第8話《パートナー》
小川の流れる音、山の木々が揺れる音。その中心に麻衣と侑也はいた。
麻衣は手で周囲を確認しながら侑也の近くへと歩く。
「あなたのお名前は?」
「なか……中原侑也」
「侑也さんですね。じゃあ、侑ちゃんと呼びますね」
「侑ちゃんだと……お前誰だ?」
その問いに麻衣は身体を一回転させニコリと笑った。
「ふふふ、私は麻衣。内田麻衣です」
侑也の目には麻衣と名乗る少女の身体に目がいってしまった。
「その身体の傷、そして見えない目、一体どうしたんだ」
麻衣はその質問に首を捻りながらそしてまた笑顔を見せた。
「運命のイタズラですよ」
「運命のイタズラか。そのイタズラのせいでそのような身体になりなぜ笑うんだ」
「侑ちゃん、優しいですね。そんなに優しいのになぜ…」
麻衣の口がとまる。だが再び口を動かし始める。
「なぜ殺人凶なのですか」
侑也は少し黙り込み小川の水を見つめる。
「殺人凶を知っているんだな。そうだよ、僕は南の殺人凶だ。だが、その名前で呼ばれるのもあと少しの期間だろうな」
右手に持っていた鉄の槍を地面に置き静かに座り込む。
「それよりも…え~と…」
「普通に麻衣って呼んで下さい」
少し抵抗を感じたが一番の疑問を麻衣にぶつけてみた。
「麻衣はなぜここに?」
麻衣は侑也の隣に座り今までの事を哀しそうに語り始めた。
リリーブラッドと言う男に監禁されていた事。そしてそこで光を奪われた事。
なんとか脱走し山の中をさ迷っていた事。
そしてミルサターナと言う老人に助けられ一緒に暮らしている事。
「なるほどな。リリーブラッドと言う名前が出てくるとは思ってもみなかった」
「麻衣は今でもその男の顔を忘れた事はありません。目を焼かれる瞬間まで麻衣は脳裏に焼き付けました」
「その痛みと苦しみを忘れるな。忘れた瞬間、運命はまた降りかかってくるぞ」
侑也は鉄の槍を再び持ち立ち上がる。
「僕はもう行くよ」
侑也が後ろを振り返り立ち去ろうとした瞬間、ミルサターナが前に立っていた。
「なんだ!まだ僕に用でもあるのか」
「ホホホ。ちょっと頼み事をしても良いかのー」
その声を聞いた麻衣は立ち上がりミルサターナの場所へと歩き出した。
「おじいちゃん。今日は侑ちゃんとお話をしたんだよ」
「それはよかったのー。頑張って一緒に《侑ちゃん》の介護をしたからのー」
その名前の呼び方に侑也はミルサターナを睨み付け鉄の槍を肩に背負った。
「ふん!頼み事とは何だ?」
「あ!すまんのー。頼み事と言うより依頼じゃよ。この娘の兄を一緒に探してくれんかのー。それと麻衣ちゃんも一緒に連れて行ってくれ」
「なぜ僕がさが…」
依頼を断ろうとした瞬間、麻衣が侑也に抱きついてきた。
「捜してくれるんですか?本当に捜してくれるんですか?」
侑也は眉をピクピクさせながら…
「畜生、断れね―」
「ホホホ。麻衣ちゃんの可愛さに圧倒されよる」
その言葉に侑也の顔はみるみる赤くなりミルサターナへ指をさす。
「僕は殺人凶だぞ。称号はまだ残っている。敵も多い、裏切りも多い。そんな世界へ一緒に同行させろと?」
「中原侑也よ。ワシはお前の姉の存在を知っている。もし麻衣ちゃんの兄を見つけ無事に送り出したらその情報をやろう」
ミルサターナのその言葉に侑也はなぜか笑みを浮かべる。
「残念だが姉の情報は北の殺人凶に頼んである。交渉は決裂だな」
「ふふ、知っておるよ。北の殺人凶がその姉を見つけた事もな。そして近いうちに何かの理由で暗殺する事もな。じゃが交渉は完全に決裂じゃな。情報はなかった事にするわい。麻衣ちゃんの兄はワシらが捜す事にする」
「な、何だと!北の殺人凶が姉を暗殺だと」
麻衣は黙って話を聞く。そして、哀しく問いかけた。朝の風が麻衣の着ている白いワンピースをゆっくりと撫でながら揺らす。
「おじいちゃん、お願い。侑ちゃんにお姉ちゃんの情報をあげて!答えじゃなくていい。住んでいる地域くらい教えてあげてよ。侑ちゃんはお姉ちゃんを…麻衣はお兄ちゃんを…それじゃあ駄目」
顎ヒゲを触りながらミルサターナはニコリと笑う。
「麻衣ちゃんの訴えに負けたわい。じゃが中原侑也よ。麻衣ちゃんの兄も絶対に見つけるのじゃよ。それと麻衣ちゃん、危険じゃが覚悟はあるのかのー」
「ああ分かったよ」
侑也は麻衣を見つめ…
「うん!今までありがとね、おじいちゃん」
麻衣は侑也の右手を握りしめた。
麻衣
「こんにちは、どうも麻衣です」
侑也
「何でこんな事に……」
麻衣
「侑ちゃん!明日から麻衣達はパートナーです!お互いの捜し人を見つけましょう」
侑也
「なんか僕のキャラが変わりそうで恐い」
麻衣
「侑ちゃんは侑ちゃんですよ♪」
侑也
「うおおぉぉぉぉ」
麻衣
「侑ちゃん!正気を確かに!」




