第九話《新たな殺人凶》
《昼1時》
空は快晴で太陽の光はますます活発になる。
勿論建物の中にクーラーなどはなく気温が上がる一方であった。
「ねぇ、暑いよ」
「我慢しろ」
千夏の体は汗まみれになっている。服はベトベトし、汗くささに耐えきれないでいた。
「お風呂に入りたい!」
「井戸の水を風呂場までくんで勝手に入ってろ」
ダークは武器の手入れをしながら答える。日本刀や、多数のナイフ、中には変わった武器を丁寧に磨いている。
「ねぇお兄ちゃん」
「何だ?」
日本刀を高くあげて太陽の光に反射させる。
「トイレに行きたい」
「自分で行け」
両足をモジモジしながら千夏は答える。
「だって怖いんだもん。今時、ボットン便所なんてあり得ないよ」
「全く、手間がかかる奴だ」
……そして5分後。
「はぁー、すっきりした」
トイレのドアを開けるとダークはため息をつく。
「お前と一緒にいると自分がおかしくなりそうだ。それに怖くないのか?俺は暗殺者だぞ」
「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだもん」
その言葉を聞きダークは意味が分からない表情をし千夏の肩に手を触れた。
「お前は似ているんだ」
ぼそりと呟いた為、千夏にはよく聞き取れなかった。
「な、何?」
はっと我に返り手を素早くどける。
「別に何でもない」
「変なの?じゃあ私お風呂に入ってくるね。水くみがしんどいけど」
千夏はそう言って外に走っていった。
「明日はあいつを学校に連れてくのか」
大きくため息をつきダークはまた武器の手入れにぼっとうする。
ある工場地帯。
「南の殺人凶がくるぞ」
「早く車に乗れ!」
男二人は慌てながら車に乗りこみキーを差し込もうとする。
「早くしろ!」
「だめだ!かからない」
風が運ぶよ不吉をよ〜♪
逃げれ逃げれどその運命〜♪
変えられないのが世のさだめ〜♪
長い金属の槍が男達の目に飛び込む。
ただただ死の歌を〜♪
聞けば仏の世の道に〜♪
我が裁こう君たちを〜♪
背中に長い金属の槍を背負い、口には煙草を加えている。その異様な光景とはうらはらに服装は学生服。年齢は18〜20歳の間であろうか。
「もう駄目だ!殺される」
「どうせ殺されるのなら悪あがきくらいしてやるさ」
男二人は車から出ると拳銃を懐から取り出した。
しかしその事を気ににも止めず学生服の男は歩き続ける。
「はは!まさか南の殺人凶がこんなガキとはな」
「残りの3人もあんな化け物なのか」
震える手を必死に抑え銃口を向ける。
「死ね―――!!」
「くらいやがれ!!」
二発の弾は目的の的には当たらず後ろを通り過ぎていく。
「拳銃はただでさえ標準が定まらない。素人が扱ったところでなんの意味も持たない。それに……」
学生服の男は背中から長い金属の槍を取り出し話を続ける。
「貴様等とは修羅場の数が違う」
その鋭い眼光を男達に向ける。
虎がウサギを狩るような場面。
圧倒的な実力を男達は知っていた。
もう逃げても無理だと悟ったのか二人とも拳銃を地面に置いた。
「殺せ」
「早くしろ」
「はい、おりこうさん。一列に並べ」
その言葉に従い男達は一列に並ぶ。
ためらいはなかった。
長い金属の槍を背中からはずし手に持ち替える。
「ばいばい♪」
それが最後の言葉だった。
後の風景は暗闇の世界が広がっていた。
ただただ深い暗闇。
死の世界であろうか?
男達はその事も知らず深い闇に入っていった。
「ゴミ……排除完了」
地面には頭部を槍で串刺しにされた死体が転がっていた。