小説書いてスランプに陥った時に人生豊かになるススメ その2
前作
「小説書いてスランプに陥った時に
人生豊かになる高齢化社会のススメ」
が、おかげさまで上々の反応を
いただけましたので調子にのって
第二弾をお送りいたします。
誰かの人生のお話を聞くと
大半は平凡な話かもしれませんが
時に素敵な、時にドン引きするような
そんなお話が聞けるかもしれませんよ。
もし、そんな貴重なお話が聞けたら
小説の何かのきっかけになるかも
しれませんし、話を聞くだけでも
人生豊かになりませんか?
えー?そうなのーって
お疑いですか?
こんな話聞けるかもしれませんよ。
たとえば
前回登場した行きつけのバーの
老マスターのお話。
戦後の引き揚げのお話を
マスターにしていました。
そうすると、マスターが
僕もね、戦後引き揚げ組だよ。
もっとも、幼かったから記憶は
ところどころで曖昧だけどね。
僕が覚えてるのはね、船が日本に到着して
税関みたいなとこでの記憶。
外国から帰ってきた扱いになるからね
税関みたいな門でチェックを受けないと
いけなかったのさ。
で、その門のちょっと前くらいで
母が僕の服の中の色んなトコに
何か紙をたくさん入れるんだよ。
何してんのかなー?
くすぐったいなー。
くらいに思ってたんだよね。
で、門に並ぶの。
たくさんの人が並んでてね。
門には制服着て怖い怖い顔した
おじさんがいるんだよ。
憲兵なのかな?わかんないけど。
でね、僕の三つくらい前に女性が
並んでたんだけど、その人の番の時に
怖いおじさんが
「キサマーーーー、これは何だーーー!」
って罵声を浴びせたの。
女性すっかり縮こまっちゃって
スイマセン、スイマセンって。
で怖いおじさんがこれは何だーって
いって手に持ってた物がね
さっき母が僕の服の中に入れまくった
紙なのよ。
何の紙かわかる?
そうお金。
門を通る時に持ち込んで良い金額
が決まってたんだよ。
でも規則通りの金額じゃとてもじゃ
ないけど家に帰れないわけ。
だからみんな何とかして
お金を持ち込もうとするのさ。
で、子供はチェックが甘くなるんじゃ
ないか?ってことで母は僕の体に
隠したんだろうね。
今思えば理解できるけど
当時は子供だからさ
この野郎、俺の体にとんでもねーもの
隠しやがった!
どーすんだ!怖いおじさんに
罵声を浴びせられるぞ!って思ったんだ。
で、緊張というか恐怖で頭ポーッと
したんだろうね、門を通過する時の
記憶は一切ない。
次に記憶があるのは
門を通過してしばらくたったところ
母に対してこの野郎とんでもねー
怖い目にあわせやがって
って思ってたんだけど
母が僕をギュって抱きしめてくれて
安心したというか安堵の気持ちが
伝わってきたというか、それで
まぁ良いやって気持ちになったんだよ。
って話とか。
たとえば
何でもディスる口が悪い婆さんの話。
もうとにかく口が悪くて
何でもかんでもディスるから
お里が知れるぜって思ってた。
そしたら婆さん自分の若いころの話を
してくれました。
あたしはね、田舎だけどね
土地持ちの家の生まれなんだよ。
山何個持ってるとかそんな話のね。
当時小学校行くのに他人の土地を
踏まずに学校へ行けたんだから。
そうだよ、お嬢だよお嬢。
姉がいたんだけどね。
縁談の話なんかすぐ舞い込むんだよ。
軍人さんとかさ。
学校の先生様だとかさ。
最初のほうは父が姉の縁談断ってたんだ
けどさ。
ある日、姉に一つ縁談を持ってきたのさ。
政府と物資輸送の取引をしている
商売人さんだって。
今でいえば商社を経営してるって
言えば良いのかねぇ。
あの当時にしちゃ珍しく直接
顔を見せにもきたんだよ。
優しそうな綺麗な顔した人でね。
あの頃はね、男性はお相手の女性に
顔みせないのさ。
男性のほうだけが一方的に女性の顔を
見てその親に許可をとるわけさ。
見初めるって言うだろ?
そういう意味さ。
それが当たり前の時代に
その人結婚前に顔見せにきたんだよ。
そしたらさ、姉、その縁談断ったの
何て言ったと思う?
「私はカタワもんのところに嫁に
行く気はない!!」
って言ったのさ。
その人ね、片手が少し不自由だったの
顔見せに来た理由というのは
自分は片手が少し不自由だということを
わざわざ言いに来たのよ。
そんな誠実な人に対して、この態度。
姉はとんでもないヤツだろ?
そりゃお嬢様だからね。
え?その人どうなったかって?
縁談かい?姉とは縁談無しになったよ。
その代わり、アタシが嫁に行ってやった。
父や姉や結婚相手に恩売れるし
何より
アタシが満足できる話だったからね。
って話とか。
たとえば
先ほど出てきた老マスターの話。
マスター、お母さんと日本に
引き揚げてきてそのまま
お母さんの実家に世話になってたそう。
でさ、中学2年生になったころに
母が、僕に紙を一枚見せてくれたんだ。
その紙には住所が書いてあって。
「ここは、あなたのお父さんの
ご実家です。お父さんの姉にあたる人が
その家を取り仕切っています。
その気があれば行ってみなさい」
と言ってきたんだ。
当時住んでた母の実家から
電車で2時間くらいかかるとこだったよ。
中学生にしたらすごい遠出だよね。
それでもね、何となく気になったから
行ってみることにしたんだ。
母は死別した旦那の実家って他人みたいな
もんだから行きづらかったのかもね。
で、電車に揺られること2時間。
紙に書いてある住所を頼りに
その場所に行ってみるとね
すごい豪邸が立ってたんだよ。
門から玄関まで歩いて5分なんて
初めての体験だったね。
本当にここで合ってんのかなー?
なんて思いながら玄関開けてね
「すいませーん、すいませーん」
って声かけたの。
そしたら、奥から着物きた女性が
出てきて怪訝そうな顔してこっち
見るの。
そりゃそうだよね、全然知らない
中坊が玄関に立ってりゃ怪しむね。
だからね
「山田ですけど」
って言ったの。
そしたら、その女性すごく驚いた顔して
「え!?え!?じゃ、じゃあ
あなた、ヒロシの・・・?」
「ハイ、息子です」
って言った瞬間
「生きてたのねーーーー!!」
って言って僕を抱きしめて
おいおい泣いてね。
なんだか嬉しいやら照れくさいやらね。
で、すごーく僕をもてなしてくれたんだ。
見たこともないような本とか
食事とか出てきてね。
食後のコーヒーはそこで
初めて経験したよ。
帰り際いつでもいらっしゃいって
本気で言ってくれたの。
だから学校が長期休みに入るたびに
入り浸った。
え?厚かましすぎないかって?
中学二年生になったあたりでね
母や母の親せきたちが僕に
勉強しろ、勉強しろって言いだしてね。
それまでは田舎の自然で
遊びまくっても何も言わなかったのに
急に言い出してね、うるせーなーって
思ってたんだよ。
そしたらさ父親の実家に行くと
勉強しろって言われなくてさ
すごいもてなしてくれるの
だから、その好意にのりまくっちゃった。
こんな話も聞けるかもしれませんね。
人生豊かになるシリーズということで
他の人も投稿してもらえたら良いなぁ
一つのムーブメントにでもなれば
良いなぁ。なんて思っています。