第5話
誰かが私のこと、抱きしめてる。暖かい。すごく、安心する。守られてるんだな、愛されてるんだなって思える。とても暖かくて、懐かしくて、ずっとこうしていられたらいいなって。
嬉しくて、鼻の奥がツンとした。
瞬間、頭に衝撃が走った。
「いつまで、寝てるのかな」
慌てて体を起こした。どうやら寝てしまっていたようだ。無理もないと思う。色々あったし。少しくらい、休ませてくれてもいいのに、この人、感じ悪い、叩くし。そう思って、上目遣いで睨み付けた。そしたら、にっこり笑ってまた頭を叩かれた。マジで、なんだ、こいつ。
「まず、言うことがあるんじゃないのかい」
男性は、食事を持ってきてくれたようで、トレーには、湯気の出ているスープが乗っている。
見渡すと、私はベッドの上で寝ていたみたいだ。すごく、ふかふかしている。だから、あんなにいい夢を見たのかな。そして、服を着ていないことにも気づいた。
「変態!!わ、私のふくっ。勝手に脱がせたの?」
手元にあった布団を手繰り寄せた。
「君みたいな貧相な体には魅力を感じないよ。しかし、礼儀知らずだね。命の恩人に対して」
男性の言葉に、はっとした。
「ここは、一体どこですか?」
ここはどこで、あなたは誰で、私はどうして生きているの。それとも。
男性は、にっこり笑って、私の頭を小突いたのだった。