40.青を帯びた青年
青い目をした青年は言葉とは裏腹に優しげだった。
顔に浮かぶのは慈愛に満ちた穏やかな笑み、目の奥を見つめたとしても負の感情は見つけられない。
「ぐげえっ!!」
それに対して、今まで聞いたこともないような敵意の籠ったシャルロットの声にエクラもフィオ―レも驚きを隠せなかった。
「どうなっているの? ソラさんは?」
「フィオ―レ様、オーディオ様を連れてこちらへ来てください。その男は――アーグアの傍に居ては危険です」
こちらもこちらで敵意を隠そうともしない。
「一時見ない間に、貴女達醜くなりましたね。片方は人に身を落とし、もう片方は言葉を忘れたただ獣となったわけですか……とても残念です」
「お二人とも早く!」
スキアーの言葉は二人とも聞こえているが動けずにいた。フィオ―レは現状がわからず、オーディオは消えた腕の痛みにより。
「別に人質にするつもりはないのですけれど」
浅く笑ってからアーグアは、フィオ―レ、次にオーディオを立たせる。
「言うとおりあちらへ行くといいですよ」と、言う彼の人をその間オーディオは信じられないものを見るような目で見ていた。まるで、労わるような振る舞いだったのだ。自分の腕を消した人物とは到底思えなかった。
「さて、これで盾にできるものはありませんが……次は、何をします? 貴女達がリュズギャルやラントと繋がってるのは知っていますし、不意打ちなど考えずに呼んでいいですよ」
「なぜ、それを!!」
「手遅れだって言ったじゃないですか――馬鹿、ですか?」
誰もが核心した、不意打ちなどしても無意味なのだと。
穏やかなのに、怖い。
優しげなのに、冷たい。
「誰を呼んでもいいんですよ?」
誰を呼んでも勝つなど無理だ。
「それでも滅ぼすというなら、もう一度眠らせます!」
真っすぐな、スキアーの眼差しを青年は笑う。慈しむように。
☆★☆★☆★
ジジジジジジジジジ。
ジジジジジジジジジ。
電話が鳴ってる。
(電話とらないと……)
俺は歩いて、黒い受話器を持ち上げる。
「はい?」
「わーん、やっと出てくれたぁあああっ!! もう、ずっと連絡したのに、なにしてたんですかぁああああっ!」
何コイツ、うざい。
「……あんた誰? うざ」
「誰ってヤダな、七兆とんで五千三番目の管理者ですよ! もー、十五億九千九百三十二番目の世界の管理者さんってば冗談が相変わらずきついんだからぁっ!」
奇声に近い声に、俺は首をかしげる。相手の声は聞き覚えがないし、言っていることも意味がわからない。
「それで、今回電話したことなんですけどーぅ」
「ねえ、誰だって聞いてるんだけど」
「……え、十五億九千九百三十二番目の世界の管理者さんじゃないの?」
「誰それ」
電話の向こうの誰かも俺も沈黙。
「……君、も、もも、もしかして、ミズヘリソラ? なわけないよねー」
「だったら何?」
相手は「うー」とか、「あー」とか無駄に唸る。
「質問なんだけど、なんで君が十五億九千九百三十二番目の世界の管理者さんの世界に居るの?」
「tut……It doesn't make any sense」
意味がわかんねぇよ。
誰だって聞いてんのに、こいつばっかじゃねーの。
「……大変言いにくいことなんだけどぉ、こっちの世界の共通用語で喋られると今そっちの世界言語に合わせてあるから翻訳ができなかったりしちゃったり?」
「何を言いたいのか、まず文章をまとめろ。意味がわかんねぇんだよ」
「出直してこい」と、受話器を下に置く。
カシャン。
その手を俺は凝視する。
まぎれもなくそれは、ふさふさな白い毛も柔らかな肉球もない人間の手だった。
あれ、死んだはずの想良が。さて、一体どうゆうことでしょうか! はい、次章!! あ、It doesn't make any senseは「全然意味がわからない」です。そして、なんか勇者~につられてこっちのお気に入りも増えている件についてを誰か説明してくれ!!!