第3章〜やっちまえ〜
ねぇ良太。
5月18日は良太と私の誕生日だね。
誕生日が一緒。
なんだか、運命みたいだと思わない?
いつものところ。まぁただの広場なんだが、大通りから外れているため争いとか喧嘩とかがよくある、俺たち5人のお気に入りの場所だ。
水色と鈴音が足を曲げたり伸ばしたりしている。夏澄が背中の剣を手にして1度振る。佐祐が長く伸びた髪を結いなおす。俺はばきっと指を鳴らした。
そして5人そろって広場の中心を見据える。
非常識な時間に、少女が1人。
そして周りにはそろいの黒服を着た数十人の男。よく見れば女も2人ほど混ざっている。
手には武器として使われるものおそれぞれで持っていて、少しずつ。だが確実に少女のほうに詰め寄っていく。
突然夏澄が 行こう とだけ残して走り出した。
「夏澄ちゃん!」
あわてて鈴音が後を追う。その後を俺たちも追った。
月が雲で隠れて一瞬だけの闇夜がうまれる。
地面に手をついて大きく身体を反らせる。そしてそのままの勢いで夏澄は一度に数人の男を蹴っ飛ばす。
「な・・・・・」
突然の攻撃に動きを一瞬止めた男を水色が殴り倒す。
佐祐が腰に手を伸ばし、挿していた剣を引き抜き、軽く振る。
鉄色の刃が月に照らされて鈍く光る。そしてその後を追うように舞う鮮血。
その後ろで鈴音が笑う。
「だ、誰だっ!!」
オールバックの男が叫ぶ。額にはうっすら赤いモノ。手には握り締めた護身用っぽい警棒。
威勢良く叫んだわりには声がひっくり返っている。かすかに身体も震えている。
そりゃそうだろう。
いきなり突っ込んできたかと思えば仲間を殴るし蹴るし斬るしそれ見て笑うしじゃあ。
俺だって泣きたくなるだろうよ。
泣いてないだけ彼は凄い。
でも俺が同情する間もなく、佐祐が冷たく言い放つ。
「誰だっていーだろーが」
それが合図だった。
向こうの奴らが反撃をはじめた。
どこにそんなにいたのか、人数はどんどんどんどん増えていく。
夏澄が斬る。
水色が蹴っ飛ばす。
佐祐が刻む。
どんなに倒してもどうしてだか数が減らない。
逆に増えているみたいだ。
「っあーもキリがねぇっ」
水色が苛立ちの声をあげる。
3人ともどんどん息があがる。
それを見ながら、鈴音が俺のほうを見てくすりと笑った。
「良ちゃんはやんないの?」
やんないの?あぁ、あんたは喧嘩しないのか?ってことか。いやだってほら・・・面倒くさいし。
だがそういうわけにもいかないようだった。
ぼーっと見ているだけの俺に向かって佐祐が叫んだ。
「っおい良太てめっ何一人だけ楽してんだバカ」
それに続くように夏澄も叫ぶ。
「そーだよバカ」
そして水色はこう叫ぶ。
「バーカ」
「そろってバカバカ言うなっ!」
そう叫んでから、俺は相手が密集している方向に向かって右手を突き出した。
身体の中心から全身をめぐらせるように気を落ち着かせる。
そしてそれを右手だけに集結。
頭に浮かぶのはこの言葉。
「バンっ」
右手を光源に全身が青白く光る。髪がわずかに浮いた。右手の平には赤く光る小さな魔法陣。その中心から一瞬だけの光線。
そしてその先にいた相手の密集地で突然おこった爆発。
「うわあっ」
「ぎゃあっ」
「ぐへっ」
響き渡る奇声・・・ではなく悲鳴。煙で何も見えないが。
風にのって人間の焼ける匂いがする。
煙が晴れたらたくさんの人間が転がっていた。
鈴音はやっぱりくすくす笑う。
「バン」と「ビックバン」と迷ったけれどこんな雑魚相手に良太が「ビックバン」なんか使う分けないなーと思って「バン」にしました。
どうでもいいですね。失礼しました。
感想、評価等いただけると嬉しいです。栄養になります。
貴方さえよければまた。三沢でした。