第一勇者 正義のキサラギ
僕は主人の城を後にすると反対側に歩き始めた。
城は砂漠の中央にあるのか、水平線まで見渡す限り砂漠だった。
「この砂漠を越えるのは一苦労だな」
僕はどうやって勇者を狩るか考え込みながら砂漠を歩き始めた。
数時間、歩いていると、前方から話し声が聞こえた。声から察するに男ひとりと女二人だろう。男の方の声は大きく力強い、たぶんかなりの筋肉質なのだろう。女の方は柔らかい声とまだ幼さを残す声。主人から聞いていた勇者のグループと同じメンバーだ。僕はの上にうつ伏せになると周りの砂を体の上にかけた。幸いにも風が砂を運んできてくれたので自然に砂漠に紛れることが出来た。
15分ほど待っていると男と女達が見えた。予想どうり男は筋肉質で真っ白な鎧を着ていて、腰に下げた剣は神々しいオーラを放っていた。女達は華奢でこれまた白いローブを着ていて、手に杖を持っていた。3人は和気藹々と砂漠を進んでいる。僕は3人が通り過ぎるのを待った。男が僕の前を通り過ぎたその瞬間、僕は砂から飛び出すと女の内で小さい方の首に手刀を入れるとそのまま女を掴み後ろに飛んだ。時間にすると1秒以下だが、主人なら余裕で対処出来る。勇者と言ってもこんなものか。僕は地面に着地すると勇者たちの方を見て自分の誤算に気がついた。女は3人だったのだ。声と足音が聞こえたのは3人だがこいつの足音は聞こえなかった。4人の中で一番の手練がこの女だった。その証拠に首をへし折るつもりで放った手刀をこの女は見えない壁の様なものでダメージを軽減させた。
「シフォン!!!」
「この魔王の手先め!!!シフォンさんを解放しなさい」
「そうだそうだ!!!」
「静かにしてください。それ以上騒ぐ様だとこの女の首を切り落としますよ」
僕がナイフを抜きシフォンと呼ばれた女の首筋に当てると3人は静かになった。
「それでは僕に付いてきてください」
僕が歩き始めると、3人はおとなしくついて来た。
主人の城に着くまで3時間、3人のただひたすら反撃するか否かを話し合っていた。
「反撃しましょう」
「何を言っているんだ、ミラ!シフォンを見捨てられるはずないだろ!」
「でも、そうでもしないと....」
「きっとチャンスがあるはずだ!」
「でも!」
「ちょっと二人とも落ち着いて!」
「あの、黙って歩けないんですか?僕に話が聞こえないと思うんですか?この人の首を切り落としますよ」
「このクソ野郎!!」
「はあ.....めんどくさい人達ですね....」
こんなやり取りを3時間も通付けて、さすがにここにいる3人を皆殺しにしようかと思い始めていた頃、やっと主人の城前にたどり着いた。
「こ、ここが魔王の城」
「ついにやってきましたね」
「緊張するよ」
勇者たち3人は剣を抜き、他の二人も杖を構え緊張した顔になった。
「盛り上がってる所、申し訳無いんですけど、剣を収めてください。本当にこの人の首を切り落としますよ。本当に貴方達状況がわかってないんですね」
僕が言うと勇者は剣を収めようとしたが、ミラと呼ばれた女がその手を止めた。
「ミラ」
「キサラギ、ここで奴を倒さないと我々はこの先に進めません」
「そうだよキサラギ、きっとこいつ魔王軍でも一番下っ端だよ。こんな奴に負けてちゃ魔王に勝てないよ」
「でも、シフォンが」
「彼女はあの男を殺してから奪い返せばいい」
「そんな、敵とはいえ、殺すのはいけない。きっと分かり合えるはずだ!」
「でも、ここであいつからシフォンを奪い返さないと!」
「そうだよ!」
「くそ、そうだな、シフォンの方が先決だ!いくぞ!この下衆め!」
勇者と女二人は剣と杖を抜き僕に向けた。
「はあ、どうして人の話を聞かないんですかね」