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第1話
顔にしょっぱい水が押し寄せてきて、意識が急激に覚醒した。水を被ったせいか、目が開けづらい。口の中がざらつく。あれ、雨ってこんなにしょっぱかった?慌てて吐き出すと、また水が押し寄せてきた。なんなの、これは。大量に咳き込みながら、地に手をつけて体を起こそうとした。手のひらに、ざらりとした感覚がある。砂だ。なんで?疑問に思いながら、繰り返し押し寄せる水から逃れようと、四つん這いで這い回る。痛む目を我慢して開くと、そこには。
一面の赤。
赤い波、赤い砂、降り続ける雨さえも赤い。私の体は、赤い水を被って赤く染まっている。見上げた空は真っ暗で、何も見えない。赤い雨だけが落ちてくる。なんだ、これ。なんだ、これ。どこだ、ここは。私、自殺をしたはずだ。死んだはず。なんで、なんで、こんなところにいるの?