表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/30

第20話 問題

 やっとの更新です。ちょっとハーレクイン的なところがありますが、決して欲求不満という訳ではございません(>m<;)<なんてね

 

 トントントンタン

 軽快に響く足音。その音は段々高くなり2人の部屋に近づいてきた。

 その音に我に返ったミサは、仲原の腕をほどき、洗面所へ行った。

 私ったら、どうしたんだろう……。真っ赤になった顔を冷やすように、冷水でパチャパチャと洗った。ふーっと深呼吸をして、息を整えてみたが、一向に胸の高鳴りは抑えられない。

 仲原はそっと、そんなミサの様子を見守りながら、顔を洗っている彼女の後ろに回った。

 気配を感じてか、ミサは濡れたままの顔をあげると、鏡越しに後ろに立っている仲原の顔を見た。

 彼は冷静に一直線にこちらを見る。

 鏡越しであったが、その強い視線に驚き、ミサは顔を背けてしまった。

「これ」

 仲原は洗面所の片隅に鍵をおくと、さっとミサから離れた。

「え?」

 これって合鍵?付き合うという事なんだろうか。ミサは慌てて仲原の方へ寄り確認しようとすると、母親達が帰ってきた。

「ただいまー」

 片手にはロック氷、片手には空いた酎ハイの缶を持ッた福永は、「さっぶー」と言いながらドタドタと入ってきた。「そりゃ寒いわよ」とミサの母親が福永に続いて入ってくる。

「あの、食べるだけ食べて申し訳ないんですけども」

 仲原は、いつの間にか服を着替え、帰る様子だった。

「えー! 先生。せっかく氷買ってきたんだから、1杯くらい飲んでいかな…」

 酔って少しクセの悪くなった福永を止めるように母親は言った。

「先生も忙しいのよ。真ちゃん」そして、丁寧にたたまれたスウェットの上下に目をやると

「これからもミサをお願いしますね」と仲原に声をかけた。

「はい」

 仲原はそう言うと、「おじゃましました」と帰っていった。

「本当に挨拶の良い先生だねぇ。あれ? ミサは?」

「ミサ。先生帰っちゃうよ。ミサー」

 2人はミサを探した。

「ト・イ・レ!」

 真っ赤な顔をして出て行けば、何か感付かれるかもしれない。そう思ったミサは先程から、トイレに座ってじーっとしていた。しかし、赤くなった顔はなかなか戻ってくれない。ミサは手の中にある鍵に視線をやった。

 なんで、合鍵なんて持ってるんだろう?ドクターってもてるから、やはり遊ばれてるのかもしれない。でも、でも。キスの場面を想像したミサは、そうした考えを吹き飛ばした。

 

 

 次の日、ミサは日勤だったので、母親と福永に見送られ部屋を出た。福永は休みだそうで、まだパジャマを着ている。出来る事なら、勤務を代わって欲しかったくらいだ。どんな顔をして仲原に会っていいのか、そう思うとミサは深くため息をついた。

 タンタンタンと階段を駆け降り、空を見上げた。空は明るく、うす水色。頬にかかる風はどまだ冷たいが、日に日に優しく感じられる。

 歩きながら、昨日のことを想った。いつもいつも受身だった自分。なのに、どうして自分からキスをしちゃったんだろう?仲原の目が寂しげだったからだろうか。ふと、大胆な自分の行動がよぎると、ミサは目をつぶって首を横に振った。

「おはよう」

「あ!」

 あの時、待ち合わせした電信柱に仲原が待っていた。少し微笑んだ表情で手を上げた。付き合いはじめた中学生のように、通学路で待ち合わせをしているような彼の姿。ぶっきらぼうな仲原と、その行動が結びつかず、ミサは思わず吹き出した。

「先生、どうしたんですか?」

 ミサは少し笑いながらそう言った。

「昨日、言い忘れたから」

 真面目な顔でそう言い、歩きはじめた仲原の後ろを、少し遠慮がちについていった。言い忘れたといいつつ、なかなか言い出さない仲原。とても長い時間に感じられた。ミサの頭の中でもいろいろな言葉が駆け巡る。付き合って欲しい、付き合いたい。そんな言葉を想像し、仲原の言葉を期待している自分がいた。

 仲原が急に足を止めたのでミサは驚いて、立ち止まった。

 仲原も照れ屋なのだろう。ミサの方を見もしないで話をはじめた。

「付き合ってくれるかな?」

 キター。そんな感じだ。ガチガチに固まりながらもなんとか、声を振り絞るように出した。「ハイ」と一言。

 仲原はうんと小さく頷いて、また歩きだした。男らしい背中を追いつつ、ミサは感じていた。いつまでも、受身でいるのは嫌だ。自信が無くて、弱くて、誰かの影に隠れているような自分を変えたくて仕方なかった。仲原となら何か変われるような気がした。

 ミサは急に歩くスピードを速めて、仲原の横に並んだ。

「私も言い忘れたことがあります」

 鼻筋の整った横顔が、驚いてこちらを見る。よく見れば、本当に格好よい。今まで何で気がつかなかったのかわからなかった位。そして、彼の唇を見ると、その感触を思い出し体中がしびれた様に感じる。優しくて、それで、だめだ、もう言っちゃえ!

「先生のこと好きになっちゃいました!」

「……」

 少し間をおいて「お前、面白いな」と仲原は笑ってミサの頭をポンポンっと軽く叩いた。ミサもまんざらではなさそうだ。仲原は柔らかいミサの髪に触れ、離すのが惜しくなったのか、ミサの髪を撫でたあと「夜、ごはんどう?」と単刀直入に切り出した。


 

 病棟での仲原は、朝の表情とはうって変わって厳しい表情を浮かべている。カルテを開き、自分の担当の患者の情報収集をはじめる。

 ミサも仲原にみとれている余裕はない。清拭に、点滴、薬くばりに検温、次々と仕事が襲い掛かってくる。ナースステーションに戻ってこれたのは、お昼の休憩になってからだ。

「渡辺さん、早くお昼休憩いってね」

「血糖測定の人がいるので、それが済んだら行きます」

「って、渡辺さんが早く休んでくれないと、次の人が休めないじゃない。優先順位を考えて仕事しないと! もういい、私、先に行くから、あなたが残ってね」

「はい……」

 角野亜里沙だ。さんざんミサに用事を頼んでおいて、優先順位もへったくれもない。ミサは眉間に皺を寄せながら、次の仕事にとりかかった。

 ミサが血糖測定を済ませ、ナースステーションに戻ると、大声で怒鳴りあう声がした。

「だから、なんで勝手なことをするんだ君は」

「先生が何もしないから、自分がしただけです」

(えー?)

 声の主は病棟主任の高津と、仲原。

 ミサは目の前の光景を疑った。

(ちょっと、どうしたっていうの?)


 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