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完璧な~

完璧な恋愛を

作者: 橘 あんこ

圭吾視点になります。彼はこういう人でした。

「離して」


「離さない!止めるって言ってくれるまで離さないから!」


「何故貴方にそんな事いわれなきゃいけないの!?」


お前は…どうしていつも…


「俺の彼女だからだよ!」


鈴子を突き放すと、バランスを崩し地面に座るように倒れる。

怪我を心配しつつ睨むと彼女は、やっと俺を視界にいれた。


「何でその子なのよ!!」


俺は見せ付けるように瞳を抱き寄せ、鈴子を睨む。


「瞳が好きなんだ!彼女に手をだすな!」


「私は圭吾の『もの』じゃなかったの?!」


お前が俺の『もの』。そう『もの』で?


「…お前が俺の…?いつも付きまとってただけだろ!!」


そう、つきまとっていただけだ…。それだけだった。


「鈴ちゃん…ごめん…ごめんね…」


「こんな奴に謝る必要なんてない!いこう!!」


俺は、瞳の肩を抱き歩き出す。


「二度と俺に近づくな…!」




――――――――――――




工藤くどう 鈴子すずことの関係は、母親同士が仲が良かった事がキッカケだった。

ただの知り合い程度の関係が、俺と彼女をここまでにしたのは彼女の母親の一言だった。

彼女が俺を好きらしいっと…。俺の母親に言った。ただそれだけ。

彼女の母親も、始めは冗談でだったのだろうが、俺の母に結婚という未来予想を語りだし母もその未来に賛同するように話を進めた。

それまで困ったように話を流していた鈴子は母親のあまりの話に慌てて否定をする。

隣の部屋で本を読みながら聞いていた俺も、フォローしようにも母親達の話をこれ以上大きくしない為には、無視が一番だと放置していた。

結局、彼女が恥ずかしがる事からその話はその場では無くなったが、俺の母親は彼女が俺の事を好きな事が嬉しいらしい。

今度は俺が、彼女の事をどう思っているのかしつこく聞いてくるようになった。

彼女は彼女なりに俺に助け舟をだそうとしていたのだろうが、何だかそれも気に食わない。

そこまで否定する必要はないじゃないか?っとイラっとしていた。

「お前は俺の『もの』程度だな」っと彼女にいうと、反論するかと思えば俺の顔を見ると口を閉ざした。

鈴子の口から否定的な言葉は聞きたくなかった。その事が顔に出ていたのだと思う。

後々思えば、俺もガキだったなぁっとは思う。


同じ学校にいても鈴子と俺の接点は殆どなかった。

その頃から俺は、他の奴らと一線を画する存在だった。

勉強も運動も容姿でも人に劣るとは思っていない。むしろ選ばれた人間だと自覚している。

だからと言って周りの奴らが劣っているとも思っていない。俺がすごいだけだ。

そんな俺だったからか、周りは俺の完璧を理想とし俺に求めていた様に思う。

現に、鈴子と学校で軽く挨拶をするだけで、鈴子は俺と話すに相応しくないとほざいた奴がいた。

もちろんその場で黙らせたが、影で鈴子にそう言っている奴がまだいるだろう。

それなら、彼女を俺に釣り合うだけの行動をとればいいだけの事だ。

彼女が俺の『もの』であるのなら、そのくらいの努力ぐらいするだろう。


彼女が俺の助言で変りはじめた頃、携帯を持ったという事を知った。しかも俺の母親からの情報。

何故俺にすぐに報告しないんだっとムカついたが、まだ使いこなせていないからだと無理やりなっとくし、それなら彼女が携帯を使いこなすまで相手になろうと思いメールを送るように指示した。

