5/6
第4話
「僕に名前はない。好きに呼んで構わないよ。」
彼はそう言って、座り込んでいる私の傍までやってきた。やってきた、という表現はおかしい。私の傍に、現れたのだ。一瞬で。見上げれば、フードの下の、青い瞳と目が合った。日本人かと思ったけれど、違うようだ。よく見ると、これだけの雨の中、彼は濡れていなかった。彼の周りに、白い膜が見える。どうやら、この膜が雨を弾いているようだ。
彼は、私の左腕を掴んだ。
途端、私の視界は揺らぎ、次の瞬間、私は見知らぬ部屋にいた。
部屋は、レンガ作りで、暖炉に火がついている。寒くて限界だった私は、急いで暖炉に駆け寄ったのだった。




