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街×ダンジョン=協定

「山の裏側に……街あったんだな。見えなかったから知らんかった」

「俺達はあの街『エラフィル』の住人なんだ。俺は町長の代行をしてるシモンだ」


 ダンジョンの形成が完全に終了しこれから手を加えていく段階だが、その前に話を持ち掛けてきた歩いて数分の街『エラフィル』の町長代行。かなり若いが父である町長が死亡してしまった為に代行に就任してなんとか街を守っている状況らしい。


「それでダンジョンを使わせて欲しいって言ったよな」

「ああ。お願いだ使わせてくれ!!俺達の街を、生き返らせるために」

「そう言われてもねぇ……?」


 話を聞いて見ると『エラフィル』の街は今こそ何とか維持出来ているが将来的に考えると確実に消える定めにあると見据えている。その理由となっているのが元々が鉱山の街であった事に起因するらしい。


 元々はこの巨大な山は鉱山でそこからは良質な鉄鉱石や金や銀、時たま希少鉱物認定されている「ミスリル」までが産出されたという。それ故に鉱山の街として栄えており、鉱物を加工した武具や芸術品などを生産し販売する事で街は成り立っていた。が、ある時から鉱山に魔力が異常集中してし「魔力溜まり」になってしまい、危険の為に鉱山を封鎖せざるえ無くなったと言う。


 魔力溜まり解消の為に方々に手を打ったが、余りにも巨大すぎる魔力の溜まり方に手が出せないという。それでもなんとか街を存続させようと努力して鉄鉱石などを買い、それを加工して販売する方法を取ったが……コストが掛かる上に鉄鉱石に購入分を取り戻す為に割高にしなければ行けない上に今までの元よりも、質が良くない為に出来上がった物も微妙な物になってしまう。加えて今まで通りの良質な物で無ければ仕事をしたくないという面倒な職人達が相次ぎ、街は危機に瀕している。シモンは今までこの街と深い関係を築いてくれた人達のコネを使って保っているが、それは何時までも維持できる物ではないと思っている。


「そこでダンジョンを使わせて欲しいって事か」

「ああっ!!ダンジョンを使わせてもらえるなら街は一気に潤う!!宿泊、食事、武具、流通あらゆる面が一気に活性化する!!街の皆がまた笑顔に成れるんだよ!!」


 ダンジョンを街の目玉にするというのは良く聞く話だ。ダンジョンから取れる鉱石や魔物の素材は高値で取引される上に、迷宮は蓄えられている魔力によって世界に眠る宝などを自ら引き寄せる。一攫千金を狙う連中をおびき寄せるには格好の餌、そしてそんな連中を相手にする街にとってもダンジョンは涎垂もの。


「も、勿論アンタのメリットの事も考えなきゃ行けないけど……ダンジョンで見付かった宝とかはアンタに回すし、街の売り上げも何%を必ず渡す!!頼む使わせてくれ!!」

「う~ん確かに、そりゃメリットがあるな……」


 何をするのにも金は必要になってくる。今までの稼いできた貯金はあるが、あって困る事もない。そしてダンジョン内が呼び込んでくる宝の引渡しも魅力的、迷宮が蓄えられている魔力の量と質によって宝のクォリティは激しく上下する。ここのダンジョンは元々周囲の環境に悪影響を与えるほどに蓄えられた魔力、自分が1000年間蓄積させた魔力によって出来上がったダンジョン。それが引き寄せる宝はどれほどの物なのか……ハッキリ言って興味がある。


「いいだろう。協定を結ぼうじゃないか、俺はダンジョン経営の資格も持ってるからな」

「マジか!?冒険者ギルドから呼んでこようと思ってんだけど……」

「300年前に取ったからな。一応更新してるから使えるぞ、んでシモンつったか。主産業である鍛冶職人は力貸してくれるのか?」

「あ~……正直難しいかも、また良質な鉱石が取れるって分かったら確実だろうけど現状証拠がないからなぁ……」


 シモンは深く溜息を付いたが、この言葉に好感が抱けた。重要である事を隠さずにハッキリと言ったからだ、鍛冶職人達の信頼を得る為には如何すればいいのかという事や現状では如何しようも出来ない事を目の前で言った事は評価に値すると考える。


