悪役令嬢の我儘が叶うまで
はじめまして。
酔っ払った勢いでの投稿です。
語彙力ないのによくやると、自分でも思います。
お目汚しになったらすみません。
格子がはめられた窓から低い光が射し込んだ。朝を迎えたようだ。
寝ていたのか、ただぼうっとしていたのかは自分でもわからないが、気付けば冷たい石畳の上。
湿っぽい拘留場は騎士が守りを固めていた。
ジェットコースターのような展開とはそのことで、軍議中の扉がいきなり大きな音を立てて開けられた。そして、告げられたのは、いつかは知られると思っていた、私の素性だ。
「なんだと!」
その場にいる全員の人間の視線が私に向かう。
戸惑うものや、睨みつけるもの、様々だが、その視線に沸き起こる苦笑は今のところ収めておく。
私は、明日にでも国王の首を落としに行こうとする敵国ブラウストの出身で、尚且つ侯爵家の血を流す私の正体を白状した。しっかり、身に染みた貴族としての礼を捧げる。
皇帝が自ら指揮を執るこの謁見の間には沈黙だけが降り注いだ。
「しかし、皇帝。私はブラウストを滅ぼします。」
「ほう…」
ギラッと鈍く光る眼を細めた皇帝にも怯まず続ける。
怖くない。既に全てを捨てて生きてきたのだから、二度目の死なんて別になんとも思わない。後悔するかは、私次第。
「ブラウストの腐った貴族どもの中に、私の血筋も名前を連ねていることでしょう。
今の国の有様は、腐敗した箇所から広がった病のようなもの。全て取り除かねばなりません。
私、サジも殺してしまった方が良い。」
「な…」
聞き慣れた声が聞こえた気がする。
ありがたいものだ。
「しかし、全てを取り除くまでは死ねません。」
キツく皇帝を見つめる私の目は、睨んで見えたかもしれない。こっちだって必死だ。
あのクソ国王を殺すまでは、死んでたまるか。
「わかった…」
「皇帝!」
今まで黙っていた宰相が口を挟む。
それはそうだろう。普通ならここで反逆の可能性を断つべきだ。しかし、皇帝の表情は面白い何かを見つけたように、ニヤリとするだけで。
「お前がアイツの寝首を叩き斬ってくれるんだな。期待してる。」
「その期待、見事答えて見せましょう」
これが皇帝との最後の会話だ。
昨日まで共にブラウストを駆けた青い制服の騎士にまるで他人のような目線を向けられるのは、不思議な気分になるものの、少しも怒りは湧かなかった。
遠くで錆びついた扉が開く音がした。続く足音は訓練されたそれだ。
「サジ」
名前を呼ばれてそちらを振り向くと、可愛そうなほどに疲れをにじませたランツがいた。
「…なんて顔してんだよ」
自然と笑いが溢れたが、少しも彼の眉間のシワを減らすことにはならない。
まぁ、当然だろう。昨日まで仲間だと思った人間が敵国の侯爵家の人間で、尚且つ…
「聞いてないからな、お前が女だったなんて」
「それくらい気付かねえとこれから大変だぞ」
女は狼になりかねないからな。
質素なワンピースを着せられた17の女には似合わない言葉遣いだが、これはもうこちらが自然なのだから仕方ないだろう。
彼の握る鉄格子がギリっと鳴った。それは私が空気も読まずにヘラヘラ笑い続けているからだろうか。誰一人話さないこの空間は、どうしようもないほど、申し訳なくなる。ここまで感情移入するつもりはなかったのに。
あれから、国王の寝首をその言葉通り叩き斬った私は、全ての装飾を引っぺがされた。
その時の周りの同僚…元、同僚たちの表情は今でも思い出すと笑ってしまう。
悪役令嬢としての魅惑のボディラインを晒すことになったのだから、そりゃそうだろう。サラシを巻いても減らないものなんだな。
「何笑ってんだ」
呟くようなランツの言葉は今まで通りだが、表情は固い。一応、敵なんだって思おうとしてるの、かな。
そんな優しい男に、最後のお願いを託そう。彼なら叶えてくれる。そう、不思議にも思えたから。
「ランツ…ひとつだけ、我儘を、聞いてほしい。」
片眉を上げた優男は、やはり拘留場の担当でなくて正解だと思った。聞いてやるだけだなんて、優しい声を出してしまうんだから。
そして、鉄格子にもたれ、向けられた大きな背中に、独り言のように告げた。
「約束、したんだ。」
今思えば、なんて無責任な約束。
「いつか戻るから、と。」
また、あの暖かな土地に、
また、戻ってくるからって。
心配そうに見つめる肉屋の夫婦に、今にも手首を捕まえてきそうだった友人に、病に床に伏せる町長のお父様に、近所で字を教えていた子供達に、たくさんたくさん言いくるめた。
「私の亡骸は、サンクレアの丘の上に」
帰らせて…
太陽の光を浴びて、輝く町を眺められる、あの丘に。
後味…!
すみません、前後のお話を文にする力はありませんでした。そして、本名出てこず!サジ、ごめんよ。
これをネタに(できるなら…)各々、妄想していただけたらと思います。