10話
皆が寝静まった頃、私は噴水の所で妖精達と沁を待っていた。
「待たせたかな?」
沁がそう言って待ち合わせ場所にやって来た。
「そんな事ないわ。妖精達と話しをしていたの」
そう言うと、沁が私の手を握り始めた。
「妖精さん、こんばんは!」
「こんばんは、沁」
「さてと。妖精さん、雅が上手く飛べるようになるように、練習を手伝ってくれるかい」
沁は妖精達にそう言った。
「もちろんよ。任せて!」
「何とか飛べるようになったけど、長く飛べないの。難しいわね」
私は苦笑いしながらそう言った。
「雅なら大丈夫だよ! 妖精さん達もついてるし、僕も応援するから」
沁の言葉に勇気付けられた。
それから毎晩、私が上手く飛べるように練習が始まった。
もちろん楽しく会話もした。
「その調子、その調子、頑張って! 雅!」
沁が応援する。
「あ~。また落ちちゃった~もう!! 頭でイメージするって難しいわね」
練習は大変だったけど、沁と過ごす時間はとても楽しかった。
毎日、練習しては沁といろんな話をした。
そして、ある晩の事。
ようやく上手く飛べるようになった私は、
「沁、私につかまって! 行っくわよ~!」
そう言って、沁をしっかりと抱きしめて飛んだ。
「凄い! 凄い! 雅! 僕、飛んでる!」
沁は心から喜んでいた。
私は沁の喜ぶ顔を見て、凄く嬉しい気持ちでいっぱいだった。
私達の周りを妖精達も飛んでいる。
「そうだ! あそこの灯台まで行ってみよう」
私は一生懸命飛んで、灯台の上まで行き、そこに沁を座らせて、私は沁の隣に座った。
「沁、見て! 海の向こう側の町明かりが見えるわ。綺麗ね~」
沁は目をキラキラさせながら、夜景を見ていた。
なんだかロマンティックだわ~!
いい雰囲気。
私は沁の横顔をうっとりと眺めていた。
そして、沁の頬にキスをした。
「あ、急にごめんなさい。女からこんな事…」
妖精達はそれを見て、キャーキャー言っている。
そして、沁は私を見つめると、今度は沁のほうから私の唇にそっとキスをした。
それから目が合って、お互いに顔を赤くしていた。
沁は恥ずかしそうに
「なぁ、雅、俺と付き合ってくれないか! 恋人になって欲しいんだ! 君といると僕は幸せなんだ!」
その瞬間、妖精達が
「とうとう言ったわ」
「付き合っちゃえ!」
「ヒューヒュー」
と騒いでいる。
私は妖精達に向かって
「ちょっ!! 恥ずかしいからやめてよ……」
「自分からキスしたくせに~」
「そうよ。そうよ」
妖精達に笑いながらそう言われると、急に顔がか~っと赤くなるのがわかった。
「私は沁が好き! でも、私は人間じゃない。それでもいいの?」
と言うと、沁は
「そんなの関係ないさ。好きだよ! 雅」
「きゃ~~っ」
また妖精達が騒ぐ。
私は照れながら、思わず
「うるさい!!」
と言っていた。
「お願いだから、せっかくのロマンティックなところで、ちゃかすのやめて~」
妖精達は
「つまんないの」
そう言って、やっと静かになってくれたのであった。