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君と一緒にいた時間

作者: 水瀬葎那

これは、ポルノグラフィティの

「Winding Road」をテーマにした物語でございます。

本当は、もっともっと

愛したかった。

君を、離したくなかった。

それでも、君を離したのは

僕が弱いからなのかな?


五年前の、秋風吹く時雨月に、僕達は出合った。

君を見たとたん、君に恋をした。

転校してきた君は、僕のクラスの一員となった。

笑顔で、自己紹介をする君。

僕はそれを、じっと見詰めていた。

そして、君の席は、僕の隣になった。

嬉しくて、少しドキドキしていて

なんともいえない気持ちが、心の中で渦巻いていた。

それから、君のことをたくさん知った。

僕は、君がもっと好きになった。

日に日に思いは募るばかりで、

とうとう僕は勇気を出して、君に告白した。

断られる覚悟で告白したのに、

意外にも、答えはOKで

僕は驚いて、嬉しくて、笑顔になった。


君は照れ屋で、手を繋ぐのを躊躇った。

そして、五回目のデートで

やっと手を繋いでくれた。

その時の僕の心臓は、脈を打つのが

とても、早かったと思う。

指先が触れ、一旦両者共が、手を離す。

僕は勇気を出して、君の手を握った。

君は一瞬躊躇って、それから握り返してくれた。

その時、僕はどんなに嬉しかっただろうか。

胸は高ぶり、緊張して、恥ずかしかった。

でも、それと同じくらい

とても、とても嬉しかった。


僕達は、何年たっても仲がよかった。

自分でもそう思うぐらいなのだから、

とても仲がよかったのだろう。

君と一緒に居る時間は、

永遠に続くと思った。


突然、君は僕を呼び出した。

少し怒っているように見えたが、

心当たりはないので、不思議だった。

そして、君は突然止まった。

僕の手を離し、こちらを振り向いた。

泣いていた。

ずっと僕に背を向けていたので、今まで分からなかったが

悲しそうな目で、泣いていた。

君は、僕に他の彼女がいるかと聞いてきた。

勿論そんなものはいないので、正直に

いない、と答えた。

すると君は、声を張り上げて

嘘吐き、と言った。

なんでも、クラスの友達に

僕に他の彼女がいるという、噂を聞いたらしいのだ。

僕は全面否定したが、君は聞いてくれず

そのまま言いたい放題言って、

僕の前から去っていった。

僕は、君を追いかけようとしたが

そっとしておいたほうがいいと思い、

僕は追いかけなかった。


それから、何日も君は

口を利いてくれなかった。

廊下ですれ違って、目が合うと

困ったように、すぐ視線を逸らす。

僕は、それが悲しかった。

それからしばらくして、君に

彼氏ができたという、噂を聞いた。

僕はそれを聞き、君に確かめに

行こうとした。

君の教室に入ろうとしたときに、

ドアの隙間から見えたもの。

それは、君と誰かが

キスをしているところだった。

僕はそれを見て、悲しくなり

その場から去ってしまった。

ただ一つ、覚えているのは

その時の君の顔が、

あまりにも悲しげだったことだけだった。


それから何ヶ月もたち、

僕は、同じクラスの子に告白された。

その子は、僕が君と口を利かなくなった後

励ましてくれて、それから少し、

気になっていた子だった。

僕は、OKの返事を出そうとした。

その時、君の顔が

僕の脳裏に浮かんだ。

僕は、返事は明日にしてくれと

頼み、君の元へ向かった。

君を人気のないところへ呼び出して、

ちゃんと別れよう、このままでは

いけないと思う、という

僕の思うこと全てを話した。

すると、君もそうね、と呟いた。

君は、あなたに彼女が出来たこと、

噂で聞いたわ、と小さな声で言った。

よく考えたら、あなたが浮気なんか

してるわけない。

あの時は、私もヒステリックになってたわ。


――ごめんね。


彼女は、消え入りそうな声で言った。

別にいいよ、と僕は

無理矢理笑顔を作り、言った。

君は顔を上げて、僕に笑顔を見せた。

あなたと会えて、よかった。

あなたと一緒に居た時間は

とても楽しかったし、

嬉しかった。

・・・でも、もうやり直せない。

君は突然、僕の手を握った。

僕は驚き、君の顔を見詰めた。

君は悲しい微笑みで、僕を見据えた。

そして、僕も手を握り返した。

今まで、ありがとう。


――さよなら。


その言葉を言う、君の目は涙目で

今にも涙が、溢れてきそうだった。

そして、君は僕の手をそっと離す。

僕は、この手を離したくなかった。

離したくなかったが、離してしまった。


さよなら。


僕は、無理矢理作った笑顔で

君に別れを告げた。

君は僕の前から、去っていった。

これで、もう二度と話す事はないのだろう、と

僕は思った。

頬に、涙が流れているのも知らずに。


あの時、君と繋いだ手を

離さなければ、どうなっていただろう。

そんなことを思った僕は、やっぱり弱いのかな。

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