第十六話《小悪魔》
くそ!くそ!
僕とした事が……
体には数本の針が刺さっており南の殺人凶の体を傷つけていた。
腹部に二本、太股に一本、右肩に一本。
それぞれ刺された場所の皮膚は黒くなり壊死していた。
「あの野郎、針の先に何か塗っておいたな」
針をゆっくり抜こうとするが先端の小さなカギヅメが肉に食い込みなかなかハズれないでいた。
「くそ!今度会ったらバラバラのグチャグチャにしてやる」
『無駄な抵抗はするな。手を頭の上にくみ下に伏せろ』
車のドアの隙間から拳銃を構え警察が警告する。
「全く、今日は最悪な一日だ」
「それは私の台詞だよ。なんで夏休みの初日にこんな事になるの」
『もう一度警告する。手を頭の上に……』
「わーかーりーまーしーた」
ダークは大声で叫ぶと両腕を頭の上に組む。
『ぐ!』
いきなり警察官の一人が地面に倒れ気絶した。
『どうしたんだ?』
『分かりません、いきなり……がっ……ごほ!』
『息が……でき……』
『くる…しぃ』
次々と警察官が倒れていく。
「お兄ちゃん、何かしたの?」
「いや、俺は何もやってない」
『貴様……な……何を……ごほ!』
最後の一人が倒れ落ち周りは静まりかえる。
何が起きたのか!
ダークは周りを警戒しながらこの場を立ち去った。
ダーク達がいなくなった後、警察官の一人がゆっくりと立ち上がる。
警官の服を脱ぎ終えると、両手を顔につけ顎の皮膚からベリベリと顔を剥いでいく。中からは女の顔が出てきた。
ブルーの瞳に短髪の髪を手でなでおろす。
「ふふふ、ダー君みっけ♪」
そう呟くと手の先から伸びている細く透明なワイヤーをクルクルと腕に巻きつけた。
「それにしてもダー君を追っていたらあの南の殺人凶までいるんだから……美沙びっくり!」
黒のジャケットを羽織り下は黒のミニスカートを履いている。
可愛い小悪魔のような印象である。
「さてと……」
胸元から十字架のアクセサリーを取り出すと真ん中についている赤い宝石を押した。
すると中心から小さいレーザーが出て、ある方向に向かい発射された。
「ふふふ、ダー君探しに出発!!」
大きな掛け声とともに女は再びパトカーに乗り込んだ。