怒り・招かれざる客
葵が病院で目を覚まし、俺は付きっ切りで看病していた。会社には訳を話して。
「ごめんなさい・・・・・」
目を覚ました葵が発した言葉は謝罪の言葉だった。
「葵が謝る必要がどこにある。・・・防衛省のクソ野郎ども・・ふざけやがって!!」
普段の俺なら言わないであろう汚い言葉使いになってしまったが言いつつも
「葵、何か飲みたいものあるか?下の自販で買ってくるから。」
聞くと
「うん、レモンティーお願いできるかな?」
葵はいい
「わかった、買ってくるよ」
俺は葵の病室を出て、エレベータで下の階の自販機まで行った。そして目的の物を買って、病室前まで戻ってくると、病室の中が騒がしい。中に入ると
「主人に言ってください!!」
葵がスーツ姿の男二人に何やら言われており、葵が言い返している。
「おい、此処は病人がいるんださっさと失せろッ」
中に入りそいつらに言うと俺の方に向き直り、紙を見比べ、
「一ノ瀬優希元二等陸尉ですね?」
そう言い
「ああ、そうだ」
殺気を放った状態のまま椅子にかけ
「我々は防衛省から参りました、園田と戸塚と申します。」
二人は言い
「要件は?、見ての通りだ手短にしろこっちはお前らにかかづり合ってる暇はないんだ」
そう言うと
「では、簡潔に言わせて頂きます。防衛省はあなたを復帰させる隊員リストの上で重要人物の一人と見ています。」
園田は言い
「なんで?、俺を除けば幹部、曹、士優秀な奴はゴマンといる。なぜ俺にこだわる?」
聞くと
「貴方は、アフガンでの事件後自衛隊を退職なさっていますが対応を誤った訳でもない。上層部でもあなたのような優秀な隊員を失うのは相当な痛手だと記された記録が残っています。」
今度は戸塚が喋る。
「・・・・・」
俺は話を黙って聞き
「言いたい事はそれだけか?・・・・・・」
話し
「「??」」
「二人共理解できてないみたいだな、あの時の俺ならばいつ死んでもいい覚悟はあった・・・だか今の俺は違う。大事な最愛の人がいて、傍に居たいとも思ってる。」
そういうが
「国家の非常事態です、最悪少々強引な手を使わせて頂いてもいいのですが」
二人は言うが
「俺が元Sだと分かって喧嘩を売るなら買ってやる・・・ただお前らを生かして返すつもりはないからな・・」
物騒な事を言ってると
「まぁーた物騒な事を言ってるな」
そこに現れたのは俺が特殊作戦群時代にお世話になっていた岩渕充群司令官だった。
「岩渕群司令」
俺が言うと
「まぁ、奥さんが大事なのは俺もわかる。だがな・・一ノ瀬、本当に国は勿論の事、私もお前を必要としている、一人の自衛官として。民心党時代の早期退職制度を使い自衛隊をさった後のお前をずっと俺達は追い続けた。こうして、葵さんと言う伴侶を得た事、温かく幸せな家庭を築いた事。」
葵を見て、岩渕群司令は語る。俺も、葵も顔を赤くする中
「優希、行ってあげたら・・・私は・・大丈夫だから」
葵はいい
「確かに、優希が復帰したら寂しくなるけど優希自身が私の知ってる優希じゃないって・・結婚前から今の職場で働いてる時から思って来たの・・確かにあの手紙はショックを受けたけど、優希にとってはチャンスなんじゃないのかって思うの。」
彼女は話し終え
「葵・・・・・」
俺は思った。長年よく俺を見ているなと・・・弱い部分を葵に見せた事は無かったが。
思っていると
「我々からの要請は陸上自衛隊に復帰していただきます。無論階級も現役時代とそのままです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
考え、
「一つ条件があります。」
俺は言い
「最大限善処します。」
防衛省職員の園田、戸塚は言い
「妻の葵を自衛隊病院に転院させて下さい。葵が倒れる原因を作ったのはそちらですので。その責任はとって頂きたい。」
俺は注文をつけると
「分かりました、ではそのように手配致します。」
話している傍ら、
「一ノ瀬、隊に戻ってこないか?」
岩渕群長に誘われるも
「今は冒険野郎的な事は出来ません、普通科連隊で勘弁してください・・・」
葵に向き直り
「心配しなくて良い、仕事を済ませて葵の所に戻ってくる。」
葵に言い
「うん、私は貴方の帰る場所を守る・・・だから無事に帰って来てくれれば何も言わない」
葵は言い、傍に居た岩渕群司令が葵に敬礼し
「奥様、大事なご家族をお借りします。」
一言真剣な顔で言い、俺は葵の手を握り無言で頷く。葵は一言
「行ってらっしゃい」
笑顔で言ってくれた・・・・・本当は不安でしょうがないかもしれないのに。こうして俺は会社員ではなくなった。後に知ったが、葵も俺の復帰に合わせて会社を退職。こうして俺は陸上自衛隊の幹部隊員として復帰する事となった。因みに最後まで岩渕群司令に特殊作戦群に戻って来ないかと言われたが葵の負担を減らしたく断った。後にそれも無意味になるとも知らずに・・
次回~上陸派遣調査部隊~を予定しています。