「つまり納得するだけの物を見せ付ければ、やる気になるって事だな?」

「ああそういう事だけど……その為にはまずどっかから人を呼んでダンジョンに潜って貰わないと……」

「なら明日、その職人共を連れてまた此処に来てくれ」

「えっ?良いけど……何をする気なんだ?」

「やる気の無くなった奴らに火をつけてやるのさ」


 怪訝そうな顔を作りながらもシモンは分かったと言いながら街へと引き上げて行った。それを見送ると胸元からスマートフォンを取り出して、チェックしてあった資料にアクセスしながらダンジョンの中へと入って行った。


―――翌日。


 ダンジョンの前には如何にも気難しそうな職人達がシモンの背後で立ちながら、何時まで待たせるんだと文句を垂れていた。そんな彼らを必死に抑えるシモン、一体何時になったら来るんだと思っているとダンジョンの入り口から、昨日顔を合わせた男が出てきたが、右手には身を覆い隠せるほどの巨大な盾を保持していた。


「よぉ待たせたな」

「遅いんだよ何時まで待たせる気なんだよ!?というかそれなんだよ、まさかダンジョンの中にあったお宝か!?」

「全然違うぞ、ほれ持ってみろ」


 笑って言いながら持っていた盾を投げる、盾は重力に従ってシモンへと落ちてきた。


「ば、馬鹿俺潰されちまう!!?」


 身を覆えるほどの大盾なんて、自分では保持しきれない!?と思いつつも何とか受け止めようとする。徐々に迫ってくるそれに目を閉じてしまい、遂に手に盾がぶつかったが……全く重くない、寧ろ軽く自分の片腕でも十二分に保持しきれる。


「か、軽い!?何でこんなに軽いんだよ!!?」

「なんだとぉ!!?だ、代行嘘言ってるんじゃねえだろな!!?」

「嘘なんか言うかよ俺だって重くて潰されると思ってたんだぞ!?」

「お、おいマジで軽いぞ!?」


次々に盾に群れていく職人達、見た目は完全な鉄の盾。それなのに重量感が全く無い、非常に軽い……それなのに全く軟くない。寧ろ酷く頑丈で一人の職人が持っていたハンマーで思いっきり殴ってみるが、びくともしない。鉄の盾でも少し凹むはずなのに全く凹まない。


「お、おいこれって!!?」

「こいつはダンジョン内から産出した鉱石から作った物だ、因みに俺は本職じゃないからまだまだ精度上がるぞ」

「これでか!?」

「ああ。そいつは"ジュラルミン"って言うんだ」


 ジュラルミンとは簡単に言えばアルミニウムに複数の金属を加えて作られるアルミニウム合金である。始まりは1903年、「もっと軽いアルミニウムを銅と混ぜたらよいのではないか」という発想から銅を混ぜたみた結果、軽量でありながら破断に強い合金が完成したのである。

 異世界において、このジュラルミンは異常なまでの生産コストの安さと質量に依存しない圧倒的な強度で文明を破壊的な速度で加速させた。正しく新たな時代の転換を齎せた超合金なのである。


 それらをダンジョン内で製作しつつも、ダンジョン内の魔力を使用しながらダンジョンに組み込んでみると……ジュラルミンの鉱石が誕生したのである。それを使って拙いなりに加工して製作してみたのが……この鉱石、鉄鉱石並に加工し易い。そしてその結果、あの盾が生まれたという訳である。鍛冶にはそこまで手を出していなかった自分であの出来、熟練の職人が製作したらどうなるのだろうか……。


「加えて鉄鉱石とかも確保して来たぞ、これだけあれは暫くは何とかなるだろ」


 指をならすと鉄鉱石とジュラルミン鉱石がいっぱいに詰まった荷車が大量に出現する。シモンは喉を鳴らしながら、自分の目を信じてよかったと心から思った。そして職人達の目に火が付けられていく、これほどの物があるのに仕事をしないなんて職人の直れだと。


「あんた、スゲェよ……なあ名前は何ていうんだ!?魔族さんよ!!」

「俺か、そう言えば言ってなかったな……。俺は『ドレイク族』のレイだ」

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