第十三話《いざ対決》
暗いな。
ただ暗い。
この場所はもう立ち去るか。
周囲には血が飛び跳ね、バラバラになった肉塊が転がっている。もはや男か女かの区別はついていなかった。
血の独特の香りがあたりを漂っている。
その彼がいる部屋は地獄の入り口に続いているようだった。
山奥の廃墟になったビルに彼はいた。
長年放置されていたそのビルは外側の壁が壊れており中の空間が露出している。
「一人逃げたか」
手に持っている金属の槍からは血が垂れていた。
「あー、夏休みに入っちゃったよー!」
烏龍茶を一気飲みしテーブルにおもいっきり叩きつける。
「いいじゃんかよ。夏休みが終わったら学校なんだから」
千夏はファミレスの中で大声で叫んだ。
クーラーの風が千夏達の汗を取り除く。
「もうこうなったら夏休みを満喫してやる」
烏龍茶を飲みほし中に入っている氷を口に運んだ。
「バリバリ…もう、いやになっひゃふ…う゛、頭が……痛い……」
「氷なんか食うからだ。もう出るぞ」
「えー、外は暑いもん」
「じゃあ一生ここにいろ」
ダークは立ち上がるとレジの方へと歩いていく。
「レディーを一人ぼっちにするの?」
その言葉に会計を済ませているダークがため息を吐いた。
「あ、今バカにした!」
「してねーよ」
千夏はダークのもとまで近づき背中をポカポカと殴る。
「本当にガキだなお前は」
……とその時、ガラスを突き破って男が転がってきた。
店内を何が起こったのかとパニック状態に陥っていた。
ダークの足もとで倒れている状態になり頭からはすごい出血が流れていた。
「たす……け」
ダークの足を掴み弱々しい声で言う。
千夏はしゃがみこみ男性に向かって質問する。
「何があったの?」
「あいつ……が……」
男性が割れた窓の外の向かって指をさす。
ダークと千夏の目がその指の方向に目がいく。
店内から逃げる客の中にその姿はあった。
学生服の姿で背中に金属の槍を背負っている。ゆっくりと歩きながらこちらに向かってくる。
「誰……あれ?」
千夏は直感で分かった。
こいつはヤバい。
鳥肌が立ちダークのズボンの裾を掴む。
「たす……けてくれ」
最後の言葉を言い終わると男性は気を失ってしまった。
ダークは視線を男性から学生服姿の男に切り替えた。
「あいつは確か」
「ねぇ、なんなのよあいつ」
千夏は立ち上がり後ろに後ずさりをする。
怖い怖い怖い。
「食事中にごめんねお客さん。悪いんだけどその男をこっちに渡してくれ」
男が割れた窓から中に入ってきた。
「あー、これの事」
ダークは目線を下に戻し気を失っている男性を見る。
「んー、あんた何か違うね。僕が怖くないのかい?」
笑いながらダークの近くに歩みよる。
「お前みたいなガキに興味がないだけだが」
その言葉に男はダークに向かって三日月の金属のナイフを手にとった。
「君……うざいね。そこに転がっている男は後にしてお前から殺しちゃおうかな」
「お前、殺人凶だろ」
男の顔が変わる。
手首がピクリと動いた瞬間、ダークの顔に勢いよく斬りつけた。
しかしその攻撃をすれすれでかわすダーク。
「貴様……何者だ」
「暗殺者、ダーク・ミラー」
その言葉を聞くと男はいきなりケラケラと笑いだす。
「くははははははは、まさか……あのダーク・ミラーに会うとは。僕は運がいいのかな。よしターゲット変更だ。お前を殺すよ」
「おい千夏」
「は、はい」
震えいる千夏を見てダークが声をかける。
「ここから逃げとけ」
そう言うとダークはポケットから15センチほどの棒を取り出す。真ん中についているボタンを押すと先から長い刃が出てきた。1メートルほどの小太刀に変身したそれを見て男はまた微笑む。
そしてダークも一緒に微笑んだ。
「南の殺人凶、コードネーム《ミュージック・キラー》だ」
「暗殺者部類《凶殺》ダーク・ミラーだ」
お互いが名乗り終わると武器を構え風のような早さで突撃した。
千夏
《ねぇ暗殺者部類って何?》
ダーク
《あん、まぁ暗殺者の階級みたいなものだが》
千夏
《そんなのあるの!》
ダーク
「まぁな、ちなみに俺は《凶殺》だ」
千夏
「よく分からないよ」
ダーク
「まったく……つまりこういう事だ」
殺戮能力が低いのが《低殺》[ていさつ]
そして中間が《富凶》[ふきょう]
さらに殺戮能力が極限に高いのが《凶殺》[きょうさつ]だ。
千夏
「え、じゃあお兄ちゃんって凄いんだ」
ダーク
「まぁな。しかし同じ部類でも実力の差は下から上まである」
千夏
「マジで!」