三階層進出
今日も結斗はダンジョンに行く前に、自分のステータスを確認した。
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【新村 結斗】
【魔力】:26/28(34)
【スキル】:《鑑定》《隠蔽》《索敵》
【装備スキル】:《転移》《異空間倉庫》
【装備】:《精霊のペンダント》《狼の長剣》《狼の鎧》《狼の盾》《狼のズボン》
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徐々に魔力が増えていることを確認して、結斗は自分の成長を実感する。
現実のダンジョン探索は、ゲームと違って一度死んだらやり直しはできない。
そのことを理解している結斗は、今日で二階層の探索が三日目だとしても焦ることはない。
再度、鞄の荷物と装備を確認し、結斗はダンジョンへと《転移》した。
――二階層の三階層へと続く階段前。
そこに、新たに装備を身につけたことで、さらに結斗の身体能力は上がり、狼が何体向かってきても傷一つ負わなくなった結斗の姿があった。
狼が攻撃するよりも早く、結斗は剣を振り下ろす。
狼が駆けるよりも速く、結斗は走る。
狼が結斗の体に噛みつくことができても、牙が刺さることない。
(そろそろ、三階層に行くべきだろう。もう……この狼では相手にならない)
そう考えながら結斗は、目の前にいる狼を倒す。
すると、カードがドロップした。
それを結斗は手に取り、《鑑定》した。
【洗浄のスキルカード】:対象を洗い清める《洗浄》というアクティブ型のスキルを覚えることができる。
結斗はこのスキルカードを覚えて、自分の装備についていた狼の返り血を消した。
(これで……毎回、面倒だった血の処理をしなくて済む)
ダンジョンの探索に役立つ《スキル》を得ることができた結斗は、階段を下りて三階層へと向かう。
結斗が三階層に近づくにつれ、辺りが明るくなる。
階段を最後まで下りきると、三階層の全貌が見えた。
ダンジョンの天井から、発光する植物が放った多くの光が降り注ぎ、樹木や草が生い茂っている。
二階層の暗さとは違い、三階層は植物が蔓延ることによって視界が悪くなっている。
結斗は五感を働かせるだけでなく、《索敵》のスキルも使って魔物を探しながら三階層を進む。
そして、結斗に向かってくる敵を《索敵》で見つけた。
樹木が邪魔をして、結斗は敵の姿を見ることはできないが、長剣と盾を構え、敵の襲来に備えた。
――現れたのは、熊だ。
黒い剛毛で全身が覆われ、長く湾曲した鋭そうな鉤爪を持っている。
熊は咆哮し、巨体とは思えないほど素早く結斗へと迫ってくる。
熊の攻撃を盾で受け止めることはできないと判断した結斗は、全ての攻撃を躱すことにした。
熊は両腕を大きく広げ、左右の鋭利な爪で引っ掻く。
結斗は回避に専念しながらも、熊が両腕を振り切るなどの隙があれば、熊の脇を通り過ぎながら切りつけていく。
その無数の刃は肉を断つが、浅い。
しかし、着実に出血を強いる結斗に対し、熊の攻撃は一向に届かない。
苛立つ熊は、当たれば致命的な傷を負わせることができる爪を荒々しく振るう。
それを冷静に避ける結斗は、また一つ熊に傷をつける。
やがて、熊の動きが緩慢になり始め、振るわれる爪も弱々しくなる。
――そして、ついに熊は倒れる。
結斗は、熊から魔力が流れ込む感覚がしなかったので、まだ生きていると思われる熊に止めを刺す。
息絶えた熊の死体は一枚のカードに換わり、血溜まりの中にあるカードだけが地面に残る。
結斗は血塗れのカードを拾い上げ、《洗浄》のスキルを使った。
――と、そのとき。
結斗のスキルである《索敵》が新たな魔物の気配を捉える。
(今日は帰るか……)
そう思った結斗はカードを手にしたまま、家に《転移》した。
装備を《異空間倉庫》に収納し、風呂代わりに《洗浄》で身を清めた結斗は、三階層で倒した熊のドロップアイテムを《鑑定》する。
【熊の装備カード】:魔力を流すことで使用し、使用者が望んだ種類の熊の装備を得られる。
三階層で熊の魔物と戦ったとき、《狼の長剣》では深い傷を与えることはできなかった。
だから、結斗はより強い武器を欲していた。
魔力を流したことで、【熊の装備カード】は熊の意匠が施された長剣へと換わる。
再び、結斗は《鑑定》を行う。
【熊の長剣】:装備する際、魔力の最大値を2消費する。
身体能力は、二階層で手に入る《狼の装備》より三階層で手に入る装備の方が上がるので、三つは三階層の装備を揃えて、四階層を目指したい。
そう考えていた結斗にとって、初日から三階層の《装備カード》がドロップしたのは喜ばしいことだった。
何度か作品を書いて、満足できる作品を目指しています。
なので、この作品は更新を停止します。
再開、修正、削除の可能性もありますが、次は他の作品を作っていきます。