旧友×ギルド=利益
レイと協定を結んだ街である『エラフィル』には多くの人達が殺到していた。ダンジョンが誕生してから約2週間程経った頃の事だった、ダンジョンから産出されたジュラルミンを使用して完成した防具を出荷してから事だった。ギルド関係者や大手の商会の人間に冒険者やらがこの街に殺到していた。
「あ、あの防具は一体何なんだ!?鉄の物と比べた軽い上に凄い丈夫ではないか!?何故こんな代物を出荷出来るんだ!?」
「あれはダンジョンから産出された防具と聞くが如何なんだ?!」
「頼む俺達にも売ってくれぇっ!!」
上記のように凄まじい反響を生み出している。現在市場に一番多く流通している鉄製の鎧や盾、それに比べて軽い上に凄まじく丈夫という代物を出荷している。敢て出荷量は抑えて興味を引かせたが……それが大当たりする結果となった。一先ずやって来た人達の対処をするシモンは冒険者連中は鍛冶職人達の店を紹介し、ギルドと商会の人間をダンジョンへと案内する事にした。詳しい話はレイを交えてした方が有効だと判断したからだ。
「そ、それじゃあ近くにダンジョンが発生したというのか!?」
「ではそこから防具を?」
「正確には違いますよ。そのダンジョンから取れる鉱物を使って、職人達が作ったのがあの作品なんです」
ダンジョンへと案内されていく道すがら詳しい話を聞く関係者一同はその話に目を丸くしている。ダンジョンは各地に点在するが、最大級のダンジョンからもそんな鉱物が取れるという話は聞いた事がない。そんなダンジョンが誕生したというのであれば、確実に押さえたいと思案するがそれを止めるようにシモンが一声を出す。
「後ギルドさん、ギルドの管理は必要無いですから」
「な、何故だっ!?ダンジョンとなれば必然としてギルドとの連携管理が必要になるのだぞ!?」
「いやダンジョン経営資格を持って奴が、今管理してますから」
「何、だとっ……!?」
それを聞いて思わず顔色を悪くした。ギルドが管理する事で多くの利益を得られると思っていたがそれよりも先に資格を持っていた者によって管理されている言葉が突き刺さった。資格を取るにはギルドへの数年間の所属が必要となるが、その後は独立してしまう場合も多く、この場合はギルドと接点があるだけの民間人となる。故に表向きはギルドと協力的だが、ギルドからの命令には一切従わない事になる。
「おーいレイ、お客さん連れて来たぞ~」
「んっ……おおっシモン、よっ」
ダンジョンへと到達するとダンジョンの周辺を整備する為に、魔力によって制御されている『ロックゴーレム』が整地と簡単な建物の建築を開始していた。既にシモンにとっては見慣れた光景だが、十数体のゴーレムが作業をしている光景は見慣れない者にとっては面食らう物である。
「まだ増やしたのかゴーレム」
「ああ。作業急ごうと思ってな……お陰でダンジョンに来るのも楽だったろ?道を均しておいたからな」
「それで歩き易かったのか……それと此方は冒険者ギルドのリーブ調査員と大手の商会である「トルネード商会」のウィンデルさん」
一番直ぐに挨拶を行う為に一歩前に出たのはトルネード商会のウィンデルだった。ゴーレムの姿を見ても驚くよりも喜びの笑みを浮かべた彼女はレイに笑いかけた。するとレイも笑って手を差し出して強く手を握りあった。
「お久しぶりですねレイ、相変わらずお元気そうでなりよりです」
「お前こそ、相変わらずだな。ちっとも成長してる気配ねえな」
「これでも成長はしてるんですよ。しかしまさか貴方が関わっている何て……まさかこのダンジョンも貴方が?」
「おう、元々実験場にするつもりだったんだけどシモンに頼まれてな。それで街と協定結んだ」
「成程……」
親しげに話すレイとウィンデルにシモンは知り合いなのかと問いかけると、二人から同時にそうだと返って来る。二人は昔、一緒に旅をした仲であると応えてくれた。旅の中で見た物や生まれた人脈などを使ってウィンデルは自身の商会を立ち上げた、今ではそれは大商会として成長している。
「ジュラルミン……商品価値としては酷く魅力的ですね。是非ともトルネード商会にも卸して欲しいのですが……」
「それはシモンと話してくれ、時期が来たら街にも出すつもりだったからよ。なんなら優先的に卸すように交渉したら如何だ?」
「成程……いきなり安売りはしない方針ですね、分かりました。シモンさん、是非とも我がトルネード商会と是非関係を結んでください。私達は最大限の敬意を持って応えたい」
「わ、分かりました……後で詳しい話とかをしましょう」
「分かりました」
その答えに満足したウィンデルはホクホクとした顔で手帳に何やらを書き込んで行く。それを見たギルドのリーブは慌てたように声を出した。
「え、えっと貴方がこのダンジョンの管理をしている方ですか?出来れば資格の確認をしたいのですが……」
「おっそっか。ほれ」
確認をさせて欲しいというリーブには考えがあった、ダンジョンの資格には位がありそれが低いのであればそれを理由に管理から外させようという目論みが存在していた。それならば街もギルドからの管理者派遣を断る訳にも行かなくなる……。しかし、レイが差し出してきたダンジョン経営管理資格のカードは……最上級であるプラチナに輝いていた。
「プ、ププププププラチナァァァッ!?最上級保持者ァ!?」
「ああっ悪いか?」
冒険者のランクもそうだが、これらの資格は幾つかの位によって分割されている。全部で10段階に分けられている。それに加えて特殊な功績を立てた者に対して与えられるプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズという階級が存在する。それを踏まえるとレイはギルドに最高クラスの力を持っていると認められている事になる。
「お、おいレイなんか固まってるぞ……大丈夫かその人?」
「恐らくレイのカード見て驚いたのでは?この人、最強クラスの実力者ですし」
「だから硬直するか普通」