第11話《水色の死神》
くすくすと笑う少女、それはとても異質な光景。まるで迷い猫のようなその少女はどこか哀しそうな表情で……どこか切ない表情で……そして少女は喋る。
「あなた達はとてもとても悪い子。だから私が殺してあげる。ふふふ」
また少女は微笑む。廃虚のビルの中に少女の美しい声が反響する。しかしその微笑みは死への道しるべ。
少女の前には二十歳くらいの青年二人が震え、腰が抜けている状態にあった。横で倒れている男もいるようだ。その男は原型を保っていないほど身体をグチャグチャにされていた。
「ななななな何なんだよお前」
「やめてくれ!頼む」
その言葉に少女は水色のワンピースをなびかせ静かに口を開く。
「ダメですよ。私はゴミを排除します」
フワリと跳んだ瞬間少女はすでに彼らの目の前にいた。
「ゴミに死を。永遠の眠りについてください」
その瞬間、綺麗に彼らの首がなくなった。まるで元々彼らの頭がなかったかのように。
木の葉が地面に落ちるような感覚で少女はフワリと地についた。
周りに鮮血が舞い散る。壁、床などは一瞬で真っ赤な地獄と化してしまった。
少女の身体に彼らから出た血のシャワーが降り注ぐ。
「次の悪い子はだーれ。ふふふ、孤独な私が迎えに行きます」
少女の手には黒く大きな鎌が握られている。
漆黒の黒い死神のような鎌には血液が滴りまるでその血を吸っているように見える。
もう生命がない二人の死体を見つめる少女の後ろにはある男が立っていた。
「ふふふ、さすがだ!さすが我が娘」
ゆっくりと少女に近づくその男の名は東の殺人凶、デッド・マイティーン、皆からはDと呼ばれている。そしてこの少女の実の父親。
「もはや完全に覚醒をしたな。それが本来の君の姿だ。我が娘、古川千夏よ」
そう、少女の名はあの古川千夏。だが前の彼女とは別人と言っても良いだろう。殺人凶の血が覚醒したその姿は冷酷な殺人者でしかなかった。
「パパ。私のパパ…洋服が…汚れちゃった」
血液がベットリと付着した水色のワンピースを哀しげに見つめる千夏。そしてその光景を嬉しそうに見つめるD。
「ふうー、お前はそのワンピースが本当に大事なんだな。そんな服より私がもっと素敵な服を買って上げるが」
その言葉に反応して千夏は一瞬でDの首元に鎌をあてる。
「これはとてもとても大事な服。今度パパでもこの服を侮辱したら…殺すよ」
「ぐ!分かったよ。すまなかった」
千夏は怒りを抑えながらゆっくりと鎌をしまう。その速さは殺人凶であるDですら目が追い付かないほど。
これは才能なのか?あるいは憎しみが産んだ産物なのか?どちらにせよ千夏の力はあの、東の殺人凶の力をすでに抜いていると言っても良いだろう。
「パパ…私…とてもとても可愛そうな人間だね」
その笑みを殺気と一緒にDへと向ける。 周りの柱が震え、空気が震え、そしてDの身体が震えていた。
「素晴らしい!素晴らしいぞ千夏。すでにこの私を越えているその力はさすがだ我が娘よ。やはりお前は最高の芸術品だ!おいロン、帰ったら千夏の服を綺麗にしてやれ」
Dの隣にいた男は軽くお辞儀をし千夏を外の車に乗せ、顔に付いた血液をハンカチで優しく拭った。
私は誰なんだろう。
この水色のワンピース、なぜか手放したくない。
嫌だよ!嫌だよ!嫌だよ!
なんで私の身体が血で真っ赤なの。
なんで私の心は血で真っ赤なの。
もう……いや……
誰か私を……殺して下さい。




