道中
僕は主人の城門を見上げた。
「思ったより高いですね」
主人の城は山の山頂を中心に塀で山の上層部をすべて囲んでいる。塀の高さは100m近くの高さで真っ黒に塗られていた。門はあるがどうも開いてくれそうにない。
「登るしかないですね」
僕はナイフに紐を括り付けると、壁の中間、約50m位に向かって投げた。ナイフは半回転すると壁の中間にめり込んだ。
「それでは、今から壁を登るので僕に捕まってください」
「「は?」」
勇者の女たちに言うと変人を見るような目で僕を見てきた。まあ、当たり前の反応だろう。しかも僕が近づくと離れていく。5分くらい、彼女たちに説明をしたが、めんどくさくなってきたので二人の腹を弱めに殴って気絶させて肩に乗せた。
「さすがに少し...重いですね...」
今、僕の肩には4人も人が乗っている。しかも一人はフルアーマーを着てるのだ。合計体重は軽く200kgを超えている。
「ま、問題ないですけどね」
僕は足に力を込めてかがむと、カエルのように飛んだ。死神になったおかげなのか体がいつもの3倍近くの性能だ。30mくらい飛び上がると壁を蹴り、ナイフまで飛んだ。ナイフを足場にしてさらに飛び上がり壁の頂上に降り立った。
「これは絶景ですね」
城門の頂上からは城が見えた。大きく黒一色の禍々しい城、城を中心に広がる広大だが隅々まで手入れされた庭、庭を覆い尽くすほどの奴隷たち。これを見下ろすのは気持ちがいい。
「さすが主人、趣味がよろしい」
「うう、何が起こったんだ?」
「勇者キサラギ、目覚めたのですか?見てみなさいこの景色を。素晴らしいでしょ」
「は?お前は何を....な!!」
僕はキサラギを肩から落とすと城の方を見て言った。キサラギもつられて城の方を見て言葉を失っていた。
「言葉を失うほどですか」
「な....何なんだこれは」
キサラギはいきなり顔を赤く染め上げ僕の洋服の胸元をつかんで持ち上げた。
「何を怒っているんですか?」
「こんな光景を見せられて怒らない奴がいるか!!この人たちをどこからさらってきたんだ!!ミラ、サラ、シフォン!!お前何をしたんだ!!」
「ああ、うるさいですね。質問はいっぺんに聞かれても全部一緒には答えられませんを」
「うるさい!この人たちをどこから....」
「うるさいです」
僕はナイフの柄でキサラギの後頭部を殴り気絶させると、担ぎ直した。
「はあ、勇者ってみんなこんな感じなんでしょうか?」
僕はかなり精神的な疲れを感じながら4人を主人のもとに運んだ。