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科学と魔法  作者: 田中
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トール・ギガンティック!!

兵士の頭を弄った翌日、トールはリームの姉妹を全員、船に送り返した。

煩かったというのは建前で、本音は作者が面白がって設定を作って登場させてみたが、やってみたら予想以上に大変だったからだ。


「そんな事、書いて良いんですか?」


良いんだよ。この話は息抜きで書いているんだから。


「はぁ、だから私達、何か月もほったらかしにされていたんですね」


その通りだ!


「胸を張らないで下さい!」


それはさておき、ハーグからは砦に向けて大規模な侵攻作戦が始まっていた。

兵の数は約五万、指揮を執るのはトッププレーヤーの一人キールという少年だ。

彼は不老不死化により人口統制が行われているグード人の中でも、比較的最近生まれた人物だ。


十五歳という若さで、提供会社との専属契約を結び話題をさらっていた。


『キール、聞こえるかい?』

「感度良好だ」

『OK、目標は説明した通り国境近くの砦だ。正体不明の敵に気をつけてくれ』

「分かってるよ。まあ何が出て来ても、俺が操るジェネラルなら瞬殺さ」

『期待してるよ』


キールはコンソールを操り、全軍を砦に向けて出発させた。

兵の中にはプレーヤーが操る物も混じっている。

彼らは小隊長として五名から十名程の兵士を率い戦う。

そのプレイヤーたちは、中隊長クラスのプレイヤーに仕切られている。

その上が大隊長、そして将軍というピラミッドを形成している。


兵士のランクは娯楽を購入する為の収入にも直結しているので、遊びとはいえプレイヤーたちは結構真剣だ。

余りに不甲斐ないと視聴者からの評価が下がり、最悪アカウントが取り消されてしまう。

ゆえに制限はあるが武器や防具を自腹で購入し、生存確率を上げる者が多い。


唯、弱いと評価が低いかというとそうでも無く、面白い死に方や話術で人を引き付ける者、戦場を解説する者などは高い評価を得たりもする。


結局は暇を持て余したグード人にとって、これは遊びの一環でしかなかった。




砦では敵の動きを正確に捉えていた。

これはリームの予測によるものでは無く、兵士の能力が開眼したお蔭だった。

五千いた兵の内、何名かは千里眼の様な能力の持ち主だった。


始めは自身の能力に戸惑い目を回す者もいたが、今ではなんとか使いこなせるレベルになっていた。

ただ、その内の一人は能力は高かったのだが、覗き疑惑が出た為、ハシェがリームに頼んで能力を封じさせた。


ハシェに能力を消さないでくれと泣いて懇願する兵士を見て、トールはその気持ちが痛いほど分かったが、余り同情した視線を送るとリームに感づかれるので、あえて厳しい視線を彼に送った。


