02.猫?2
ついっと、買い物かごと財布が母親によって差し出された。
「なにこれ?」
「ちょっと凛と買い物行って来てよ」
「ヤダ。今、ヒロと小坂来てんじゃん。凛も十歳なんだし一人でいいじゃんか」
高二になって弟と出かけるというのも嫌だったが、反抗期真っただの凛になるべく関わり合いになりたくなかったというのが本音だった。
母親が買って来た向日葵色の傘を見た途端、想良の愛用するモスグリーンの傘をひっつかんで来て「子供っぽいからこれと変えろ」と食ってかかってきたのに対し、イラっときてつい「お前は子供だっつの」と手加減はしつつもボコボコにしてしまったのは記憶に新しい。
(大人げなかったけど、マジ泣きされた挙句、モスグリーンの傘を奪われて俺のが散々だった。何より、今日は雨が降っているので行きたくない。向日葵色の傘をさす男子高校生の気持ちを考えろっての!)
手の内の人間は可愛がる派だが、突っかかるくせに甘ったれた性格の凛が想良は気に入らなかった。否、それ以上にその甘えが許されることが赦せなかった。
「あんたと違って可愛い凛が誘拐でもされたらどうすんのよ」
「ないない。あんなわがままぷーを誘拐する奴なんていないっての。むしろ、俺のがイケメンだから。青いおめめの水縁くんって有名ですよっ!」
「はいはい。おじいちゃんに似てよかったですね。ご近所で有名な不良の水縁くん」
「あら、凛ったら、いつから不良になったのかしらぁ?」
「お前だっ!」
拳が飛んでくる。「母さんに似たから手が早いんだよ」って、その時は確かに、ひょいっとかわしたはずなのに痛みが襲ってきた。
『痛い。そして、痛い』
某アニメのキャラ風に痛みを訴えてみる。
(ん? 俺、どうしたんだっけか?)
「ぐげっ!」
『ぎゃあああああああああああっ! しっ、しっ、寄んな!』
振り返ると鳥……ピンクのカエルにペリカンから嘴と羽根をつけたようなファンシーな生き物がそこにいた。
どうやらこいつがばっくとした正体であり、痛みの原因のようだ。
「ぐげげ、ぐげげっ」
『騒ぐなっつの! 焼き鳥にすんぞ、コラ!』
鳥っぽいそれから距離をとってから、周りをキョロキョロと窺う。
ここはどう見ても誰かの家である。中世ヨーロッパ風で、如何にも金持ちって感じの匂いがぷんぷんする。
ふかふかの赤いカーペットに、大きなシャンデリア。装飾品も金ときている。
『……………』
自分の体と部屋を交互に見る。
(俺、たぶん、猫。ここ金持ちの家!!)
小さくガッツポーズを作る。
(やばい、マジでかっ!)
生憎と近場に鏡がないので、現在の自分の姿は見ることができないが猫科であることは見た目的に間違いない。
変な鳥がオプションについているが、猫になって、金持ちのペットとして一生ゴロゴロして過ごすという願いどおりだ。
(ジーザス、神さまありがとう、もう、絶対殴るとか言わない。たぶんだけどっ!)
「シャルロット、騒いでどうした……あらあら、猫さん起きたのね」
悦に浸っていると、部屋の中に甘い香りが漂った。