エクスシアのばか~っ!!」
私は大声を出して泣き崩れたのだった。