勇者の力 キサラギvsクロ
「最後の忠告です。剣を収め主人のもとについて来れば命までは取りません」
「黙れ!魔王の手下!」
「はあ....本当にめんどくさい人ですね.....」
勇者キサラギは聖剣を横に構えながら走って接近してきた。その後ろから女たちが炎の魔法を飛ばしてきた。コンビネーションはなかなかだった。だが、スラムで命令を全うしていた頃は拳銃やマシンガンを相手にしてきたのだから、それに比べて数段遅いのは間違えないだろう。僕は背負っていたシフォンを上に高く放り投げると、ナイフを抜き逆手に持ち構えた。勇者キサラギは目の前まで迫ってきており、剣を頭上に掲げ、上段斬りを放ってきた。スピード、
パワー、技術、すべて中途半端だ。聖剣に頼りっきりといった所だろう。さらに、その肝心の聖剣も長い間磨かれていないのか、表面が濁った色をしていた。
「二流ですね」
「な、何を!」
僕は聖剣をナイフで滑らせるようにし、角度を変えた。聖剣は力に逆らわず地面にめり込んだ。だいぶ深くめり込んだのだろう、勇者キサラギは聖剣を抜こうと腕にありったけの力を込めていて大きな隙を作った。僕は聖剣を踏みつけるとキサラギの腕を掴んだ。
「離せ!この野郎!」
キサラギは拳を振り上げると僕の手に向かって振り下ろした。
「はい、いいですよ」
僕は掴んでいた手を離すと後ろに飛び退いた。キサラギは勢いづいた拳を止められず、思いっきり腕を殴り激痛に腕を押さえた。すると、次の瞬間キサラギの背中に女たちが放った炎の魔法が当たって煙を上げながらまっすぐこっちに飛んできた。僕はそれを踵落としで地面に叩き落とした。それと同時に落ちてきたシフォンをお姫様だっこの様に受け止めた。僕は今女を腕で抱えながら男を踏みつけると言う変な光景を生み出していた。
「き、キサラギ!」
「な、何て事だ!」
女二人はキサラギに駆け寄ってくると僕を睨みつけた。
「そう睨まないでください。ただ、主人の元まで付いて来て頂ければいいんですから」
「分かった」
「それでは」
僕はキサラギとシフォンを肩に担ぎ主人の城へ入っていった。