第0章〜プロローグ〜
決して不良とかヤンキーとかの話じゃないです。
和国。
春になれば桜の花が満開に開き、小鳥が鈴のような声で囀る国。
夏になれば強い光が大地に刺さり、蝉時雨が懐かしく聞こえる国。
秋になると山の木々は綺麗に色づき、コロコロと虫が囀る国。
冬になると白い雪が空を舞い、キシっと雪の上を歩く音がする国。
和国ってそんなところ。
ある世界の、ある惑星の、ある国にも似ていると噂されるが、どこの国なのかは誰も知らない。そこの国には法律があるらしいがそんなものこの国、いや世界にはない。聞いたこともない。
和国ってそんなところ。
それはともかく。
この状況は何だろう。
「最近調子こいてるのはてめぇかコラ」
屈強なヤンキー数人が、コンビニの裏で俺を囲んでいる。モヒカンだったりリーゼントだったりのそいつらの手にはスタンガンだとか竹刀だとか木刀だとかナイフだとか。
そんで俺の手には缶ビールの入ったコンビニの袋。
「ちぃっとばっかし俺よりいい顔だからってデカイ顔してんじゃねぇぞ」
この世の終わりを迎えたときに悪魔が見せるような顔してるやつにちぃっとばっかしだと言われたくはない。そして俺の顔はおぼんみたいに丸くてデカイお前の顔よりは小さい。
「何とか言えよゴルァ」
その●ch用語は何だよ。ゴルァはねぇだろゴルァは。
黙ったままの俺が気に食わないのか知らないが、屈強なヤンキーたちはそれぞれで目を見合わせると、円の中心にいる俺に四方八方から突っ込んできた。
「死ねぇええぇっ!!」
右足を軸足にして左にターン。そのまま突っ込んでくるヤンキーの1人のこめかみに思いっきりデコピンをする。
「ぎにょぇあぁあっ」
奇声をあげながらそいつは地面に転がる。それに気をとられた木刀を持っていた男の手を、左のつま先で蹴っ飛ばす。はずみで落とした木刀を手に、俺は跳んだ。
俺は昔からジャンプ力が凄いと言われる。普通にそのへんにある1.5Mの塀なら簡単に飛び越えられる。当たり前だが手を使って。とにかく跳躍力なら誰にも負けない。
それは俺の自慢にもなるし、こういうときは便利だ。
―――たとえばホラ。
木刀を片手に跳んだ俺に、ほかのヤンキーたちは一瞬怯んだ。
一瞬でいい。一瞬怯めばこっちのもんだ。
そのまま後ろ斜め45度。俺は勢いをつけて思いっきり木刀を投げた。
それは宙を一直線に突き進み、やがてゴズッという鈍い音を出してから地面に落ちた。
ゴズッという鈍い音は、ナイフを持っていたヤンキーの顎と木刀とがぶつかる音だった。
俺が着地すると同時に、先のヤンキーは血を流して倒れる。
「う、うわぁああぁああぁ」
恐怖に満ちたほかのヤンキーの悲鳴があたりを包み込む。
・・・耳障りだ。
血のついた木刀を拾って、俺は再び構えた。
と、そのときだった。
「こらーっ!営業妨害だ畜生どもが―――っ!」
コンビニの店長らしき男が怒鳴りながら乱入してきた。その右手には黒光りする拳銃。
「・・・こりゃやべっかな」
構えていた体制を逃げる体制に変えて、俺は木刀を投げ捨てた。カランカランと、地面に落ちるそれの音を背に、俺は家の方向に向かって走り出した。
「あっ畜生。てめぇせめて名乗ってからいけっ」
倒れたヤンキーをかつぎながらほかのヤンキーどもが叫ぶ。
そいつらを見ずに。
聞こえるか聞こえないかの声で。
にやっと笑って俺は答えた。
「白井良太ってんだ。覚えとけ」
後ろから銃のなる音がしたけどそんなこと俺は知らない。
朧月が闇夜を照らした。
王国物語プロローグ、どうでしたか?
この話はワードで作っているものをもっと詳しくしたものです。
ぶっちゃけ長いです。
それでも興味をもたれた方は、どうぞ最後までお付き合いください。
あなたさえよければまた。三沢でした。