プロローグ 王城
破壊され、無数の兵士の死体と怪物の死体が散乱する城内
大広間。燃え盛る炎の中から1匹の怪物が出てくる。
怪物の周囲は薄く黒いもやのようなものが漂い、矢や魔法は全てそこで止まっている。
背中から生えた触手にはきらびやかな鎧を纏った若者が絡め撮られぐったりしている。
怪物を遠巻きに囲む弓を構えた兵士と魔道士。しかしその手前の
騎士達は腰が引けてしまっている。
怪物の正面、少し離れた場所に立つ白銀の女騎士二人。周囲の騎士とは明らかに鎧のデザインが違う、別の国の騎士であるかのように。
背の高い女騎士は、やたらと長い刀を両手で構えている。
黒髪の女勇者が居合いのように、剣を収めたまま構える。
それに呼応して、弓兵と一緒にいるメイド服柄の鎧を着た小柄な女が左手を上げる。
弓兵・魔道士が一斉に構える。
背の高い女騎士が囁く。
「そろそろ殿下がヤバイぞ。手遅れになる」
「1度しか使えんのじゃぞ? 此処で使ってしまえばあ奴は倒せぬ」女勇者が小さく呟く。
「仕方がないだろう。王族最後の生き残りだ、死なせるわけにはいかない」
「やむおえぬか!!」
叫ぶと同時に居合いの構えから音速の一閃!横に長く白い光が 怪物の足元を襲う!
光は怪物にまとわり付く黒い靄を一瞬で吹き飛ばし、皇太子の下すれすれを通り、怪物の両足を膝から切り飛ばす。
たまらず転倒する怪物。
皇太子は跳ね飛ばされ、少し離れた場所に落下する。
光の一撃と同時に飛び出した背の高い女騎士が、超人的なスピードで皇太子を拾い、脇に跳ぶ。
「今!!!」メイド柄鎧の女が叫び、左手を前に振る。
四方から無数の矢と魔法が怪物に降り注ぐ。
「やったか?・・・・・」誰かがポツリと言う
魔法攻撃の爆炎が晴れた時にはそこには痕跡も無い。
「逃げられたか・・・・」女勇者が悔しそうに呟く。
「わ・・・我々の勝利だ!!!」
「勝ちどきを上げよ」
「うおー!!!」
生き残った兵達が歓声をあげる
「・・・・・何言ってやがる・・・惨敗だよ」
皇太子を足元に寝かせた背の高い女騎士が呟き、面白くなさそうな顔でカタナを仕舞う。