第6章〜話を聞こう〜
殺風景な部屋。
必要な家具と、隅っこにある多量の本だけしかこの部屋にはない。
見慣れた部屋。
住み慣れた部屋。
ただ、ソファにちょこんと座ってうつむいているまおらの存在だけが見慣れなかった。
1人でいるのは危険だから、と。
鈴音に言われて俺は仕方なくまおらを連れて帰った。
まあ俺も色々聞きたいことがあったから丁度よかったとも思う。
コーヒーを渡して俺はテーブルを挟んでソファの正面にあるベッドに座った。
そう。
聞きたいことは色々ある。
たくさんある。
ありすぎてどれから聞けばいいのかわからないが―――――・・・
とりあえずコレから聞くべきだろう。
「あいつら、何?」
小狼と名乗った金髪の目つき最悪不良系の女と
小鳴と名乗った黒髪のおっとりお嬢様系の女。
名前の響きからして清虚の奴らだろう。
そんな奴らがまおらを囲む理由がわからない。手には武器を持っていたから殺すつもりだったか・・・
納得いかないことは納得するまで調べる。それが俺の楽しみだ。
だが待てど暮らせどまおらの口から答えは出てこない。
ただうつむいて、膝の上でぎゅっと手を握っているだけだ。
「・・・・まおら?」
名前を呼んでも返事はない。
「まおら、どう」
「何でもないっ」
俺の言葉を途中で打ち切って、まおらは突然叫んだ。
何でもないから、と何度もつぶやいている。
が、その様子は尋常じゃなかった。
握った拳はぶるぶる震えていて、うつむいた額からは何粒もの汗が零れ落ちている。
うわごとのようになんでもないと繰り返しつぶやいている。
「何でもなくないだろ」
びくっと身体をはねさせて、まおらは探りいれるように聞いた俺の顔を一瞬だけ見た。
すぐにまたうつむいてしまったが、一瞬見たまおらの表情はさっきまでのものとは全く違った。
明らかに変だ。
絶対何かある。
だがまおらの様子から見て決して話してはくれなさそうだ。
仕方がないから俺は遠まわしに断片的に聞いていくことにした。
単刀直入に聞くのを避ければ少しでも何かしゃべってくれるかもしれない。
コーヒーを一口飲んで気を落ち着かせる。
それからまだ尋常じゃない様子を見せているまおらにコーヒーを飲むように促して、気を落ち着かせた。
一気にコーヒーを飲んでから、まおらはふぅっと息をつく。
「落ち着いたか?」
首を立てにふって、まおらは俺を上目で見てきた。
「あの、ごめんね」
「何が?」
何のことだかわからなくて聞き返した俺を眺めて、空の目を少し潤ませて。
唇を少しだけ噛んで、それからまおらは口を開く。
「危ない目にあわせちゃって」
一回そこで言葉を切って、それから
「ちゃんと全部説明するのが道理だよね」
と付け足した。
どうやら話してくれる気になったらしい。
空になったコーヒーカップをまおらから受け取って再びコーヒーを入れなおす。
それからまおらに向き直って、俺はにっこり笑った。
「嘘偽りなく、できれば全部話してね」
まおらは小さくうなずいた。
ずいぶん遅くなりましたが続きです。
それにしても短い・・・。
次回からはもう少し長くします。
感想等もらえたらうれしいです。次話製作のエネルギーになります。
あなたさえよければまた。三沢でした。