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ダンジョン産鉱物×鍛冶職人=特産品

魔族は一般的に国が違う程度と思われてます。


私達で言う所の、日本人とアメリカ人みたいな。

「よぉっシモン。工房のおっさん共の景気は如何だ?」

「過去最高にご陽気だ。なんせ新しい玩具の材料が出来ちまったんだからな」

「そりゃ上々だな」


 『エラフィル』との協定を結んでから数日の時間が経過した。ダンジョン内の確認ついでに採掘してきた鉱石類、シモンによると鉱石の全盛期の2か月分に匹敵するらしい。現状は鉱山の街だった頃から培われている絶大な鍛冶職人達の腕を振るい、喜々として防具や武器の作成に取り組んでいるらしい。今までの質の悪かった鉄鉱石ではなく最上級に近い鉄鉱石に表情は崩れ、未知の鉱石"ジュラルミン"に心を躍らせている。


 鉄よりも軽く強度も大きく勝っている"ジュラルミン"の存在は職人たちの心を大きく揺さぶると同時に心に火を点した。専門職ではないレイが製作した盾ですらあれだけの物であった、もしも自分達がこの鉱石の扱いを理解し完璧な物を仕上げた時……一体どれほどの物が生まれるのだろうかという好奇心と目指したいという気持ちが爆発した。それもレイの狙いの一つ、拙い自分の作品によって意欲を刺激される事を見越して盾を渡したのである。


「1週間後には出来るらしいぜ。えっと……ジュラルミンだっけ、その防具が」

「早いな」

「あんなすげぇもん出されたからおっさん達、マジで火が付いちまったみたいでさ。メシ喰うのも惜しいって工房に付きっ切りで家族に怒られてるよ」


 それほどまでに刺激的な出会いだったと言えるのだろう。分からなくもない、自分も異世界の知識を手に入れた時興奮を隠しきれなかった。この知識は自分をどんな次元に導いてくれるのかと、興奮して数日寝ておらず気が付いたら倒れ込むようにして眠っていたぐらいだ。


「んじゃ1週間後までに準備しておく事があるな」

「宿泊施設とかにも手を出すって事か」

「ジュラルミンを少量出荷して興味を引かせる、ダンジョンがあるって分かったら否が応にもでかい注目が集まる事になる。その為に此処には色んな立場の人間が宿泊出来る施設なんかを準備した方がいい」

「その辺りは任せてくれよ。前々から付き合いをしてる街の富豪さん達にさ、街が復活するって声を掛けたら喜んで資金を出してくれたからすぐにも手配は付く」

「準備が良いな」

「この位の事出来ないと、レイの協定相手としては不十分だろ?」


 不敵そうに笑っている町長代行、彼なりに最大限の敬意を払っての事だろう。自分が出来る事はやるだけやる、素晴らしい事だ。信頼関係を築く上で自分がどれだけ相手に貢献出来るかをハッキリ示しておくのは力を見せ付ける意味でも有効となる。


「そういえばさ、ダンジョン経営の資格あるって言ってたけど……レイって冒険者ギルド関係者なのか?」

「一時期籍を置いてただけだ、もう関係者って程の物じゃない」

「ふぅん……」


 ギルド。即ちこの世界に置ける冒険者などが所属する組織である。最初こそは数名の人間が立ち上げた"何でも屋"のような存在だった。しかし、その何でも屋は輸送の護衛や魔物討伐などの仕事を受け少し大きくなって行った。次第に組織と人数が膨れ上がって行き、今ではギルドという巨大な位置組織となり国すら影響力を保持する物に成長した。

 そして基本的にダンジョン経営の資格は何年かギルドに所属しなければ取得する事が出来ない。ダンジョンの経営と言っても本質的にはギルドとダンジョンの橋渡しをするような立場であり、実質的にはギルド所属の監査官と言っても可笑しくはない役職の事を指す。


「資格300年前に取ったって言ったけど……魔族って本当に長生きなんだな」

「そういう種族だからな」

「でも魔族で長く生きて200から300って聞いた事あるぞ、レイってどんな魔族で幾つなんだよ」

「おいおい、堂々とんな事と聞くんじゃねえよ。知らないのか、魔族と女には年は聞くなってな」

「女なら兎も角魔族は聞いた事ねえよ」

「なら今聞いたな」


 基本的に魔族は人間に比べて長命であるのは広く知られている事実。そんな魔族の中でも飛びぬけた寿命の長さを有している『ドレイク族』は成人と言われる300歳を超えると気にしなくなる。どうせ待っているのは無限に近い自らの時間なのだから、年齢なんぞ大した事ではない。レイも正直今自分が何歳なのかも余り覚えていない、ダンジョンを生み出すのを作るのも使った魔石も1000年前から魔力を蓄積させ続けたが……その時には既に放浪の旅をしていた。


「ダンジョン内ってどんな感じになってんだ?確か、レイが此処を実験場に作ったとか言ってたけど……あっ今更だけどいいのか使っちゃって!?」

「ホント今更だな。気にするな、お宝とかにも興味あるしダンジョンその物に手を加えられるようになってるから実験場としての価値も損なわれてない」

「なら良いけど……因みに此処って今何階層あるんだ?」

「まだ地下10階までしか作ってないぞ」


 実際にダンジョン内を本当の意味で管理するという事は人工的なダンジョンでは行われている。それも実際に中へと入り整備を行ったりが精々、人工的が故に内部は小さく魔物のレベルも低いからこそ出来る事。が、例の実験場となっているダンジョンは莫大な魔力溜まりに1000年掛けて溜められた魔力によって出現したダンジョン。内部のレベルも半端ない事になっている事だろう、そんなダンジョンの管理などレイのように魔石をダンジョンの核にでもしないと出来ない芸当である。


「地下5階まではランクはGからFまでの魔物が好む環境にしてある。初心者も寄って来るだろ」

「んで初心者がこの街の防具を手に入れる事に目標にしつつ滞在、いざ手に入れたら更に深く進んで行く……って寸法って訳か」

「分かり易くて結構だろ、まあ何れにせよこれからもっと面白くなっていくさ」

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