表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

第一話 受け継がれた絆 パート7

 軽く視界を巡らしても、埃一つ落ちていない廊下を眺めながら、俺は黙って歩いていた。


 掃除が行き届いているのは一目瞭然だが、どうも落ち着かないのは、この近くに、あの憎たらしい祖母がいる事だろうか?


「――武尊様は、咲様がお嫌いですか?」


 と、唐突に、目の前を歩く市松人形――もとい、棗さんが俺に問い掛けてきた。


 一瞬、この女も心が読めるのか、と勘ぐったが、それは無いとすぐに打ち消した。【読心】の魔法は、『夜明けの魔女』以外に唱える事が許されない魔法なので、あの女以外に唱えられる訳が無い。

 彼女の場合、単に勘と観察力が人より優れているだけなのだろう。


 という訳で、


「嫌いだね」


 と、俺は即答した。

 その質問に関しては、俺は自信を持って即答できる。

 他人の心を除き見て、その上でそれを周囲に暴露するのを楽しむ人間を、どうやったら嫌いにならずに済むというのだ。誰だってそんな人間、嫌悪するに決まっている。


「――棗さんは、アイツが嫌いじゃないんですか?」


 黙って歩くのもムズ痒いので、俺は棗さんにそう切り替えした。

 だが、俺の問いに対して棗さんは、


「武尊様は強いお方ですね」


 と答えた。


 ……質問に答えろよ、市松人形。


「あそこまでの仕打ちを受けたのなら、普通の人間ならば、『隷属』するか、『逃避』するかのどちらかを選択をするのに、武尊様は今でもあのお方に『負けない』と思い続けている。――その心をお持ちしているだけでも、あなたは強い方ですよ、武尊様」


 と、こちらを振り返ってニッコリと微笑んだ。


 やけに馴れ馴れしい女だなぁ、この仲居。

 まぁ、いいか……。


「で、部屋はどこです?」


「あぁ、それなら、今、目の前にある扉がそうです、武尊様」


 当の仲居はノホホンとした調子で、眼前の襖を手で指し示した。

 襖の上の表札には『鶯の間』と書いてあった。

 旅館でもないのに、部屋にこんな名前をつけるあたりが、我らが曽祖父の実家なのだ。


「案内どーも。――じゃ、部屋で着替えますんで」


「式場までの案内は如何しましょう?」


「10分後に玄関口に向かいますので、その段取りでお願いします」


 俺はそう言うと、その仲居との会話を拒絶するかのように『鶯の間』に入った。


 何故か、これ以上会話を続けたら、心を許してしまう恐怖にかられそうになったからだ。

 それは、俺にとって、この上ない恐怖なのだ。

 外はゆっくりと、太陽が傾き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