第十話《水色の思い出》
山の深くにその学校はあった。全生徒は50名ほど。田舎を田舎でたしたくらいにその周りは自然に溢れていた。
運動場はその敷地を目一杯に使っている。
「そうですか。わざわざこんな学校までありがとうございます」
校長室にはダーク、千夏、担任の先生、そして校長先生がソファーに腰をかけていた。
深く頭を下げる校長。
「あなたはお兄さんですか?」
担任の先生がダークに話かける。
「はい、一応」
嫌そうな目をしているダークに千夏は演技を見せる。
「正真正銘のお兄ちゃんです。田舎に憧れてこちらの学校に来ました。宜しくお願いします」
「そうですか。親はいないとお兄さんの方から聞きました。偉い兄妹だ」
校長は席から立ち、ダークにむけ握手を交わした。
「明日から千夏ちゃんはこの学校の生徒です。お兄さんも遊びに来てください、大歓迎ですから」
「妹を宜しくお願いします」
その光景を見た千夏はホッと胸を撫で下ろした。
「千夏ちゃん、よろしくね」
「はい!」
担任の先生は小柄な体型の女性教師だ。
その風貌からしていかにも《優しさ》に満ち溢れているようだった。
「ちなみにお兄さんは何か職業はされているのですか?」
校長のその質問に千夏はダークに視線を送る。
「えーと、掃除屋です」
《うまい、違う意味で!》
千夏は心の中でつい叫んでしまった。
「掃除屋ですか。若いのに頑張りますね」
「自分の特技ですから」
話が噛み合うのはなぜだろうか?
こんな話を30分ほどし、ダークと千夏は学校を後にした。
「ねぇお兄ちゃん」
「何だ?」
太陽の光は地面の水分を蒸発させ湿度を高めている。ダーク達が歩いている小道は一つだけ。
ほかに道という道はなく人が歩いていけそうなところはここだけであった。
「私って本当に学校に行っていいのかな?」
「何を今さら。自分で言い出したんだろうが」
ダークの今の服装は黒マントではなく、下はジーンズの短パンに上は青のタンクトップを着ている。普通の若者の服装であった。
「お兄ちゃん……いつもあの服装じゃないんだね」
「当たり前だ。あれは仕事用、俺だって私服くらい着るさ」
千夏の格好は子供用の水色のワンピースを着ており何やら涼しさをかもしだしている。
ダークがタンスの引き出しから出し千夏にあげたのだ。
「ねぇ、本当にこの服貰っていいの?」
「ああー、貰っとけ」
そう言うとダークは空を見上げ夏の季節を見つめ続けていた。
「夏か……」
その言葉はどこか悲しげに千夏に聞こえてきた。
ダーク
「この世界の殺しをする奴はそれぞれ種類がある」
千夏
「どんなの?」
ダーク
「俺と同じく暗殺者の部類に入る奴と、殺人凶と呼ばれる凶悪な殺人者だ」
千夏
「どこか違うの?」
ダーク
「違うね、俺らは依頼で受けたターゲットしかやりはしない。それに暗殺者には自分でルールを作っている。それとは逆で殺人凶は自分が殺したい時にだけ人を殺す奴だ。まぁ、俺も昔は……」
千夏
「どうしたの?」
ダーク
「何でもない」
「あ!そのベルトについている丸い物は何?」
ダーク
「あ!ばか!さわる…」
《ドカーーン!!》
ダーク
「げほ!げほ!……このバカ……」
千夏
「ごめん」