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血に染まりし過去
僕の記憶は血の池に倒れた人を見下ろしている記憶から始まる。
僕は手に木で出来たグリップの折りたたみナイフを持っていて、その手は血で覆われていた。
そんな僕の前で口を歪ませて僕を見る黒髪の男が一人。
それが僕の最初の記憶。
それからの記憶は断片的だがくっきりと覚えている事が三つ。
その黒髪が僕に食べ物を与えてくれていた事。
戦い方を教えてくれた事。
そして、いつも決まり事の様に言っていた事。「欲しい物があれば人から奪え」
彼の教えは素晴らしかった。
スラムに住んでいた僕にしてみれば僕自身で金を稼ぐのは不可能な話だった。だから持っている者から奪う。当然の選択。
その術を彼は教えてくれた。
僕はその人を尊敬し、教えられた通りに人を殺し、生き残った。
でも、いつからかその人は僕の前から居なくなった。
でもいつかは思い出せない。まるで記憶がbの焼けているかの様に。
思い出せるのは一つだけ。
”待て”と言われた事。
だから僕は今日も待つ。
誰とも知れない、いつ帰ってくるとも知らない彼を。