表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者姫のメイド  作者: IGUAS
5/11

戦後から始まる その5

200万人を超える人口を持つ大陸最大の都市、帝都ホルストパレス。

その中央を南北に縦断する大河ロズダウ河。

遥か北セプテンタリス王国との国境であるタレス山脈から流れてくる。

川幅は5ミレーにも及び、2つある橋を渡る以外には渡し船に頼るしか無い。なお、徒歩で橋を渡ると2時間程掛かるらしい。


ロズダウ河は交通の要衝でもある。上流、下流に船が行き交い、数箇所にある支流から市内様々な場所へ物資が届く。


 そのロズダウ河を遡るひときわ目立つ船!

甲板のテーブル、上座に座った姫様は、川縁を子供たちが追いかけてくるのに手を振っている。

4人の目の前には紅茶とケーキ

・・・・・本当にお茶することになるとは・・・・

小屋はまさかのキッチン。専属のメイドまで用意して、あたしの仕事が無いじゃん!

だいたいメイドがメイドに給仕する光景ってどうなのよ。

「不条理だ・・・」

「くっくっくっ・・もてなされてむくれる奴も珍しいな。アマネ」

「うっさい!クラウ。例えばあんたに戦士の護衛が付いたら

どう思うのよ!」

「・・・あー、そうか。確かに居心地悪いなw まあ部下として

こき使ってやるけどな」

「くっ、脳筋め!」

「アマネ様は、勇者姫様のご友人であるとともに、我が商会の大切なビジネスパートナーです。軽んじた扱いが出来るわけが御座いませんです。はい。」

うう・・・そういう言われ方マズイって


 ビジネスパートナーという言葉を聞いた姫様の目がすっと細くなる。

「アマネよ」

「なっ、何でしょう 姫様?」

「この妙な船や看板はお主の仕業かや?」

ドッと冷や汗が背中を伝う

「ちっちっ・・違いますよう! 私は宣伝の重要性を指摘しただけで・・・・」

「つまるところ入れ知恵をしたわけじゃな?」

「うはあ・・・まあ・・・・はい」


「ふふ・・別に怒っているわけではない。じゃが、こういう行動の

意味合いというものは知りたいのう。」

姫様の表情が柔らかくなる。

ああーよかった、怖かった~!!


「えーとですね、ロドリコ商会は我々の戦いを支えることによって、ここ2年ほどで大きくなった、いわば帝都の商業界では新参者なのです。」

「うむ、そこは判る」

「ですから勿論、他の商家や取引先に対しての信用度や一般市民に対しての知名度が足りないのです」

「なるほど?」

ここでロドリゲスのおっさんが言葉を繋げる。

うん。後は頼むわ、オジサマ。


「実のところ、ボーグ衛兵隊への補給のために、食料と魔法武器の買占めですとか、余剰物資を避難する市民に安く提供したりしましたので、戦争で儲けようとした一部の商会からは目の敵にされております」

「ふむ、しかしそれは非難されるような事ではあるまい?」

「はい、世間的にはそうです。しかしお金が絡みますと、理性的ではなくなる輩も沢山おりまして」

「なるほどのう」

「そこで、申し訳ないとは思ったのですが、勇者姫様のご威光をお借りしまして、当店に不埒な真似をするのは得策ではないぞ。と

更に、世間様へのアピールも同時に出来て一石二鳥でございます」

「ふむ、話は判った。予め相談して欲しかったがの」

「申し訳御座いません。事後承諾でないとこの船など許可を頂けない可能性もありましたので」


「・・・・正直じゃな・・」姫様が苦笑する。どうやらokみたいね。


「それから、皆様の滞在費用ですが・・・・」

姫様の表情が引き締まる、ああーやっぱりかなり気にしてたのね。 

「この先永久に、御代は結構で御座います」

「む、それはいかん。取引というものはちゃんとしてだな・・・」

「いえいえ。既に過分なほど儲けさせて頂いております。はい」

「そうかや? とうに渡した金子は尽きている頃であろうと思ったのじゃが?」

「はい、それは確かに。ですが!」

「?」


「聞いた話によると、この街の貴族達は勇者姫様の忠告に全く耳を貸さなかったとか」

「うむ。折角魔力のある武器以外では異形共は倒せん、と教えてやったのにな。先祖伝来の名剣が。などと寝言を言いおって。

予め準備しておけばあそこまで酷い敗北はしなかったと思うのじゃ」

「はい、私共もこれまでの戦いで姫様のお言葉は耳にしておりましたから、準備万端だったので御座います」

「・・・・魔力のある武器かえ? 追加で揃えておったな」

「ええ、資金の限界まで買い集めておきました。勿論適価で売るつもりだったのですが。」

「まさか大量に売れ残ってしまったのではないか?」

「ええ、覚悟しましたよ、商会も終わりかと。ですが正門での大敗北の後、初日に出陣しなかった貴族や騎士の方々が当店に殺到しましてですね、なんと皆様、予定価格の10倍以上でお買い上げに成られました」


「それはアコギじゃな」

「いえいえ、需要に供給が追いつかなければ価格は上がる。

市場原理でございます」

「ならば、他の商会も潤ったのではないかえ?ロドリコ商会だけが妬まれるのはおかしいじゃろう?」

「それがですね。当初お偉い皆様は勇者姫様の言葉に耳を貸さなかったものですから、何処の店もあてが外れまして、私共の店に、安く武器を流してくれたのですよ。まあ高価な商品ですから 不良在庫を置いておけない事情もありますな」

「更に買い占めたのかえ、おぬしという奴は。やはり元ギャンブラーじゃの」

「はい、たやすい勝負でしたw」


「ふふふ・・それでは身の危険も感じる訳じゃの」

「しかしおかげ様で、更に商会を大きく出来ます。」

「この先 いつでも資金のご用立ては承りますので、必要がありましたらご利用ください」

・・・・あくまでも商売だね・・おっさん・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