毎日、俺に送られてくるメール。これで携帯になれてくれたらいいと思う。

彼女は俺の為にどんどん変っていく。

それに俺は満足しながら次に彼女をどうしようかと考えていた時だった。

鈴子がクラスの男子を話をしながら笑っていた。

その様子をみて唖然とした。俺にはあんな風に笑った事は一度もない。

こんなに彼女を考えてやっているのに、何を勘違いしているんだ。

お前は、俺の『もの』なんだ。

心に黒い何かが広がっていくように感じる。

次に彼女に必要なのは、『もの』としての自覚だ。俺の事が好きだという自覚。

その日のうちに彼女に伝える。毎日、彼女から会いに来るようにっと。


次の日、俺がクラスの女子と話をしている時に階段を上がる鈴子の姿が見えた。

まずい…きっと彼女は、俺とクラスの女子との関係に誤解して遠慮して教室に近寄れなかったのだろう。

放課後彼女をフォローする為に呼び止める。壁に追いやりどうして会いに来なかったのかを聞く。

分かっている事を聞こうというのだから、俺も性格が悪い。

とまどい目線を合わせない彼女に痺れをきらす。


「そんなに 拗ねるな」


ハッとした彼女が俺を見つめる。


「『もの』が嫌だったのなら素直に言えば良かったのに…」


嫉妬されても鈴子になら悪い気がしない。

俺は目立つしクラスの女子は放っておいてはくれない。

それなら…


「俺に会いにきてほしいなら言えばいい…って 

『もの』だと言い難いか…なら、俺の『もの』じゃなく…」


そう『もの』じゃなくて、俺が…


「いや!」


彼女の手が俺のシャツを掴み必死に言葉を遮る。


「いや!圭吾の『もの』でいさせて!お願い!」


「…鈴」


「お願い!!圭吾…」


こんなに必死になって俺に縋る彼女にこれ以上不安にさせてはいけないっと思った俺は、安心させるようにフッと鼻で笑う。

その日から彼女は、毎日俺に会いに教室まで現れた。

クラスの誰かが彼女をからかおうがお構いなしに、俺に会いにくる。

俺が彼女を作ろうが、鈴子は俺に会いにくる。俺の彼女が変るたび、鈴子は彼女を牽制しているらしい…。俺はそんな事やれとは言っていない…そんなの鈴子は可愛い。


同じ高校に入り、鈴子からの弁当が俺に渡されるようになる。

俺の事を分かっている彼女の弁当は美味しい。

その時付き合っている彼女がいる時には受け取らないが、鈴子は毎日作ってくる。

毎日、毎時間会いにくる鈴子は俺の邪魔にならないようにクラスの中まではやってはこない。

廊下に出たときだけ話しかけてくる。気分が乗らないときは無視しても何も言ってこない。

俺との距離感は完璧だった。そう、お前は俺の『もの』だから…。


肩まであるストレートは艶めいて、白い肌に涼しげな目元は男なら一度はその目に映りたいと思うだろう。俺の『もの』だと分かっていても、手を出そうとしている男はいるらしい。

そんな男に見向きもしない彼女は、もう十分に俺に釣り合うのではないだろうか?

そろそろ、鈴子との関係を進めて見てもいいかなっと少し検討し始めた頃、鈴子にいままでいなかった友人の存在が現れた。


早乙女さおとめひとみは、鈴子の友人だと言い俺と鈴子の間に入っては俺を助けようとしているらしい。

そんな彼女を咎めるわけでもなく鈴子は行動を共にしていた。

瞳は鈴子とは対照的なクセのある短めの髪に小柄な子だった。

クラスの奴が可愛いと噂していた事もあり少しは顔を知っていた。


瞳は時折、俺の前に現れては話をしていく。俺への隠さない好意に気分は良かった。

鈴子の友人でもある瞳と関係を深めていく。鈴子はどういうつもりなのだろうか?

友人だから、お前は何も言わないのか?

俺ではなく、彼女をとるのか?


元々、母親同士が勝手に話進めた俺と鈴子の関係。鈴子は俺の『もの』であり所有物だ。

俺の感情も、鈴子の感情も俺達の関係には必要がない。

それはとても甘美でもあり物足りないものでもあった。


そう、俺には物足りなくなっていた。




――――――――――――



「あいつに呼び出されたんだろう?」


そして、瞳を鈴子が責めた。これで分かっただろう?友人なんかより俺が必要だったと。


「…ちがっ…私が」


「庇う必要なんてない。…あいつをそんなに追い詰めてたんだな…」


そう…俺の事だけを考えたらいい。

お前に友人なんて必要ない。簡単にお前を裏切るこいつより俺だけでいいはずだ。

すぐに俺が別れることぐらい分かっているだろう?

