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死んだら猫った!  作者: 青藍蒼
麗し令嬢に飼われよう
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06.麗し令嬢と巨乳メイド4



想良は腕を組んで、額に皺を寄せていた(猫の毛に覆われているので傍から見れば多少目つきが悪いぐらいにか見えないのだが、本人にとってはこれでも最大級の不機嫌の現れた顔のつもりである)。


『いやー、メイドさん、これはないわぁ。首ひっつかんで移動ってないわぁ』


エクラは極力触りたくないらしく、首もとの皮を右手で掴んでいる。こうされてから、たったの一分程度なのだが、ぶらぶらと頼りなく動く足と尻尾が想良にはなんだか切なくて堪らなかった。


『そのふくよかな胸はなんのためだよ、抱っこして運ぶべきだろうがっ!』


「……、うるさい」


騒いでも取り合ってくれないエクラの胸を想良は、怨みがましく見た。

遠目にも大きさがあるのがわかるそれは、フィオ―レのものより遥かに大きい。


(ヒロのエロ本を見た感じだとF……いや、Gは堅い!! くっそぅ、男心を無碍にすると後が怖いんだからなっ!)


幾ら試そうとも、手は後ろに関節を曲げるどころか、前の方で小さく小刻みに猫の手は動くだけだ。


「そんな抱き方しているせいじゃないの? やっぱり、私が運ぶわ」


前を歩くフィオ―レの顔は心配気だ。


『ぜひー、ぜひー』


訴えるように鳴くと白い手が伸びてきたが、触れる前にひょいっと想良の体は手の届かぬ所へ。


「いいえ、フィオ―レ様。これはまだ、タオルで拭いただけで汚いですので」


「確かにシャルロットが運んで来たけれど、もう毛も乾いてるし汚くないわよ」



そう、このエクラが想良を抱えている理由は風呂に入れるためだった。


想良には彼女たちが言っていることがあまり理解できなかったが何かに申請するために、一端綺麗にしてからどこかへ行かなくてはいけないらしい。


(たぶん、役所とかなんだろうけどさ。別に俺本体が行かなくてもいいじゃんよ。めんどいー)


「口の中など黴菌だらけです。この猫がおかしな病気を持っていたらどうするのですか」


淡々とした口調に想良はべっと舌を出す。


(だったとしたら、既にあの鳥っぽい生物は病気だっつの!)



余談ではあるが、当然のごとくシャルロットはこの騒動に付いてこようとした。だったが、「邪魔なので」と、エクラによって先ほどの部屋に閉じ込められてしまっている。かすかに想良の耳には「ぐげげええっ」と叫びが聞こえているが近寄りたくないので、聞こえていないことになっている。






☆★☆★☆★






やって参りました。お風呂の時間です。

右手に想良を持ったままエクラは金タライを準備した。……張られたのは冷たそうな水である。


『いやー、いやあああっ! 水なんかで洗われたら風邪ひくぅ!!』


必死に暴れる。

この水の温度が何度かは知らないが、常温水より冷たいのは金タライについた水滴から余裕で推測できた。

あれは、明らかに水を汲んだ時のものではなく、その後のものだ。


「コラ、暴れるな、この馬鹿猫っ!」


『暴れるわっ! ふざけんな、俺が紳士だとしてもお前の体に傷つけるのなんて躊躇わないからなっ!』


フィオ―レならいざ知らず、何度も叩くこんな女に対し、気を使うつもりなど想良には全くなかった。

今、爪があるのは何のためかと聞かれれば即答するだろう「この胸デカ女に喧嘩を売るため」だと。


「エ、エクラ、もうちょっと優しくしたらいいんじゃないかしら? 猫は水を嫌がる生き物だって聞いたことあるしきっと嫌なのよ……」


フィオ―レはオロオロと後ろから声を掛ける。その顔は心なしかさっきよりも青い。


「一気に洗った方がこいつのためです!」


『ちがーう、冷たい水が嫌なんだっつの! あと、お前に洗われたくないのー!』






この後、暫くの攻防戦が続いたが所詮、猫と人。

体力が先に切れたのは想良の方だった。






『へっきし、あー、ざぶい』


フィオ―レが優しく拭いてくれるのだけが救いである。


「……、っ馬鹿猫が……」


エクラも同じくタオルを頭からかぶっている。

洗われている間も、終わった後もしっかりと想良は彼女に水を掛けた。洗い終わった今となっては、生地が厚いのかメイド服は色が変わっているだけで透けていないのが残念なくらいだった。


(あー、もっと、盛大にやればよかった。相手が牛乳なのは非常に残念だけど、さすが美女。濡れて色気が増した気がするわ)


「エクラ、ここは良いから着替えて来るといいわ。貴女相当濡れているし、風邪ひいてしまうわ」


「いいえ、それとフィオ―レ様を二人っきりになどできませんので」


『紳士だっつの、俺は』


男は皆、狼と言う名の獣ではあるが、フィオ―レを傷つける気など想良にはまったくなかった。襲うなどもっての外である。


(大体、俺今猫だし)


人間だった場合、即座に口説いていたであろうことは否定しないが。


「そう言えば、フィオ―レ様、神殿に行く前にその馬鹿猫に名前を付けなくてもよろしいので?

 申請の時のために今決めておいた方が良いのではいですか?」


「そうだったわね、あ、そうだ、エクラ! この子に名前を付けてくれないかしら?」


「ぼけなすびで」


プイ。顔を背ける。そんな名前は断じて認めん。


「もっと、他に……」


「だったら、シロで」


プイ。絶対ヤダ。


「嫌みたいね。他には?」


「……フィオ―レ様が決めた方が早いかと存じます」


(俺の名前は想良以外ないし)


くわっと、口を開けてあくびをする。こればかりは、フィオ―レの名付けでも頷く気は想良になかった。


「何がいいかしら、男の子だし可愛らしいのは駄目よね」


(悩んでる姿、可愛いー。ま、それはそれ、これはこれ)


出される名前に想良は全て知らん顔した。






「うーん、これも駄目なの? 他に何がいいかしら」


「いいじゃないですか、もう、ぼけなすびで」


「それはちょっと……」


(毛も乾いたし、なんか眠くなってきた)


フィオ―レの膝の上で丸くなる。気温が高いのか、エクラの服もやりとりしている間に結構乾いてしまったようだ。


「フィオ―レ様、いっそ(そら)でいいんじゃないですか? 目青いし、シャルロットが空から連れて来たことですし」


「ソラ?」


『あー、それ、それ待ってた。あんたが名付けってのは気に入らんけどね』


フィオ―レは顔を綻ばせる。


「猫さん、ソラって名前が気にいったのね」



猫は一声鳴いた。



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