第十五話《千夏……ギリギリセーフ》
「あの世でさ迷いな」
槍がダークの頭部を突き刺そうとした瞬間!
グラリ
南の殺人凶の体が揺らいだ。
よく見ると首筋に小さい針が一本刺さっていた。
「ふー、危なかった」
ゆっくりと立ち上がり顔の血を振り払う。
ボタボタと地面に落ちる血液の量を見るとどれだけ深い傷か見てとれた。
「麻酔の針だ。死にはしない」
「ち!」
「舌打ちとは余裕だな」
「君に言われたくないね」
お互いふらふらの状態に陥り硬直しあったままになってしまった。
「効くなー、この針」
「効くぜ、貴様の技」
ダークは懐から丸い玉を投げ出した。
色は白く大きさはダークの拳ほど。周りに無数の小さな穴があいていた。
地面に落下した直後ダークは目の前に転がっていた机に身を隠す。
「くそ!」
南の殺人凶がそう言い終わると同時に玉から数えきれないほどの小さな針が発射された。
カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ……
針が店内中に突き刺さる。外にいた野次馬にも窓を突き破り降り注いだ。
店内は穴だらけになりホコリが舞っている。
南の殺人凶の姿はなかった。しかし血の後が出口に向かってつづいていたのだ。
「仕留めそこねたか」
肩についた汚れをはらいながらダークはゆっくりと立ち上がる。
ガチャンと物音が聞こえ振り返るとダークの背後で涙目になっていた千夏の姿があった。
「お兄ちゃんの……え゛ぐ……バカ……ぐすん……」
周りにはさきほど放った針が刺さっており千夏は目の前のたまたまあったテーブルに守られ生存していたのだ。
「すごく……怖かったんだから」
それはそうであろう。あと一歩間違えたら千夏はハリネズミ状態になっていたのだから。
その時パトカーのサイレンの音が鳴り響く。
「ち、やばい。早く逃げなきゃな」
ダークは裏口へと進む。
「待ってよ!置いてかないで」
千夏は涙を拭いながらダークへ追いつこうする。
「ねぇ大丈夫?血がいっぱい出てるよ」
「うるさい。早く来い」
なんとか裏の入り口に到着をしドアを開ける。
しかし……
「くそ!」
そこには ……
「どうするの?お兄ちゃん」
ダークと千夏は待ちかまえていた多数の警察に囲まれてしまった。