「トール、どうしてあの兵士をあんなに睨んでいたのですか?」

「決まってるだろう。覗きなんて羨ま…、ゴホン、最低の行為をした奴は許せねぇからな」

「……まぁいいです。それより今回は前回の倍以上、五万です。どうします?」

「兵士の能力の練習には丁度いいだろ?」


ハシェの他、砦の首脳陣が集まった部屋で、囁いたリームにそう答える。


「トール殿、何か意見はあるか?」

「いや、特にない。お前らなら五万ぐらい余裕だろ?」

「ふむ、我らの肩慣らしという訳だな」

「ああ、面倒そうな奴がいりゃ俺が出る。連絡してくれ」


ちなみにテレパス能力に目覚めた者も複数名いた為、彼らは連絡係に任命されていた。


「お前は今回、仕事をしないという事か?」

「おっさん、仕事ならリーム達がしただろ?」

「そうですね。働いたのはほぼ我々だけで、トールはただ押さえていただけでしたが?」

「そこは運命共同体だろ。リームの手柄は俺の手柄、俺の手柄は俺の手柄、だろ?」

「そんなガキ大将的な運命共同体はありません。トール……、四の五の言わずに働け」


ジトッとした目で見て来るリームの視線に耐え兼ね、トールは戦場に出る事を了承した。


「分かったよ、戦えばいいんだろ。リーム使える武装は?」

「実は前回の戦闘で回収したグード人の遺体を調べていたら、脳や骨格に多分にレアメタルが使われている事が分かりました」


「ふん、そんで?」

「ご要望のアレ、使えますよ」

「マジで!?」


トールは興奮していたが、リームはため息を吐いていた。


「リーム殿、アレとは何なのだ?光の剣の様な強力な武器か?」

「強力と言えば強力なんですけど……」

「まま、今言ったら面白くねぇだろ?お披露目は戦場でしようぜ」

「言い出したの私ですし、まあ使えるのは確かなんですけど……、非効率の極みなんですよねアレ」


ハシェはリームの言葉と様子に不安を感じながら、はしゃいでいるトールを見つめた。



五万の敵兵は、前回と同じく砦の西の草原に布陣していた。

ただし、伏兵の存在とフォトンブレードを警戒してか部隊を小分けにしている。


「皆の者!!各個撃破だ!!今までの我らでは無い事を魔物どもに思い知らせるのだ!!全軍突撃!!」

「おお!!」


キールは突撃を仕掛けてきた、砦の兵を見て少し呆れた。

こちらの戦力は前回の倍以上、向こうの十倍だ。

籠城戦を仕掛けて来るものと想定していたが、自棄になったらしい。


「ちょっと期待外れだな。まあいいか、楽な仕事で儲かったから良しとしよう。それじゃ皆楽しもう」


コンソールを操作して、友軍に臨機応変に対応しろと指示を送る。

ガリュウから送られてきた映像に映っていた光、それに妖精みたいな未確認生物。

多分それがいる場所は被害が大きい筈だ。そこに向かえばいい。


キールはそう考え、軍の最後尾、本陣を構えた天幕で操作する将軍タイプ、竜の特徴を備えた人型の武人(分かりやすく言えばドラコニアンの戦士)を椅子に座らせ、視界に表示させた配信画面を眺めた。


戦端が切って落とされた場所が映し出される。

おかしい、先鋒部隊が爆発により一瞬で壊滅している。


「どういう事だ?先鋒にいたのか?」


呟きを漏らし画面を切り替える。

戦闘が始まっている場所は、何処も似たような状況になっていた。

まるで砦の兵全てが超能力者になったかの様だ。

その映像も唐突に途切れる。


「何だよ!?これじゃ話が違う……」

「キール!!退避だ!!」


本陣の天幕に駆け込んできた、大隊長のプレーヤーがキールに叫んだ。


「何が起きたんだ!?」

「良いから逃げるんだよ!!」


それだけ言うと大隊長は天幕から駆け出していた。

キールが慌てて外に飛び出すと、五万いた兵の殆どが敗走を始めていた。


不意に日が陰り、空を見上げる。

キール目掛けて何か巨大な物が落ちて来るのを見た。

それを最後に何をする事も出来ず、トッププレイヤーキールは敗北した。




「やっぱ、巨大ロボは男の子の夢だよな。武装もフルで使えりゃ言う事無しなんだが…」

「無理を言わないで下さい。頭部レーザが使えるだけでも感謝して下さい」


そう言いながらリームは端末を操作し、次々にドローンを撃ち落としていく。


「だってレーザーの主導権はお前が握ってんじゃねぇか。俺は踏み潰すぐらいしかやる事ねぇしよぉ」

「仕方がありません。大口径の重火器を作れる資材が足りないのですから、要望を聞いて外宇宙用のマニピュレーターを先に作っただけでも感謝して欲しいです」


「その名前は止めろ、こいつにはトール・ギガンティック!!ってイカす名前があるんだからよぉ」

「それ、カッコいいと思っているのはトールだけですよ」

「何でだよ!?カッコいいだろギガンティックだぜ!?」


「ロボットに自分の名前を入れている時点でちょっと……」

「お前、それはキングゲ○ナーやダイゼ○ガーに対する侮辱だぞ!!」

「そっちはカッコいいですけど……、やっぱり、センスの問題ですかねぇ」


敵の本陣を踏み潰している金属の巨人を見上げ、ハシェはトールが味方で本当に良かったと心から思った。

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