鈴子、お前を傷つけてしまった代わりに俺はずっと抱きしめてやる…。




しかし少々タイミングが悪かったらしい。鈴子は夏休みに入るまで学校を休んだ。

俺が口にしてしまった言葉通り、二度と俺に近づかないっと言う意思表示か。

ここまで、俺の『もの』としていなくてもいいのに…。言い過ぎてしまった事に今更ながら後悔する。

今までの鈴子なら、どんな事を言っても俺に会いにきた。

今回は友人の事が理由になったのだろうか?それなら、さっさと瞳を捨てなければならない。いやもう要らない。



夏休みに入り、鈴子からの連絡を待つ。

無駄に過ぎていく日々に俺は、薄々気づいていた。鈴子は、たしかに俺の『もの』ではあった。

けれど、ただ『もの』なだけではないのかと。

それは『もの』以上でも以下でもなかったんだと。


俺が鈴子を『もの』として見れなくなっていた。

態度だけは完璧に俺に尽くしていた彼女には、もう感ずいていたんだろう。

『もの』でなくなった時…俺がどう出るかを…。



夏休みが終わり、学校が始まると鈴子の姿はなくなっていた。


鈴子は俺から逃げたのだと分かった。怒り?そんなものじゃ生ぬるい。

憎しみに近い感情が俺を支配したかと思うのと同時に喜びが溢れる。

これでやっと鈴子を追いかけることが出来る。俺はずっと、鈴子の身も心も欲しかった。

鈴子は気づかれてないと思っている様だが、とっくに彼女が俺には気がない事ぐらい分かっている。

俺が鈴子に執着しているのも自覚している。

彼女の気持ちを思えば、彼女を解放してやりたい自分と、彼女を追い詰めて全部自分にだけのものにしてしまいたい自分がいる。どちらも俺の本心だ。

今まで鈴子が抑えてきた俺の執着は、彼女が逃げる事で開放された。

俺の可愛い鈴子…もう彼女は『もの』ではない。

もう少し使えるかと思った瞳は、友人でもなんでもなかったんだなと今更ながら思う。でも、確かにあの時の鈴子には友人と呼べる誰かがいたはずだ。俺が、鈴子の変化に気づかないわけがない。

俺と鈴子の間に入る目障りな存在に、鼻で笑う。

誰か彼女に吹き込んだ存在がこの学校にいる。そうでなければ俺から逃げだそうとしないだろう。


いいだろう…逃げ切れるのならば、逃げてみればいい。


『もの』であり続けていたら、俺の執着も普通の恋愛として消化させてやったのに…。

俺だけを見ていれば、鈴子が望んだ恋愛をしてやっても良かった。

お前が逃げた先がどこに繋がっているのか分かっていない鈴子は本当に愚かで可愛い。

知らなかっただろう?俺の父が鈴子の父親の仕事先の親会社の社長だということを…。

夏休み中俺は父の手伝いをさせられていた。離婚したとはいえ、再婚もしていない父には子供はいない。

簡単には会社を継げるとは思っていないが、お前が逃げるというのなら完璧に俺へ繋がる道だけを作ってやろう。


まずはお前のお友達から…。俺達の為に友人として動いてくれる様にお願いしにいこう。

きっと 『お友達』 なら俺達の恋愛を分かってくれる…。



さぁ…はじめようか…俺達の 完璧パーフェクトな恋愛を…










鈴子もだけど、時子も逃げて…!


読んで頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 気持ち悪い男ですね。 膨張する自意識。自分のことしか考えてないですね。 せめて身内が味方になってくれれば。
[良い点] おぉ…こわ…… [一言] 2人には逃げきってほしいですね!
[良い点] シリーズの一番はじめが好きです。 これは怖い!他の人で我慢してくれれば良かったのに… 執着から逃げられたと思いたいです。 鈴子はいい子で賢かったので幸せになって欲しいです^_^
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