第六話《瞬殺》
「ねぇ、あの人を一人にしちゃっていいの?狙われてるんでしょ。まだそのキル・キラーって奴がそばにいるかも知れないよ」
「暗殺者には暗殺者のプライドがある。時間指定外の時に殺したりはしない。それはそうとお前は何をやってるんだ?」
千夏は雑巾を片手に床を磨いていた。
「だって汚いんだもん、ちゃんと定期的に掃除をしなきゃ」
「俺は出てけと言ったはずだが……」
ダークの言葉を無視しロッカーの中の服を整頓しはじめる。
「今から仕事なんだ。さっさと……ぶ!」
ダークの顔にホコリまみれになった雑巾が直撃した。
「私には居場所がないの。ここに住むの、絶対に住むの」
もはや千夏に何を言っても無駄だと判断したのかダークは無言のまま部屋を出ていった。
「お母さん」
そう呟きながら千夏は床に座りこむ。
―――
――
―
《昼1時》
とある街の喫茶店の中で依頼人の男はコーヒーをすすっていた。周りを気にして落ち着かない様子をあらわにしている。自分を狙っている暗殺者がこの近くで見張ってるのかと思うととてもではないが平常心ではいられなかった。
腕時計を確認しダークの姿を探す。
「まだ来てないか」
「いや、ここにいるぞ」
男はびっくりし危うく持っていたコーヒをこぼしそうになる。
「はは……さすがですね。気配を消すのがうまいですよ。あまりにも突然でびっくりしました」
ダークは隣の席に座りさっそく本題の話に切り替えた。
「今日の何時に殺せばいいんだ?」
「出来たら今すぐにでも……私の身が持たないです」
「分かった。じゃあ今仕事に移る」
ダークはそう言うと男から多額なお金が入ったカバンを受け取った。
「頼みます」
「仕事が終わったら電話をする」
黒いマントをなびかせながら店を後にした。
「ふふ…ダーク・ミラー……あれは厄介だな」
双眼鏡を片手に笑う男。ビルの屋上からずっと監視をしていたその男は長い舌をナイフに近づける。
「早く明日が来ないかな。殺したいぞ……くくく」
舌でナイフを舐めるその姿はどことなく不気味なオーラを漂わせている。
「立派な舌だな」
その男は感じなかった。
後ろにそいつがいた事を。
「ダーク・ミラーだな」
「当たりだ」
黒マントが風によって死の踊りを楽しんでいるかのようになびく。
「ふふ、なぜ俺がここにいると?」
「ふん、同じ同業者だからな。貴様が考えてる事くらい分かって当然だ。そうだろ「元」西の殺人凶キル・キラー」
キラーは手に取っていたナイフを地面に落として何かを喋り始める。
「勘にさわる野郎だ。俺は今でも西の殺人凶として君臨してるぜ。暗殺業は趣味でやってるだけだ」
キラーはおそろしいスピードでダークの背後にまわりそして両手の袖に隠し持っていた拳銃を2丁抜いた。
「ふん、威張れた特技ではないな」
ダークがそう言った瞬間という音が3回鳴る。
右手には日本刀が握られている。
「え?」
その言葉と共にキラーの両足、両手が切断され血しぶきが舞っていた。両手にはまだ拳銃が握られたままだった。
さらに上からボールのような物がくるくると回転をしながらダークのもとへ落ちていく。そう……キラーの頭だ。
それを見事にキャッチし地面に静かに置く。
キラー本人はまだ自分が死んだという事に気づいてはいないであろう。
「完了」
ダークはキラーの死体をそのままにしこの場を後にした。
主人公強すぎました!