上陸、派遣調査部隊
その日、未知の大陸に上陸した、陸上自衛隊の部隊に俺は居た。
「機材搬入急げっ」
「車両はあっちだ」
「弾薬・燃料は火気厳禁だ」
「あのあたりに仮設指揮所の設置急げッ」
ホバークラフトからピストン輸送される車両・資材を見つつ、俺は物資の輸送と整理を行う。一応現場に復帰し完熟再訓練を受けたが体が覚えていたためさして苦労はしなかった。物資の搬入が終わり、俺たちを此処まで送ってきた海自の護衛艦隊が沖合から消えていくのを見るといくぶんか不安になるが
「{大丈夫、なんとかなるさ}」
俺は自らに言い聞かせた。今回の調査部隊は一応武装はしている物の89式小銃に9mm拳銃そしてミニミ軽機関銃と弾薬・車両だけだ。人員は二個中隊約二百五十名だ。内訳は万が一のために一個中隊並びに施設科の人員、資材なも含まれる。と言っても自分は員数外の幹部の為自分の指揮する隊は持たない。なんとか、ベースキャンプが出来、幹部以上が指揮所に集まった。
「我々の目的はこの大陸での資源調査であり、最優先は日本が今後も存在できるようにすることである。」
派遣部隊指揮官、高崎誠二等陸佐が言い
「今回は、我々とは別に政府より全件を委任されて派遣された外務省の塚崎茂よりアドバイスもいただくこともあるかもしれない。そのときはよろしくお願いする。」
軽く、全権を委任されてきた、塚崎氏を紹介する。そして解散になった時
「一ノ瀬二尉、少しいいか」
指揮官の高崎二佐に呼び止められ
「ハイ、なんでしょうか?」
尋ねると
「どうだ、カンは戻ってきたか?」
聞かれるが、回りくどいやられ方を嫌う俺は
「二佐、仰りたいことがあれば言って下さい。」
言うと
「うむ・・・・二尉、貴官は員数外の幹部と言うのは失礼だが承知しているな」
高崎二佐は言い
「ええ、承知しております。」
言いつつも
「{何が言いたいんだ・・・こいつ・・}」
内心は思っていたが
「貴官の経歴は読ませてもらっている。最精鋭の自衛官だと、そこで貴官に頼みたいのだ」
「お断りします」
間をおかずに言い
「‘お願い‘はお断り致します。命令して下さい。」
言うと二佐は
「なるほどな・・・流石岩渕が信頼を置く隊員だったというのが頷ける。」
高崎二佐は告げると
「一ノ瀬二尉、高倉誠三尉の指揮するパトロール小隊に同行しろ」
コレには俺もまいった
「・・・・・すみませんが、高倉三尉が指揮官なのになぜ私が同行する必要があるので?」
聞くと、二佐は頭をかきつつ
「あいつは緊急時の対応に不安がある隊員で有名だ・・・万が一の時に元特殊作戦群出身の一ノ瀬二尉が居てくれると安心できる。ないに越した事はないが万が一の場合はあいつの指揮権を剥奪して構わない。高倉三尉がひとり死ぬのは構わないが部下まで道連れは敵わない」
言われ
「はぁ~・・・・了解しました・・・・」
思わずため息を付いてしまう。復帰してまでお守りをやらされるのかと・・
「高倉三尉には話を通してある。加えて命令だと言う事も」
二佐は言い
「了解しました。」
そう言い、キャンプの外に出ると一人の隊員が待っていた。
「一ノ瀬二尉で?」
聞かれ
「ああ、そうだが?」
言うと
「高倉誠三尉です、二佐の命令であなたを小隊に同行させるように命令を受けています。」
言いつつも
「勘違いしないで下さい、貴方は員数外の幹部。いくら優秀でも、階級も私より上でも指揮官は私です。命令には従ってもらいます。」
どう見ても、俺が気に食わないというのが全身からにじみ出てるのがわかる
「万事心配なく、二佐に言われてますから、‘貴方の小隊‘だと」
俺はそこを強調する。すると
「こっちへ」
高倉三尉は言うと自分の小隊の所へ俺を案内する。
正直不満だった。目の前にいる一ノ瀬優希二等陸尉に高崎二佐は保険をかけたのだ・・・確かに彼は私よりも遥かに優秀だろう。出戻りとは言え。屈辱だった・・・現場を一年も離れた人間を保険として送られたこと、上官に信用されていない事。
小隊に合流し、周囲の警戒の為パトロールに出ることになる。久しぶりに89式小銃を手にしているが何とも懐かしい感触だ。小隊はこの辺一体を見て回るように指示を受ける。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
高倉の部下は何となくだが指揮官を信用していない節があるようだ。見ていると舌打ちをしたりため息をついたり、「指揮権剥奪」の言葉が頭をよぎるがまだ早いだろう。そう思い周囲を警戒しながら進む。林を出て開けた場所に出る。
「15分休憩だ」
高倉三尉は言うとその場に座り込む、俺でさえ草むらの中に隠れつつ休憩を取るというのに
「ぼさっとしてると死にますよ、小隊長殿」
俺が言うと周りを見て察したのか慌てて草むらに入る。そして周りのため息
「{こいつ緊張感なさすぎだろ・・・・}」
俺は見ていて思い始めて来た。そして、休憩が終わり無線手が本部と交信し
「現状のラインを維持せよ」
との事です。連絡を受けた隊員は俺を含めた皆に伝達し、俺は匍匐の状態で周りを見渡せる場所で双眼鏡を取り出し、周囲を見渡す。
「・・・・・・・・・・!煙・・・・火事か何かか?・・・・」
思い
「小隊長、3時の方角煙が上がってます・・・・火事にしてはでかくありませんか?」
言ってみるが
「二尉、我々は現状のラインを維持すればそれで良い余り前に出るな」
釘を刺され
「・・・・・了解」
一言行った。
次回、ファーストコンタクトを予定しています。